第3話『痛みも何もかも“―――”為に』
「嬉しいけど、休んで? 幸愛」
「ううん。休んじゃ駄目、出来ないの。恵鈴が元気になるまでだから」
「皆居るから大丈夫なのに……相変わらずね、幸愛は」
「それと、ただの過労だから」
「関係ないの」
「よーしよし」
「撫でる役逆じゃないかな、恵鈴」
「いいでしょ?」
「じゃあ、あたしも撫でる、愛でる」
「それだけね。それ以上は今度ね」
「勿論」
恵鈴が寝たのを見届け、振り返らず聞く。
「過労、だけじゃないね。他にもだね」
「頼り過ぎたかな……」
「そんなことないよ」
「いつも通り、めぐりちゃんの暴走だよ」
「ただ……」
「ただ?」
「今回は数週間必要かな。ゆあちゃんが何もしないのは初めてだから、絶対じゃないけれどね」
「うん。任せて」
「じゃあ、わたし達行くね」
「行ってらっしゃい」
「多いね」
「まあ、流石に……キャパオーバーかしら」
「私達が産まれるより前からオーバーじゃーん」
「それより……今日はどこに行くのー?」
「そうね……動物園とかどう?」
「いいんじゃないかしら」
「行こー!」
流石にすぐには元気にならないよね、人間だもの。
この身体になったあたしと違ってね。
2、3本無くなったりとか、そうなっても1日でどうにかなるから、そこは便利かも。
まあ、元通りになってすぐに、恵鈴がこうなった訳だけど。
いつもなら大丈夫だけど、今回からはそうじゃないからね。
頑張らなくちゃ。
「幸愛」
「起きた?」
「もう、違うのね」
「そう?」
「うん。私達は不満とか何も思わないし感じない」
「何を選んでも、ね」
「だけど、やっぱり……ね」
「分かってるよ、勿論」
「そこでストップね」
「うん。愛してる」
「愛してるよ、おいで」
懐かしいなあ……あの時も……。
意外と何とかなるものね。
「よし、と言われるまでする事が無くなっちゃうなあ」
「恵鈴はいつもやり過ぎだから加減して」
「歳かなあ」
「そんな訳ないでしょ。ただのやり過ぎ」
「そもそも余計な事までしてるじゃん」
「やーいいじゃないの」
「こうしてるのも飽きたし、どこか行く?」
「駄目。もし行くとしても泉とかその辺りまで」
「ケチ臭いねえ。大丈夫だよ」
「そう言ってこうなってるじゃん」
「おーおー痛いなあ」
「何ともないでしょ」
「勿論。で、何しようか」
「じゃあ、その……」
「いいよ。おいで」
「イベントか何かかなー?」
「みたいね。入って最初に、これ見よがしに兎さんが居るものね」
「兎さんならここに居るわ」
「最近なってないじゃーん」
「兎さんになると、皆がわざと意地悪するからかしら」
「わたしのご飯美味しくない?」
「……美味しいわ」
「でも、わざとらしく、意地悪して、ペット用ご飯を用意しなくても良いと思うわ」
「じゃあ今度からは同じ、同じご飯用意するからね」
「意地悪だねー」
「それよりも行こー」
「意外と元気でしょ?」
「だけど制限される訳も知ってるでしょ?」
「にしても、あの人の世界には行きたくないねえ」
「突然ね」
「昔から当たり前の様に生きて来た」
「そして今ふと思ったのよ」
「まあ、良い所もあるかもしれないけれど」
「あたしも嫌かなあ」
「それと、あたし達が今話してる事とかも、だもんね」
「そうね。ボク達は死のうと思えばいつでも死ねるし、殺される」
「だけどもあの人は出来ない」
「まあ、妹を説得するしかないんじゃない?」
「ボクが妹なら折れないだろうなあ」
「あたしも」
あ、妹と言えば……Fleurはお姉ちゃんが居たっけ。
居るとしか聞いてないから、今度聞こうかな。
「で、何でそんな話したの?」
「聞かなくても分かってるでしょ」
「まあ、そりゃあね」
「どうなの?」
「勿論」
「そっか。大丈夫だから」
「愛してる」
「愛してるよ」
「で、何でまたここに居るのかしら」
「嫌いなのー?」
「同じ質問しましょうか?」
「ぷー」
「それにしても、全部見られるとは思わなかったな」
「余裕でしょー」
「この広さと数だと大変じゃないかしら」
「でも余裕だったでしょー?」
「そうだね。どうしてるかな」
「勿論帰ってるわ――って、突然ね」
「気になったの」
「知ってるわ。ま、良かったと思うわ」
「そうだね」
「終わったー?」
「まだ見るのかしら?」
「もちろーん」
「で?」
「やー何かついついー」
「で?」
「いいでしょー花ー」
「めぐり、任せたわ」
「何でボク……まあ、放置で良いだろう」
「ゆあちゃんどう?」
「多分?」
分からないが正しいし、分かる訳が……。
「そうね」
相変わらずね。
「謎だねー」
「まあ仕方ないかしら」
「だけどもう厳しいね」
確かに厳しいかな。
早くしなきゃ。
「にしても、だよねー」
「そうね。だけど、って感じね」
「ま、寝るか」
「だねー」
色々聞きそびれたなあ。
聞こうと思って逃す、それを何度繰り返してるんだろ。
まあ今は後でもいっか。
「愛してるよ」




