配信動画
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『さあ、本日も《業界で本当にあるある、怖い話・裏》と題しまして、ゲストの方にテレビでは話せなかった話を聞いてまいります!』
『今回はゲストの馬上さくらさんに、ヒーローショーの裏話的な業界あるあるをお話しいただきました』
『え? あるある? 馬上さんの話ってあるある?』
斜に置かれた二つの机の片方に番組MCの二人、もう片方の机にゲストの馬上さくら。
番組放送後に配信される動画は座談会形式だ。
『あるあるですよ? 今回はヒーローショーの話でしたけど、テレビ局の怪談ってたくさんありますよね? 同じカテゴリーだと思うんですけど』
『あ~! あるある! ありますね!』
『言われてみればね。あるあるですね!』
『むしろヒーローショーの方が事例的には少ないと思います。基本的に単発アルバイトの人達が中に入っているので、特に役者志望でもなく単なるイベントスタッフ系のアルバイトとしてやっている人も多いので。もちろん全員アクション事務所でスタッフ登録しますので長く続けている人もたくさんいます』
『テレビ局はね。過去に何かやらかしたプロデューサーの霊とかね、亡くなった女優さんの霊とか聞きますね……』
『女優さん限定なんですか? 男性の俳優さんは?』
『そういえば聞きませんね。……あっ、でも売れなかったお笑い芸人とか局でなくてもスタジオだとミュージシャンの話は聞きますね』
一頻り業界の怪談で盛り上がる三人。
『ところで、馬上さんは番組内でコスプレが趣味だとおっしゃっていましたが……』
『コスプレが趣味って言うとニュアンスがちょっとアレなんですが……。アニメやまんが、小説やゲームの再現ですね。やっているのは。友人や親戚の子達と、好きな作品を原作に忠実に再現して満足するついでに動画や写真をUPするというヲタ活です』
『動画UPはついでなんですね(笑)!?』
『そうですよ。自分が満足するためにクオリティーを追究しているんですから!』
『なるほどね~』
『いや、そのわりに再生回数何十万ってついでにしてはすごくないですか?』
『クオリティーを追究してますから! あと、最近は音ゲーの3Dライブの完コピ動画で急に再生回数が伸びましたね』
『それが踊ってみたってやつですね』
『で、そのわたしのヲタ活をたまに手伝ってくれている親戚の子が、最近すごい怖い目にあったらしくて』
『おっ』
『きたきた!』
『最近すぎてまだ怯えているらしいのでテレビではどうかと思ったんですけど……』
『そういう話は動画配信でもして拡散するべきですね!』
『某ホラー映画のリ⚪グウイルスみたいなこというなあ』
『このビデオを見た人は……って?』
『いえ、生きてますよ!? 女子高校生と大学生のお兄ちゃんの兄妹の話なんですけど…………』
『怖ッ!』
『え、最近って言いました?』
『たしか先月末の話ですね』
『神奈川のそこって橋渡ったらもう都内じゃないですか』
『そうは言いますけど、都内だってタクシードライバーさんの怪談あるあるで八王子とか聞きますよ?』
『あ~。いつの間にか乗ってるお客さん……』
『そうそう。いつの間にか消えてるお客さんとか。その場所は素通りしても乗車拒否にならないらしいです。何を隠そう家の父が元タクシードライバーでして』
『うわー』
『で、そのお兄ちゃんの話を聞いた父が、「タクシー業界あるあるだよ」とか「その後ドライバーさんが体壊したとか事故ったとかないから大丈夫だよ」とかって言って。わたしも兄妹それぞれにお化け探知機を渡して、兄妹のお父さんがその中古車を早々に処分してようやく少し落ち着いてきたらしいです』
『ちょっと待って!』
『お化け探知機って言いました!?』
『そうですそうです。知りません? このくらいの大きさで、赤く反応したらボタンを押して結界を作動させる事ができる探知機なんですけど』
『小さいのに高性能!』
『え? 売ってんの? 本当に?』
『本当に。そういうのを真剣に作ってる会社がありまして…………』