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第34話

「グ、グローリア皇帝直属の近衛兵たちが、侯爵様に話があると!!そ、それもすっごくピリピリされてるような様子です!!」


使用人の持ち込んだ知らせに、それまでの穏やかな雰囲気は一転する。

ラクスとレベルクはともに真剣な表情を浮かべ、互いに視線を合わせた。


「…ラクス、どうやらお前の言っていたことが本当になったらしいな」

「えぇ、そのようです。…しかしまさか、皇帝グローリア指揮の近衛兵が乗り込んでくるとは…」


向こうが乗り込んできた理由がレベッカにあろう事を、二人は瞬時に理解した。

ラクスはややシリアスな表情でレベッカの表情を見据えると、冷静な口調でこう告げた。


「レベッカ、ちょっと”お客様”の対応をしなければならなくなった。悪いんだけど、自分の部屋でしばらく大人しくしておいてくれるか?」

「え、えぇっと…」

「…?」


レベッカはラクスの言葉に対し、どこか歯切れが悪そうにリアクションした。

…というのも、二人の態度の変化からなにか大変なことが起きているのは明らかであり、その原因が他でもない自分にあろうこともレベッカは心の中で察していた。

そして彼女はその気持ちのままに、自分の思いを正直に伝え始めた。


「そ、その…。もしも私がここに来たせいでなにか大変なことになっているのでしたら、私はいつでもここから」「レベッカ」


心配そうにそう言葉を発していたレベッカの事をラクスは制すると、彼は真剣な表情のまま彼女の目を見据え、こう言葉を返した。


「レベッカ、何も心配することはない、すべて僕たちに任せてくれ。君はもう立派な侯爵家の一員で、俺たちの大切な家族なんだ。誰が何と言ってこようと、絶対に君の事を守ってみせる」

「ラ、ラクス様…」


胸を張ってそう答えるラクスに続き、その隣に立つレベルクもまた言葉を発した。


「ラクスの言う通りだとも。レベッカ、後の事は我々に任せて、君は部屋で静かに待っていてくれ」

「わ、わかりました…!ありがとうございます…!」


2人からかけられた言葉を聞き、レベッカの心には温かい気持ちがわきあがる。

その思いはここに来てからというもの、何度も感じてきたものではあるが、2人からかけられた”家族”という言葉は、レベッカにとって特別な意味を持った。


その時、もう一人の使用人がこの場に急ぎ足で姿を現し、そのままラクスに言葉を放った。


「侯爵様、”お客様”の事はお聞きになられましたか?」

「あぁ、エリカか、ちょうどよかった。君にはレベッカの事を任せるよ。いいな?」


エリカはかけられたその言葉とラクスの表情から、彼の意図を瞬時に察し、そのまま自身の首を縦に振って彼の言葉にこたえた。

そのままエリカはレベッカを伴って二人の元を離れ、この場には3人のみが残される。


「それで、”お客様”は今どこに?」

「門の前にいます。侯爵様と話がしたいと言っていますが、いかがいたしますか?」

「向こうが話をしたいというのなら、話をしてやろうじゃないか」


二人の会話を聞き、レベルクは改めてラクスの方に向き合うと、こう言葉を発した。


「しかしまさか、レベッカを迫害する裏にいたのが王宮だったとは…。ラクス、これはとんでもない敵を相手にすることになったな」


レベルクは緊張感を感じさせる口調でそう言った。

しかしそれを聞いたラクスの方はどこか落ち着いていて、普段とあまり変わらない口調でこう言葉を返した。


「関係ないさ。相手が誰であろうとな」

「ほー。やはりレベッカの事となると…♪」


…どこかからかうようなレベルクの言葉に、ラルクは一瞬だけその表情をばつの悪そうなものにしたが、次の瞬間には元の彼に戻り、やや低い口調でこう言った。


「…それにしても向こうは、俺たちのことを相当なめているんだろうな。皇帝の名を振りかざしたなら、どうせ俺たちはひるんで何もできないだろうと考えているんだろう。まったく腹が立つ…」


皇帝直属の近衛兵が貴族家に突然押しかけてくるなど、普通なら考えられない行為ではある。

しかしそれは、娘の事を心から想うグローリアの気持ちからくることではあるのだが、ラクスたちにしてみればそんなことは関係なく、結果的に皇帝への不信感を感じさせることととなってしまっていた。

ラクスの気持ちを案じたレベルクは、彼に対しこう言葉をかけた。


「ラクス、なんなら私も一緒に行くぞ?これでも昔は恐れられた名で」「いえ」


ラクスはレベルクの言葉を途中で制し、そのまま言葉を返した。


「それには及ばない。俺が一人で行きましょう。レベッカを虐げ続けたような連中に、思い通りにさせるわけにはいきませんから」


――――


「……」


門の前では、どこか目をぎらつかせた近衛兵たちが直立不動で待機していた。

この命令はグローリア直属のものであり、この一件はグローリア自身も大変に気にしているものであるため、兵たちの感じる緊張感は当然すさまじいものであった。

…そしてついに、彼らの前に一人の男がその姿を現した。



「お待たせして申し訳ない。俺がこの貴族家で侯爵をしているラクス・ランハルトだが…。さて、今日はいったいどのような御用で?」

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