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第14話

――マイアの記憶――


さすがお父様が手入れを命じているだけあって、ベンチや机は公園にあるものとは思えないほどきれいに手入れされている。

とはいっても、その命令された人物というのはお姉様たった一人なのだけれど。


「(さっすが、自分も汚れているだけあって汚れを落とすのは得意みたいね。汚れとはお友達同士なのかしら?♪)」


クライン様とのデートがうまく行ったら、そのお礼に痛んだパンでもプレゼントしてあげようかしら。

心地よい香りに満たされるベンチに腰掛けながら、私は心の中でそう思ったのだった。

そして私に続き、クライン様もベンチに自身の腰を下ろした。

2つのベンチは机を介して向かい合うように設置されているので、私とクライム様は自然と視線を合わせられるポジションとなる。


「あ、改めましてクライン様、こうしてお会いできましたこと、このマイア本当にうれしく思います!」

「お招きありがとう。こんな素晴らしい場所に案内してくれたこと、私もうれしく思うよ」


彼の雰囲気を見る限り、それは建前ではなくて本心から言ってくれているように感じられた。

…この場所を知れたことがうれしいのか、私に会えたことがうれしいのか、まではあえて聞かなかったけれど…♪


「それにしても、クライン様が下げられているその宝剣、本当に美しいですね…!」

「ありがとう。これは陛下から預けられた大切な宝剣なんだ。それこそ、私にとって命よりも大切と言っていいかもしれない…」

「近衛兵としてのお仕事をご立派に果たされているのですね!尊敬します!」


…と、そんな会話をしたところで、私の脳裏にひとつだけ彼に関する疑問が沸き上がった。

ずっとずっと気になっていたけれど、なかなか聞けずにいた事。

ちょうどいいタイミングと思い、そのまま彼に聞いてみることにした。


「そういえば、クライン様はよく教会にいらっしゃいますよね?あの教会には、なにか特別な思いがあるのですか?」


私の言葉を聞いたクライン様は、珍しく一瞬だけその表情をはっとさせた。

けれどすぐに普段の無表情に戻すと、冷静な口調で言葉を発した。


「昔、大切な人と約束した、大切な場所なのです。…もっとも、もう長くお会いできていませんから、向こうはもう忘れてしまっているかもしれませんが」


そう言葉を漏らす彼の様子は、どこか寂しそうで儚気だった。

…彼が見せるその雰囲気こそ、私が彼に惚れ込んでいるなによりのポイント…!


「そうなのですね。どなたかは存じませんが、クライン様にそこまで想われるということは、さぞ素晴らしい方なのでしょうね」


けれど、そのポジションはすぐに私が奪って見せましょう。

クライン様の心を掴むのはほかでもない、この私が最もふさわしいのだから。

…レベッカ?あなたには永遠に味わえない思いを、私がかわって全部味わってあげるわね♪


「…クライン様、もう少しゆっくりしていかれませんか?今日、私の家には誰もいないのです…!」


お父様とお母様がレベッカを連れ出して出かけてくれているおかげで、今家には誰もいない。

だから、誰に邪魔をされる可能性もない。

…これはもう、運命が私に味方をしてくれているとしか思えない…!

そう確信した私は勇気を振り絞り、クライン様に対してそう言葉をかけた。

彼からの反応は…。


「それはうれしいお誘いだけれど、遠慮しておくよ。まだ仕事が残っているからね」


彼は普段と変わらない真剣なまなざしでそう言うと、ベンチから立ち上がって再出発の準備を始めた。

…誘いを断られてしまった私は心の中に少しショックを隠せないけれど、まぁ今回はこうして短い時間でも一緒にデートできただけよしとしようと思った。


「もう行かれるのですね。…もっともっとお話ししたい気持ちでいっぱいですが、今日はここまでですね…」


そう言葉を発した私に対し、彼は簡単な会釈を行った後、そのまま私の前を後にしていった。

今後の進展もちょっぴりだけ期待していただけに、そうならなかったのは少し残念。

…まぁ、もともとここには仕事の合間によってくれったとのことだから、初めからこうなることは決まってはいたのだけれど…。


「(…まぁひとまず、最初のデートにしては上出来だったかしら…♪)」


私は絶対に彼を離したくない…。

それこそ、たとえ彼に違う女ができたとしても、その女を排除して私を優先させて見せる。

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