推理…だと!?
午後三時。
子供にとっては丁度おやつの時間。
この時間帯だと、子供を連れた奥様方がやって来る時間だ。
カラコロンカラン。
ドアが開くと小さい男の子と女の子の二人を連れた女の人がやって来た。
「こんにちは」
『いらっしゃいませ』
さっきまで学校の制服と私服だった雛菊も水蓮も、ちゃんと喫茶店の制服(バイト用の服)に着替えていた。
やって来たのは佐竹さんと言う喫茶店の近所に住む若い奥さんだ。
佐竹さんは子供を従業員にあずけてカウンターに座り、オーナーの四谷さんと重々しく話し出した。
「何を話しちょるか気になるがか?」
雛菊は小声で萩斗に話かけた。
「別に気になってないけど。ちょっと重々しいんだよね、空気が」
「あれは間違いなく夫の話じゃき」
首を突っ込んできたのは、さっきまで子供達と遊んでいた水蓮だ。
「最近夫があやしい感じになったとかどうのこうの、そんな話じゃ」
「確かに、そんな空気しちょるな」
「うん。でも僕らが首を突っ込むのはめんどくさいし」
すると、バコンッ!と良い音がして、三人はおぼんで頭を叩かれた。
「何してんねんお前らは。はよ、テーブル拭けや!」
「痛っいなあ!何するがか荘記!」
「さっきのランドセルのお返しや!痛いと思ったら、中にめっちゃ教科書入ってんねんもん!」
「うるさい!今日は五教科あったがね!」
雛菊が歯向って行ってもデコピンされて終わるのだが。
「本当ですか!?ありがとうございます!」
カウンターの方から明るい佐竹さんの声が聞こえて来た。
佐竹さんはペコッとお辞儀をすると、子供を連れて帰ってしまった。
「水蓮。夫の話にしてはずいぶん明るくなかった?」
萩斗が水蓮に訊くと開き直ったようにこう言った。
「あれは、もう一人子供が生まれるとかそう言う話だったんじゃ!」
「おーい、テメーら!ちょっと来い!」
四谷さんがみんなをカウンターに呼びつけた。
「どうしたがか?オッサン」
雛菊が可愛らしさのカケラもないききかたをする。
「実は、最近ここらでストーカー事件があるらしい。だからそれを調べて欲しいとの事だ。佐竹さんが言うには」
出た。
これが喫茶店の変なところ。
探偵でも無いくせに、事件を引き受けては解決しようとする。
従業員からすれば、ありがた迷惑だコノヤロー。
そして仕事が終わるとその事件に取り掛かるのだ。
「つー事で、頑張ろうな!」
「頑張ろうな!じゃないきに!!」
四谷さんがオッサン臭い笑顔を振り撒くと同時に水蓮のパンチが顔にヒットした。
「また、俺等で解決せえっこちゃなぁ?」
荘記の問いに血を垂らしながら頷く四谷さん。
「こんの、無責任オッサンがあ!今日はなにしちょるか!飲み会がか!?」
雛菊は胸ぐらを掴むと大声を張り上げた。
その後も三人からの攻撃を受けた四谷さんのヒットポイントは0になった。
「はあ…もうやだ」
萩斗は溜息をつくしかなかった。