メンバー
『ここはとある喫茶店。何も変わったことのない喫茶店。のように見える』
そう思っていたのは、この喫茶店で働く川島 萩斗十六歳である。
十六歳っつったら、高校生じゃね?
と思うかもしれないが、萩斗は学校へ行っていない。
そこは作者のやりやすいような設定の一部であり、実際の個人名・団体とは一切関係ないわけで。
さて、この喫茶店の何が変わっているかと申しますと。
お客様は至って普通の人間の方々ばかり。
行列ができていると言う訳でもない。
店の外装も、そこらへんにある喫茶店を思っていただけるのならば大方間違いはない。
変わっているのは、働く人…――つまり従業員だ。
萩斗をはめて五人の従業員がいる。
何が変わっているか…メイド服を着るでもえんび服を着る訳でもなく、そこらへんの従業員なのだが。
その従業員達。
自分の住んでいた地方のなまりが強くて、東京生まれ、東京育ちの萩斗には何を話されているかさっぱり分からないのだ。
ここ最近は慣れて来たのだが。
変なところはもう一つ。
喫茶店のオーナーである「四谷さん」(オッサンと呼ばれている)以外は、全員学生なのだ。
みんな学費を稼ぐために住み込みで働いているため、ちょっとした家族でもある。
そんな変わった喫茶店で何も起きない…ハズがない!!
今はお客さんも居なくて暇なので、従業員を紹介することにする。
まずはオーナーの四谷さん。
結構一緒に暮らしては居るが、下の名前は未だわからない。
四十代後半のオッサンで、この喫茶店を立ち上げた人。
偉い人みたいなのだが、そこらへんに居るオッサンと変わらないので、そんなに偉そうな人には見えない。
「ふぃー!ただいま!」
「オッサン!オレンジジュースくれ」
カランコロンカランと鳴るはずの鐘がガランゴロゴロ!と勢い良く鳴るくらいにドアが開き、二人の小柄な女の子が入って来た。いや、帰ってきた。
「ふぃー!ただいま!」と言った方が山木 雛菊ちゃん、小学六年生。
ツインテールの髪型ですごく可愛い女の子だ。だが、どこか解らないが地方のなまりが強い。
「オッサン!オレンジジュースくれ」と言った方は桜沢 水蓮ちゃん、中学二年生。
目が大きくて、ボブショートの活発的な髪型の女の子。柔道部に所属しているらしい。こちらも、どこのなまりなのかは解らないが、かなり強烈。
雛菊はランドセルをロッカールームにボフッと放り投げ、水蓮はブレザーを脱ぐとオレンジジュースを一気飲みした。
「痛っ!!お前ら、おっせーぞ!!」
ロッカールームから男の人の大声が飛んできた。
言い放ったのは小出 荘記、高校二年生。萩斗同様に学校へは通っていない。喫茶店では一番の先輩。関西の方の方言を使うっぽい。
そんなメンバーで営む喫茶店。
本当に大丈夫なのか!?