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第45話

「あーいたかったよー! アールー!」


 日光が眩しく照らす晴天のホプキンス領に到着して水を飲みながらしばらく歩き、やがて見えた魔法学校の大きな校門をくぐった瞬間ハイテンションな女性教師が走りながら俺を出迎えてきた。


「……こんな人です」


 俺はそいつに腕を強く掴まれながら、隣に立つ眼鏡っ子なウェリカ――ウェンディに言った。


「初めましてウェンディちゃーん! こんな人だよー!」


 こんな人はウェリカの手を掴み取りながら笑って挨拶をした。


「は……初めまして……ウェンディです……わ」


 ウェリカは緊張しつつこんな人に返事をした。わざわざ正体を隠させる必要も無いのではないかとも思ったが、現在のクラウディア家の状況に触れられると色々と面倒な事になりそうだし、かといって俺の妹にしても面倒なのでただの平民の生徒という体にしている。


「アルー! 教師になったって聞いてびっくりしたけど、あんまり変わってないねー!」

「……お前も変わらないな。ロレッタ」

「ロレは永遠の十代だからねー!」


 こんな人――ロレッタ・ベトナメンシスはベトナメンシス子爵の長女で、俺の学生時代の同級生の一人だ。ちなみにベトナメンシス領はホプキンス領の隣に位置しており、家督は長男である兄が継ぐ事になっているらしい。


「教師が永遠の十代ってどうなんだよ」


 俺はロレッタに正論を突きつけたが、実際ウェリカより数年年上くらいにしか見えないのできっぱり否定もする事も出来なかった。クインテッサは大人の美人になってたけど、こんな変わってない奴もいるんだな……と彼女の半熟卵の黄身みたいな瞳の色を見て思う。ちなみに髪は白髪のボブカットだ。


「いいのー! 人生経験はちゃんと二十代後半だからー!」

「それはもう永遠の十代じゃなくてただの痛いおばさんだろ」

「おばさっ!? ろ、ロレがおばさんならアルだって同い年なんだからおっさんじゃん!」

「はいは――ん?」


 若く見えるだけのおばさんが俺をおっさん呼ばわりしてきてなんだと思っていると、ウェリカが俺の服の袖を引っ張ってきた。


「あんた年いくつなの?」

「ご想像にお任せする」

「さっさと言いなさいよ!」

「何で言わなきゃ「二十七歳!」結局ニ十代って認めてんじゃねえか!」


 俺が言わないでいたらロレッタが普通に実年齢を言い放った。何が永遠の十代だよ!?


「ふーん……あたしの倍近く生きてるのね……」

「ウェンディは……十三歳だっけか」

「十四歳よ! あ、オルシナスは十五歳よ。他の二人のはよく知らないけどあたしよりは年上じゃないかしら」


 俺が学生だった頃もそうだったが、魔法学校は入学するタイミングが各々でバラバラであるため、同じクラスであっても同年齢のみで集まっているとは限らないのが常識だ。


 にしても十四歳か。俺は改めてあどけなさが残るウェリカの顔を見つめる。十四歳で結婚させられるというのは世間的には少し早い気もするが貴族の中では前代未聞というレベルではない。しかし実際目の前にいる十四歳の女の子を見ていると時期尚早だと思わずにはいられない。


「な……なによ……」

「ああ、ごめん」


 じっとウェリカを見ていたらむっとされてしまったので謝っておく。


「見たいなら別に……「十四歳! いいねー!」」


 ウェリカの声がかき消されてしまったし何がいいのかもわからないが、ロレッタが指を鳴らしながら俺にウインクしてきた。


「最強の風魔法使いになりたいんだっけ? ウェンディちゃんは」

「あ、えっと……」

「最強過ぎて魔力制御が上手く出来ないんだ。俺も色々試行錯誤してるけど、風魔法が得意なお前ならもっといいやり方を知ってるんじゃないかって思って」


 あわあわしているウェリカに代わって俺が簡潔に説明した。


「そっかー。とにかくまずは、魔法見せてよ!」


 ロレッタはウェリカの手をにぎにぎしながら笑顔で言った。


 ……一応、すぐに回復魔法が使えるように準備しておこう。

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