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プロローグ~豪雨の乱戦・桶狭間~

【はじめに】


この小説には歴史上の人物名が出て来ますが、あくまでもその性格や行動は筆者の創作です。


また歴史背景はある程度は史実に乗っ取っていますが、筆者の執筆上の都合により、必ずしも史実に沿うものではありません。


元々かなり筆者の妄想から出た産物なため、それを予め御承知の上で閲覧下さい。

「ブーン…どすん」


思わず身体が仰け反る。


何か丸太のようなもので、ブン殴られたような衝撃で目が覚めた。


顔の上にずっしりと重みのある物が乗っており、息が出来ない。


身体全体にもずっしり感があり、両腕が上がらないために、顔の上の物を取り除く事が出来ず、必死に腕を上げようともがいていると、不意にその何かが持ち上がり、白い閃光が射し込んで来た。


廻りは一瞬に黄色から赤へ、そして黒くなり、突如として視界が回復した。


身体の感覚が回復していないため自信はないが、どうも自分はカッと目を見開いているらしく、瞼に大粒の雨が当たり、目の中にも流れ込んでくる。


感覚がまだまだ鈍いためか、痛みは感じないが、流れ込んでくる水滴のせいで、急に視界が悪くなり、まばたきをすると、そこからフイにどす黒い顔が現れた。どうやら誰かがこちらを覗き込むように腰を屈めて視ているのが判る。


手には何か髪の毛の束が無造作に折り畳まれた丸い物を鷲掴みにして持ち、ひたすらこちらに声をかけてくれているようなのだが、残念ながら音が遮断されており、聞き取れない。


どうも聴覚をヤられてしまっているらしい。声どころか周りの音すらも隔絶されている。


耳からはひたすらに「キ~ン…」という鋼と鋼を子擦り合わせたような不快な音が鳴り響き、聴覚を完全に支配してしまっているのだ。


音が消える瞬間もたまに有るが、おそらくそれは俺が時折、意識を失うためで、覚醒と共に再び耳障りなキンキン音にさらされ、相変わらず目に流れ込む雨粒にも悩まされる…その繰り返しなのであった。


普段であれば、気色が悪くてとても我慢為らない代物であるが、生憎と身体が麻痺して動けないため、好きにさせるしかない。


我に返ると、さっきのどす黒い顔の男が、相も変わらず必死の形相でこちらに叫びかけてくる。おそらく俺を助けようと必死に語りかけてくれているのだろう。


こちらもその気持ちに応えたいのは山々なのだが、とにかく口唇も麻痺しているのか声も出せない有り様なのだ。手が動けば、身振り手振りで応ずる事も出来るのだが、それも叶わず、ただひたすらに目をカッと見開いたままで居るようだった。


すると急にその顔は居なくなり、またしばらくすると戻って来て先程と同様の無駄な努力をひたすらに続けると、やがてまた居なくなる。その繰り返しなのであった。


どうやら未だに雨は降り続いており、止む気配は無さそうだった。そのため、胸くそ悪い事に、視界を遮るように雨粒が、相も変わらず、絶え間無く、目の中に流れ込んでくる。


しばらくすると、思考が少し戻って来たようだ。不意に…ああ…俺は原野で仰向けに横たわっているらしい…と気づいた。


周りでは、(いくさ)備えをした足軽兵達が、刀や槍を手に右往左往しているのが、時折り、視界に入って来るようになって来た。


すると…ここは戦場で、自分自身は傷を負い、倒れているに違いない。…であるならば、先程の顔の男は、仲間で、俺を必死に助けようと叫び掛けてくれていたのだろう。


だが、まだ戦闘が続いているらしく、次々に襲い掛かって来る輩を()ね退けては、俺にまた近づき、とにかく言葉を掛け続けてくれているという事のようだった。


いのちの危険を顧みる事無く、無駄な努力と判っていながら、俺を助けようとする姿勢に、俺は感無量になった。そしてその想いに応えたいのだが、必死にもがこうとしても、残念ながら全く身体は応答しないのだった。


理解する事と、実際に行動する事が、俺の身体の中では、未だに噛み合う事無く、相手の想いにはとても応えられそうになかった。


『こりゃあ死ぬかもな…』


あの男の努力に報いたいのは山々だし、何より自分の大事な命なのだから、諦めたくはなかったが、身体が動かない以上、どうする事も出来ない。それにしても未だに自分が生きているのが不思議なくらいなのだ。


誰も俺にトドメを指しに来ないのが、奇跡に近い状況に思えた。時間は刻々と経って行くが、相変わらず廻りの状況には変化が無く、明るい兆しが見えてくる事は無さそうだった。


そして自分の身体も未だに動かない。思考はかなり回復しており、その度に周りの嫌妖(けんよう)さに却って打ちのめされていくばかりで、解決策を見出だすには程遠い状況なのだった。


『やはり死ぬしかないのか…』


そう半ば諦めかけたその時だった…。


一瞬なにが起きたのか判らなかったのだが、あの男が突如また顔を覗き込んできて、そのどす黒い顔を思いっきり崩すと、いきなりニタッと笑ったのだ。そして、その顔を俺の頭の後ろの方に向けて、目で合図した。


次の瞬間、俺は両腕を持たれたまま、後ろ向きにそのまま引き摺られていた。引き摺られたまま、俺は意識を失った。

【後書き】


(;^_^Aこちらの小説は続きがありますが、本業の合間に書いている事もあり、別の小説の進行具合により、完全不定期配信となります。

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