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第2話 逃走

「もうちょっとなんかあっただろ…」

そんなことを言うのはこの俺鈴木 総司。

異世界転生者だ。そして今、サバイバルを強制されている男だ。


「いやもう完全に森じゃん。文明の光が1mmも見当たらないんですけど?」


 ついつい独り言が出てしまう。先行きの不安からだろうか?非日常的な経験を受け入れられていないのだろう…

 しかし俺には女神からもらったスキルがある。『掃除』という現状とは対照的に日常感にあふれるスキルだが、これだけ持って送り出されるという事は、それなりに有用なスキルなのだろう。というかそうであってください!お願いします!


「まずスキルってどうやって使うんだ…?こう、力をグッとすれば出るものなのか…?」


とりあえず力んでみたり、両手から誰でも知っているあの国民的ビームの型を取ってみたり、試行錯誤する事数分。


「スキル発動!……?」

 何か力が抜ける感覚があった。異世界転生始まったな…!何が起こった⁉

周りを見渡してみても何も変化がない。しかし何かが発動したという確信のみがある。

注意深く確認をすることまた数分。


「……袖のシミが消えてる…。」


俺のチートスキルは重曹と同レベルであった。



ハートレス・ストーリー~スキル『掃除』で邪神を倒さなければいけない件について~


                   ┼ヽ  -|r‐、. レ |

                    d⌒) ./| _ノ  __ノ

                   _______

                 企画・製作 ■■:■■■

 


「いやこんなことしてる場合じゃねえ!どこか安全なところを探さなきゃ!」


 もうだいぶ終わっている感があるが、邪神とやらを倒せなくとも、第2の人生で何もせずに山奥で野垂れ死ぬのは嫌だ!いま出来ることをしよう。

 そこらへんに落ちていたいい感じの木の棒も拾ったことだ。食料を探しながら、水辺に向かいつつ、人のいそうなところを目指そう…


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駄目みたいですね。


 俺は絶望していた。ここは現代日本ではないのだ。しかも異世界ときた。当然常識は通用しない。とすれば当然敵対的なモンスターがいるのは当然であり、一学生でしかない、履歴書の趣味・特技欄に「掃除」と書くような自分では逃げ切れないのであった。


「なんだよこいつ!ゴブリンってやつか?!」


 推定ゴブリンは奇妙な生命体であった。黄土色の肌に腰みのを纏いこん棒を持つ、120㎝程の小鬼といった風貌。そして何よりも頭に生えている葉っぱが何よりも目を引いた。それが2体。

 いくら自分より小さい相手だからと言って、明確な殺意をもって武器を使い襲ってくる生命体。それが2体もいるのだ、そこらへんで拾ったいい感じの棒もすぐにへし折れ、手傷も負った。逃走一択なのであった。


「jaaaaaaaaaaaaa!」


「痛ってぇ!めっちゃ殴ってくる!」


 言葉の通じない存在が明らかな殺意をもって攻撃してくる。こんなにも恐ろしいことだとは思わなかった。しかし自分のほうが足は速い。運動不足な体に鞭を打ち、殴られた右手をかばいつつ、脇目も降らずに森を駆けた。


「ふぅ…何とか撒けt」

「jaaaaaaaaaaaaa!」


なんだよもう!またかよおおおおお!

俺は再び森を駆けた。



「はぁ…はぁ…オエッ…なんでこんなに執拗に追いかけてくるんだ?何回も撒いたのに!」


 確かに彼らの走る速度はそこまで早くない。自分の歩幅なら十分に距離をとることも可能だ、しかし何度撒いても同じ個体に見つかり、追いかけられる。

正直精神的に限界だ…そう思い4回目の小休憩をはさんでいたところ、俺は気づいた。


「血の匂いか?しかし…」


最初に遭遇した時、右手にこん棒を食らった。多少の擦り傷だから無視していたが…今思えばこれが原因なのだろう。しかし原因が分かったとして対処方法がない。血はすでに止まっており、これ以上は自然治癒に任せるしかない。匂いを誤魔化せそうな水場もない。

どうすれば…その時俺に電流走る!


「あっこれかぁ(スキル)!」


 完全に忘れていた。このスキルを使えばあるいは…!

再びスキルの宣言を行い、負傷した右手に力を籠めると…右手の傷が、少しだけ小さくなった?


「効果量がしょぼすぎる!」


 女神からもらえるスキルの効果量じゃねえよこれ!しかしどんなに効果量が小さくともこのスキルに頼るしかない…。

 血の匂いを『掃除』した、という事なのだろう。必死のスキル連打の甲斐はあったようで、あの葉っぱの生えたストーカーゴブリンどもに再び合うことはなかった。


 やっぱ女神様最高!熱い手の平返しをする俺だが、そもそもこんな目にあっているのはその女神のせいであることを思い出し、5分後に再び手の平を返しながら、周囲を探索するのであった…


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「やっぱこのスキル神だわ。」


 このスキルは戦闘にこそ役に立たないものの、着続けてくたびれ始めた服を新品同様にする、トイレットペーパーがいらない、そこらに生えていた謎の果実の消毒、濁った水をきれいにするなど地味に便利であった。

 最期の二つはどこまで綺麗にできているか分からないが…腹を下していないのだから、効果はあるのだろう。果実に至っては、スキルを使用したものとしていないものでは味に差が生じていた。体感ではあるが、使用したものの方が甘みが増していた…気がする。

 第二の人生は果物屋でもやるか?


 そんなことをしながら3日間さまよい歩いていると、小屋を見つけた。

助かった!このままひっそりとモンスターに殺されて死ぬのではないかと思っていたが、これで一安心だ。

 

小屋の中にはベッドと椅子が一つずつ。生活感はないが、そこまで埃が積もっている様子はない。香水のような匂いも微かにする。最後に使われてからそこまで時間はたっていないことが推測できた。

 すると途端に眠気が襲ってきた。一般的な大学生が丸3日間何も分からない土地でサバイバルをしていたのだから、精神的に参っているのだろう。俺はスキルで床の埃を払い、上着を下敷きとして睡魔に身を任せることにした。

 小屋の外の、人影に気づくこともなく…


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