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第47話

「これはー、そのー」

「『ロレが責任取りまーす!』ってお前言ったよな? だから俺もウェンディも、この部屋を破壊した責任は取らない」

「でも……あたしが普通じゃないから……」

「お前を想定してないここが悪い」


 結論から言おう。


 今まで壊れた事は一度も無かったという魔法訓練所の一室が、ウェリカが巻き起こした大嵐によって廃墟の如き無残な有様となった。


 星が砕け、壁が割れ、踏み場が無くなり、生徒は沈黙。暗い地下道に、どんよりとした空気が流れている。


 むしろこの程度で済んで良かったかもしれない。魔法を発動してまもなく部屋にいた全員が身の危険を感じ、ウェリカ含めて全員が速やかに退室したおかげで人的被害は何も無かった。少しでも判断が遅れていたら嵐に飲まれて大変な事になっていただろう。


「ねえ、ウェンディちゃん」

「は、はい……」


 明るいハイトーンの声色でロレッタが言う。こんな雰囲気の中で言うもんだからかえってそれが不気味だった。ウェリカも同じように思っているのか、俺の手を握って離そうとしない。


「弁償しろって言われたらどうしよう……お姉ちゃん大変なのに……」


 俺の耳元でウェリカが囁いた。顔を見ると、今にも泣きだしそうだった。


「ここに連れて来たのは俺だし、お前には払わせないよ」


 そんな顔をされたら、こう言うしかないだろう。


「でも……お金……」

「冒険者時代どれだけ稼いできたと思っているんだ」

「冒険者って稼げるの……?」

「ああ。実績を積んでランクを上げていけば――」

「あー、いいかなー!」


 ウェリカと小声で話しているとロレッタが俺の両肩を真正面からぽんぽん叩きながら大声を上げた。


「……いくらだ」

「ロレが責任取るって言ったじゃん! そうじゃなくて、ウェンディちゃん! 今まで全力で魔法使った事無かったでしょ!」


 とりあえず金額を聞いてから改めて検討しようと思ってると、ロレッタはウェリカにこう言った。


「え……?」

「もしかしなくても今もほんとの本気じゃないっしょ。意識してるのか無意識なのかロレにはわかんないけど、ウェリカちゃんは自分の力を怖がってる風に見えたな」


 今のが本気じゃないってどういう事だ、これで本気じゃないなら何なんだという声があちこちから聞こえる中で、ウェリカは俺の手をぎゅっと強く握りしめた。


「どうしてこんな力があるのかも今まで何があったのかもロレは聞かない。だけど、自分の力を受け入れて、自分を信じて、自分を好きになる。これが魔法の基本だよ!」


「今回のデータはちゃんと分析しておくね」「自分自身が風になるってイメージするといいよ」などとロレッタが言葉を続けた。


「ありがとう……存じます……」


 疲れ果てたかのような力ない声でぼそぼそと礼を言うウェリカの表情は、浮かなかった。

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