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Poupées, Fleurs et Amour  作者: 山吹凪咲
2/8

第1話『もう戻らない』

「それで、具体的にはどうするのかしら?」

「帰すの。傍に居て帰すの」

「……」

「ゆあなら大丈夫と思うかしら」

「問題とか?」

「まあ、そんな所かしら」

「そもそも詳しいこと知らないのよね」

「んー、まあ……いつか話すわ」

 知らなくていいことなのかな?

 それか、他に理由があるとか。

 まあ、いっか。

「ちなみに、今出来るかな?」

「やってみるといいわ」

 …………。

「何も起きない……」

「当たり前かしら」

 分かってるなら先に言って欲しかった。

 意地悪だなあ。

「拗ねないで欲しいわ。愛しいゆあ」

「……」

「まあ、なるようになる、かしら」

「なるようになる、かあ」

 …………。

「じゃあ、始めるかなあ」



「ねえ、これでよかったの?」

「いいの。十分幸せ」

 確かに外に出たってどこにも行けないけれど……。

 家でよかったのかなあ。

「他の皆は?」

「お出掛けしてるよ」

「どこに?」

「遊園地」

「冬だけど……」

「オールシーズン楽しめる、と思う、よ? ……わたしは」

「そう、なんだ」

 1度も行ったことないから分からないや。

 ……家の外なんて、あの日以来出てないなあ。

 まあ、出られないから仕方ないけどね。

「で、何をするの?」

「愛してる」

「……バレてたかあ」

「分かるよ。当たり前」

「あと――」

「皆も分かってるからね」

「……」

 何で皆は分かるのかなあ。

 どう見たって、聞いたって、考えたって分からない時でも、皆は分かっていたなあ。

「愛してるから、だよ」

「そうだね」

「だけど、それだけじゃないよ」

「いつの間にかそんなに話さなくなった」

「うん。あの時間を除いて、だね」

「それは仕方ないじゃん」

「というかそれは皆もじゃん」

「ゆあちゃんには負けるかなあ」

「むう……」

 そんなにかなあ。

「何も知らない人が見たら不思議な光景だよね」

「あたしが話さないのに、会話が成り立っているからね」

「いいの。わたし達だけが分かっていればいいの」

「うん」

 …………。

 あ、そうだ。

「少し……少し歩かない?」

「じゃあ、これ着てね」

「これは……?」

「お出かけ用の洋服。作っていたの」

「ありがとう」

「おいで」

 あの日から作ってくれているけど、本当に良く出来ている。

 だけどこれはどうしたって隠せないね。

「変、じゃない?」

「とても似合っているよ」

 良かった……。

「後は……こうして…………出来た」

「ありがとう。でも、ご――」

「めっ。約束でしょ?」

「うん……」

 まあ、何度言われても、あの日から毎日ずっと、ありがとうとごめんを繰り返してるんだよね……。

「よし、行こう」

「お願い」

「任せてね」

 久しぶりだなあ……出かけるの。

 さて、どうしよう。

「凪の好きにしていいからね」

「先に言われちゃった」

「えへへ。あたしはこうして居られるだけで……」

「じゃあ泉に行こう」

 にしても、意外と綺麗だなあ。

 誰がしてるのかな?

「時々お願いしているよ」

「じゃないと駄目になっちゃうからね」

「ありがとう」

「このままだと余る位わたし達は持ってるからね」

「恵まれているよね、あたし達」

「さあ、着いたよ」

 変わらないなあ。

 ここで……。

 ………………。

「愛してる」

「愛してる。いつまでも、どこに居てもずっと」

「もう……もう、戻らないから」

「これが最期」

「うん。知ってる、分かってる」

 淡く鈍く光る――それを、離した。

 そして、帰した。

「ねえ」

「うん」

「貸して」

「おいで、凪」



「あ……」

「どうしたのー?」

「帰って来たのだろう?」

「ええ」

「じゃあ次は明だねー」

「ああ」

「よし、どんどん行こー」

「少し休まないかしら――って言ったって無駄ね」



「もう過ぎたね」

「どうしようか?」

「任せてね」

「うん」

 ゆっくり、ゆっくりとお家へ帰る。

「どうぞ」

「早いね――ってこれ……」

「懐かしいでしょ? でも、流石にあの時と同じには出来なかったけどね」

 そりゃあ、あの時は初めてで、今はもう何度もしているのだから。

 そうじゃなくても、同じは難しいよ。

「どう?」

「美味しい」

 あの時よりも、だけど。

「知ってたよ」

「そう?」

「当たり前」

「あの時と違って他にもあるからね」

 うん、知ってる。

 作り過ぎじゃないかな?

「そう?」

「いつもより多いかも?」

「で、この後はどうするの?」

「ゆあちゃんの――って言っても仕方ないもんね」

「お互いに言い合っちゃうからね」

 思い付きや気の向くままとかだったのに、衝突はなかったなあ。

 戻る事がないのは良かったかも。

「おいで」



「流石にほんの少し、ほんの少しだけ疲れたねー」

「相変わらず元気ね、まどか」

「負けないよー」

「まあ、クロは底が無いからな」

「言われてみればそうね。毎日実感してるかしら」

「帰るー?」

「んー、そうだな……帰るか」



「皆が居ないと、寂しいね」

「言われてみれば一緒だったものね」

「特に、円叶が居ないと、ね」

 無限と言っても過言じゃない位だからなあ。

「今、帰ってるみたいよ」

「2人きりも良いけど、やっぱり皆と一緒がいいね」

「そうね。だけどしなきゃね」

「何をしようかなあ」

「いつもと変わらないんじゃない?」

「だよね」

 どうしようかなあ。

「また、いいかな?」

「うん、行こう。おいで」

 着せ替え人形も悪くないかも。

「あれ?」

「実はまだあるの。後何着かあるから、もし出る時は任せてね」

 何着作ったのかな?

 全部着られるかなあ……。

「よく似合ってるよ」

「ありがとう」

「そこまで行かない?」

「おいで」

 もう少しで夕方かな?

 流石に寒いなあ。

「あちら側に行ってみたい」

「勿論」

「こうして過ごすの何年振りかな」

「10年以上、ゆあちゃんだけ出られなかったね」

「あたしが選んだ事だから」

「それに皆が居るから」

「愛してるからね」

「まあ、それだけじゃないけどね」

「そうだね」

 変わらない。

 本当に変わらない。

 だけど――

「あちら側は流石に違うね」

「そうね」

「寒いね」

「こうしてたら暖かいでしょ?」

 うん、とても。

 そうだ――

「ここまで来たら逢えるかな?」

「もう着くと思うから、逢えると思うよ」

 びっくりするかな?

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