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第80話

侯爵家の敷地の中には、広く心地の良い景色が視界いっぱいに広がる場所がある。

今日もそこには一人の男が横になり、美しい空の景色を見上げている。


「あーあ。なにか面白いことが起こらないかなぁ……」


地方貴族であるためか、ランハルト家の土地は無駄に広大であった。

緑が一面に広がり、澄んだ空気はおいしささえ感じさせるその土地に、男は大の字になって横になっていた。

するとその時、寝そべる男に対して別の男から大きな声があげられる。


「おーーいレックス!!いったいいつまで寝てるつもりだーー!!はやく仕事に戻れーー!!」

「げっ……」


そしてたった今レックスに対して大きな声を上げたのは、彼の父であるラクス・ランハルト。

なかなかに厳格な性格で、レックスも彼の事はあまり得意としていないが、厳しさの中に優しさもあふれる理想的な父親であった。


「少し休憩すると言っていつまで横になっているつもりだーー!!」

「も、もうちょっとーー!!!」

レックスは急ぎその場を立ち上がると、ラクスから死角になる位置にすばやく移動し、再び腰を下ろしてくつろぎ始める。


「…まったく、レックスの奴め…」


自由気ままなレックスの姿を見てため息をつくラクスだったが、そんな彼の隣ではレベッカが非常に愉快そうな表情を浮かべていた。


「♪♪」

「…な、なに…?」

「いえ、昔の侯爵様にそっくりだなって思って♪」

「え…。俺昔あんなだった…?」

「ええ、それはもう♪」

「う…」


自分の息子の姿にかつてのラクスの姿を重ね、レベッカは楽しくて仕方がないという雰囲気を醸し出す。

一方のラクスはどこか納得してなさそうな表情を浮かべているものの、それは決して不快な感情からくるものではなく、どこか照れくさそうな感情からくるものであるようだった。


「しかし、それにしたってあいつは自由すぎる…。ゆくゆくはこの侯爵家の長となる男なのだから、もっと緊張感を持ってもらわないとな…」

「大丈夫だと思いますよ、ラクス様。レックスは普段はあんな感じですけれど、いざという時には本当に頼りになる性格をしていますから」

「やれやれ…。普段からそうしてくれると助かるのだがなぁ…」


ラクスは遠目にレックスの事を見つめながらそう言葉を発したが、その口調は決して残念そうなそれではなく、心のどこかではうれしそうな感情を思わせるものであった。


――――


「ったく…。侯爵家の仕事なんてやってられるかっていうんだ…。俺はもっと盛大で派手な事をしたいっていうのに…」


ラクスからの追求から逃れ、また別の場所で横になって体を大の字にしていたレックス。

現在の彼はラクスの後を継ぐべく事務的な仕事を勉強させられる毎日なのだが、彼にとってそれは退屈で仕方がない事だった。

ゆえに彼は任された仕事だけはきちんとこなすものの、それ以上の事はなにもやろうともせず、やる気もなかった。


「(はぁ…。突然空から美少女が降って来て俺の事を好きになってくれたりしないかなぁ…。それか隣国の姫君が俺の所に逃げてきて、そのまま結ばれたりしないかなぁ…)」


それはある意味彼の両親がたどった軌跡であるのだが、彼自身はセシリアとしての母は知らずレベッカとしての母しか知らないため、まさかあの二人がそのような結ばれ方をしたという事は想像だにしていなかった。

ゆえに彼の中でそのようなストーリーは憧れとなっており、ことあるごとにこうして妄想にふけっていた。


「まぁ、そんな絵本みたいな展開が現実にあるわけが……??」


レックスがそう言葉をつぶやいたまさにその時、彼と同い年くらいの一人の女の子が突然に視界の中に現れ、自分の元を目指して駆けてくるところが見えた。


「な、なんだなんだ…?」


見慣れぬ光景を視界にとらえたレックスはその場から体を起こし、彼女の方に目をやる。

少しずつその姿がはっきりと目でとらえられるようになるにつれ、レックスはその心の中にこの上ないほどの驚きの声を上げる。


「(あ、あれは……ファランテラ王国の第一皇女、スフィア様…!?な、なんでこんなところに!?)」


レックスは驚きのあまり彼女に対して言葉をかけることができなかったものの、レックスの姿を視界にとらえた彼女はレックスの事を見つめながら、大きな声でこう言葉を発した。


「た、助けてください!!!私追われているんです!!!」

「お、追われ…??」


いきなりそう言葉をかけられたレックスは驚きの表情を浮かべるものの、彼女の姿がボロボロであること、体の節々にケガを負っているところを瞬時に見抜き、そのまま彼女の事を自身の屋敷にかくまうこととした。


他でもない、それが二人の運命の出会いであった。




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