デッド オワ アライブ・三つ数えて目を瞑れ
後藤理夢(28)は、フリーのプログラマーです。夏の暑い盛りにとうとうエアコンが壊れ、恋人の野山聡子にも逃げられようとしています。そんな不幸続きの後藤に、学生時代に憧れていた炭田玲香からパーティーの招待状が届きます。果たして後藤は一発逆転できるのか??そういったお話です。ラブコメ、アクション、復讐、の原稿用紙60枚のシナリオです。
デッド オワ アライブ・三つ数えて目を瞑れ
登場人物
後藤理夢((ごとうおさむ)28)主人公プログラマー
炭田玲香(28)後藤の初恋の同級生
炭田蓮華(28)炭田玲香、佐伯豊
の三つ子の兄妹
佐伯豊(当時17)後藤の同級生自殺
郷田真司(28)後藤の同級生
小嶋健太(28)後藤の同級生
上村貴士(28)後藤の同級生
野山聡子(30)後藤の恋人
山本圭悟(23)聡子を慕っている
郵便配達員
警官
○東京
西の山際に太陽が沈む。夕日が眩しい。
○道(アスファル道路)
老婆が道に作られた花壇のひまわり
に水をやる。セミの鳴き声がする。
○後藤の部屋(夕)
6畳一間の部屋。窓から西日が入る。
後藤、脚立の上に立ち、エアコンを
触っている。室温計35度を指す。
後藤「夕方なのに。35度って、暑すぎだろ
もうだめだ、溶けそう」
ドアベルが鳴る。
電気屋A(玲香)「こんにちは」
つなぎに、帽子とマスクの
炭田玲香(28)が変装した電気屋が
入る。表情見えない。
電気屋A(玲香)「今日は、どんな御用で?」
後藤、脚立を降りる
後藤「エアコン壊れちゃって、ちょっと
見て貰えますか?」
電気屋A(玲香)エアコンを調べる。
電気屋A(玲香)「間違いなく壊れてますね」
電気屋A(玲香)さらっと言う。
後藤「そうなんです。壊れてるから、
呼んだんですけど」
電気屋A(玲香)「あ、そうですね。これ
はもうどうにもなりませんね。最悪です」
後藤「修理できますか?」
電気屋A(玲香)「修理なら、1ヶ月くらい
で治りますね」
後藤「1ヶ月?夏終わっちゃいますよ。
もっと早くならないですか?」
電気屋A(玲香)「なんともならない
です。でも新品お買い上げなら今日の
夕方にお持ちします」
後藤「それは有難い!新品ならおいくら?」
電気屋A(玲香)「100万円になります」
後藤「100万円!」
電気屋A(玲香)「新品も品薄で、一番早く
手配できるのが100畳用」
後藤「100畳用って、ここワンルームで
すよ。体育館じゃ無いんですよ。もっと
小さい部屋用ありませんか?」
電気屋A(玲香)「お勧めしませんが、
1畳用なら、3日後に・・」
後藤「一畳用?どこに需要あるですか?」
電気屋A(玲香)「一畳用は、犬小屋に特化
したエアコンです」
後藤「そんなら扇風機使った方が、ずっと
ましですよ。他に無いんですか?」
電気屋A(玲香)「あとは、10畳用くらい
ですね」
後藤「10畳のエアコンあるじゃないですか、
それでいい、それがいいです。お値段は?」
電気屋A(玲香)、カタログを見る。
電気屋A(玲香)「5000円になります」
後藤「5000円?いやに安いですね。
大丈夫ですか?」
電気屋A(玲香)「大丈夫です、しかも
イベントつき」
後藤「イベント?良くわからんけど、
まあいいや、それください」
電気屋A(玲香)「じゃあ、ここにサイン
お願いします」
後藤、サインをする。
後藤「デッドオワアライブ(生死に拘らず)
サインしましたよ。いつ設置ですか?」
電気屋A(玲香)サインを確認して。
電気屋A(玲香)「納品は一週間後、お代金
はその時で結構です。もし命があれば」
後藤「命があれば?仕方ない・・わかりま
した。早くなったら、連絡ください」
電気屋A(玲香)「ご安心ください。遅く
なる事はあっても早くなることはあり
ません。どうかご無事で。失礼します」
電気屋帰る。がらんとした部屋。
後藤「へんな、電気屋だったな」
ドアをノックする音。
後藤「どうぞ」
合鍵を回す音がして野山聡子(30)
入ってくる。
聡子「後藤くん、あの返事まだ貰ってない
んだけど」
後藤「なんの話だっけ?」
聡子「私と結婚するか、別れるかの話よ。
先週から返事待ってるのよ」
後藤「その話、一週間後じゃだめかな、
今、エアコン壊れてて、冷静に話せない」
聡子「何よ、真面目に話し合う気あるの?
話す気があれば、喫茶店でも、私の家
でも話せるでしょ」
後藤、パソコンをぱちぱちしながら。
後藤「君んちの実家行ったら、お母さんに
挨拶して、すなわち結婚報告じゃん」
聡子「てことはもう別れるってこと?」
後藤「そんなこと言って無いだろ、あと
一週間待ってくれ、必ず返事するから」
聡子、うなだれる。
聡子「とりあえず、わたしの荷物持って
帰るわ。下着とCDと本とオーディオと・・」
山本圭悟(23)階段を駆けあがっ
て来る。
山本「聡子さーん、荷物何処ですか?」
後藤「誰?この人」
山本「初めまして、後藤理夢さん、
僕、山本圭悟と言います」
聡子「山本くんは、会社の後輩。兎に角、
私の荷物持って帰るから」
山本が、せっせと荷物を運び出す。
後藤「山本さん、お茶も出さないで済ま
ないですね」
山本「いえ、お気遣いなく。僕は聡子さん
の為にしているだけですから」
聡子「とにかく、今日は帰るわ。返事
待ってるわね」
聡子、山本、ドアを閉める。
聡子の荷物が運び出され、壊れた
エアコンと、パソコンだけが
残された。太陽は沈み、外は暗い。
後藤、床に寝転がる。
後藤「この部屋、こんなに広かったっけ」
後藤、目を閉じる。
後藤「聡子、あんな奴呼んで、もう結論
出てるじゃん。もうこれほぼ死刑確定。
こんなに惨めになっても涙が出ない・・
切ないねえ」
ドアの外で声がする。
(ドアベルの音)「ピンポーン」
郵便配達員が来ている。封筒を持つ。
郵便配達員「速達です」
後藤「あ、どうも、ご苦労様です」
封筒、同窓会の文字。
後藤「俺に、速達なんて珍しい・・高校の
同窓会・・しかも軽井沢で一泊・・
幹事は、炭田玲香・・なんだあいつ、今頃」
後藤、中を開き案内を見る。
後藤「日にちは・・明日じゃん。しかも
すでに参加に丸印付いてる」
封筒の中から、新幹線の片道切符
がぱらりと出てくる。
○軽井沢
綺麗な街並み、ジョギングする人、
犬を散歩する人。
○川
緑に囲まれた川、透明な水が流れる。
○川・橋の袂
郷田真司(28)が橋から川の方に向
かって望遠レンズを構えている。
帽子にマスクの後藤、近づく。
後藤「ご主人、その、異常にでかいレンズ
で何をご覧になっているのですか?」
郷田、レンズを覗いたまま。
郷田「静かに!山椒魚がいま水浴びを
しているのです。シャッターチャンス
なんです」
後藤、郷田の耳元でささやく。
後藤「本当は山椒魚という名の美女が
水浴びしてるんでしょ、ちょっと見せて」
後藤、強引に郷田にとって変わる。
郷田「何をするんですか!」
後藤「おお!これは!マジ絶世の美女だ!」
郷田、後藤の帽子をはたく。
郷田「いい加減な事いうな、俺が変態の
覗きみたいだろ、後藤理夢!」
後藤「変態はホントだろ、久しぶりだな!
郷田真司!」
郷田はマスクと帽子を外し笑う。
郷田と、後藤、握手のかわりに、
肘を当てあう。後藤、郷田の頭を見る。
後藤「昔はキューティクルでツヤツヤ
ロングヘアだったお前も今は角刈りか」
郷田「知らないの?いま、ナウなヤングは
皆んな角刈りなんだぜ。環境適応だよ。
お前は?」
後藤「毎日海藻エキス飲んで、髪を育成
する努力している」
郷田「髪の話じゃないよ、仕事、食えてるの?」
後藤「フリーのプログラマーなんて宇宙の
塵の数より沢山いるんだぜ、ご期待通り
極貧だよ」
車のクラクションの音。
サングラスを掛けた炭田玲香(28)
が乗った車が通りかかる。
玲香「おじさんたち、そこ、交通の邪魔
なんだけど」
車の窓から顔を出した、玲香、
サングラスを外す。後藤、目を閉じる。
後藤「この香りは・・?エリザベス・
アーデン、俺が送った香水だ」
玲香、「匂いフェチの変態後藤。香水に後藤
関係ないから。その自意識過剰やめな」
後藤、目を開ける。
後藤「そこまで否定する?俺の初恋の人よ」
玲香「一方通行の初恋は、自分の胸に
しまっておきなさい、変態くん」
郷田、横から口を挟む。
郷田「僕は今でも玲香さま一筋です!」
後藤「言っとくけど玲香、俺たちがおじさん
だったら玲香もおばさんだぜ」
玲香「美人は、年取らないのよ」
郷田「今の方がお美しいです。玲香姫」
玲香「ありがと、郷田くん、郷田君は車に
乗って良し!」
郷田「玲香さん、後藤は態度悪いので
このままほっときましょう、さあ今から
二人で何処いきますか?」
後藤、強引に車に乗る。
郷田「後藤君、不法侵入だよ、すぐ降り
たまえ」
後藤「郷田、どこの方言で話してんだよ、
お前は玲香甘やかしすぎる」
後ろの席に郷田、助手席に後藤乗る。
○玲香の屋敷・門
大きな門が自動で観音開きに開く。
後藤、郷田、玲香を乗せた車、門の中
に入る。車が入ると自動で閉じる。
後藤「ヒュー、これ玲香の家?広いなあ」
玲香「私、これでもエステ関連会社の社長
だからね。これくらいなんでもないわ」
車、庭に作られた池のそばを通る。
郷田「玲香さん、池にワニが沢山います!」
玲香、「泥棒よけよ、近頃は軽井沢も物騒
だから」
郷田「玲香さん、写真撮っていいですか?」
玲香「いいわよ」
玲香ポーズを取る。前を見たまま。
郷田「いえ、ワニの写真です!」
玲香「私より、ワニがいいんだ・・」
後藤「郷田はいろんな意味で一途だな・・」
後藤もスマホでワニを撮ろうとする。
玲香「後藤君、私とのツーショットも
リクエスト可能ですからね!」
屋敷が現れる。
後藤「うわっ、でかいお屋敷!」
後藤、屋敷を見上げる。
○玲香の屋敷・エントランス
後藤、郷田、玲香が中に入ると、
同級生の小嶋健太(28)がいる。
小嶋「なんだ、君たちも呼ばれてたのか」
小嶋、後藤と郷田の顔を見比べる。
誰かのスマホが鳴る。宇宙戦艦
ヤマトのテーマ曲の着信音が鳴る。
後藤「あ、わるい、俺のスマホだ」
郷田「後藤は、昭和で時間止まってんな〜」
後藤「白亜紀から、進化の止まった爬虫類
ラブの郷田に言われたくないね」
郷田「進化してるぞ!爬虫類なめんなよ!」
玲香、テーブルに部屋の鍵を並べ呟く。
玲香「一人、招かれざる客がまじってるわ」
玲香は後藤、郷田、小嶋を見る。
郷田「俺、玲香様と一緒の部屋がいいな」
後藤「それより、俺ちょっと電話してくるわ」
後藤、廊下の端にいく。
○玲香の屋敷・廊下の角
後藤、口元にスマホを当てる。
後藤「もしもし」
聡子の声「もしもし、後藤くん、今何処?」
後藤「いま、同窓会で、軽井沢にいる」
聡子の声「そう、いまね、私、山本くんと
一緒にいるの」
後藤「うん」
聡子の声「でね、食事してね」
後藤「うん」
聡子の声「いまから家に誘われてるの」
後藤「うん」
聡子の声「さっきから“うん”ばっかり。
聞こえてる?」
後藤「うん」
聡子の声「泊まっていかないかって・・
今夜、誘われてて、山本君から・・」
後藤「泊まる?」
聡子の声「そう」
後藤「どうして、俺に断りをいれるんだ・・」
聡子の声「どうしてって・・」
沈黙、エントランスから、大きな
笑い声が聞こえる。
聡子の声「ごめん、同窓会なんだよね、
邪魔したわね、もう切るから。さよなら」
後藤「さよなら」
スマホが切れる。
○玲香の屋敷・ホール
ホールに卓球台。
元卓球部の小嶋が郷田を一方的に
やっつけている。派手に着飾った
玲香(蓮華)が優雅に現れる。
玲香(蓮華)「きゃあ、小嶋くん!
かっこいい!!郷田君だめねえ」
小嶋得意げ、郷田、口数が減る。
後藤、壁にもたれて、卓球を見ている。
後藤「小嶋、あいかわず強いな」
郷田、情けない表情で後藤を見る。
郷田「後藤、援軍頼む」
後藤「小嶋は、元国体選手だぞ、郷田、卓球
勝負を受けた時点でお前はもう負けている」
郷田「なんだよー、みんなひどいなー」
玲香(蓮華)グラスを二つ持ってくる。
玲香(蓮華)「後藤くん、シャンパンいかが?
好きなグラス選んでね」
後藤「玲香なんか雰囲気違うね」
後藤、シャンパンの香りをにおう。
玲香(蓮華)「そう?それ褒めてるの?」
後藤「もちろん、褒めてるよ」
玲香(蓮華)「ありがと。上等のシャンパンよ
身も心もとろけるくらいの」
玲香(蓮華)、上品に、にっこり微笑む。
後藤、無造作に片方のグラスを取る
玲香(蓮華)、残ったグラスを取る。
玲香(蓮華)「健康と、未来のために」
後藤「借金と、エアコンのために」
玲香(蓮華)と後藤、グラスを
合わせる。かちんと音がする。
玲香、後藤の口元を凝視している。
玲香(蓮華)「後藤くん、シャンパン美味しい?」
玲香、自分のグラスを置く。
後藤「俺、最近プリン体ゼロの発泡酒しか
受けつないの、体が。中性脂肪異常だから
せっかくのシャンパンだけど体が拒否る」
玲香(蓮華)「それはそれは」
後藤、自分のジャンパンを絨毯の
床に撒く。妙な匂いがして絨毯が
焼ける。
後藤「上等のシャンパンは、香からして
違うね、さすが」
玲香(蓮華)、自分のシャンパンを
床に撒く。こちらは変化ない。
後藤「もったいない〜」
玲香(蓮華)顔が真剣になる。
手を叩いて、卓球をやめさせる。
玲香(蓮華)「はいはい、卓球はお開きね。
この続きはディナーの後で。汗かいたで
しょ、大浴場は午後10時まで、部屋の
お風呂は24時間入れますからね」
後藤、ホールを出る。
○玲香の屋敷・廊下
郷田「後藤、大浴場いこう!」
後藤「いいけど、なんかこの同窓会
おかしくないか?」
郷田「そう?すっごい楽しいけど」
後藤「ところで佐伯豊ってやつ覚えてる?」
郷田「佐伯豊、綺麗な男の子だったな、
でも、もういないんだよね」
後藤「そう。佐伯豊はもういない。なのに
奴の匂いがする」
後藤、部屋に行く。
○後藤の部屋
6畳くらいの部屋。クーラーが
よく効いている。
後藤「憎らしいくらい、クーラーガンガン
に効いてる。もっと温度下げてやれ」
後藤、クーラーの設定温度を、18度
にしてベットに座り、スマホを出す
時計は午後9時、聡子の番号を発信
する。
(スマホの声)「この番号は電源が入って
ないか、電波の届かない所に・・」
後藤、電話を切りため息。
ドアが急に開く。お風呂セットを
持った郷田が立っている。
夏だと言うのに厚着している。
郷田「後藤、俺はこの時を、待っていた!
大浴場いこう!修学旅行の恨み忘れま
じ!やるぞ、野球拳勝負!」
後藤「修学旅行?何年前の話だよ。郷田。
執念深いねえ、さすが爬虫類オタク」
後藤もありったけの服を着てさらに
上から浴衣を着て、雪だるま状態。
後藤「やっぱ暑い、風呂はリラックスしに
行くとこだぜ、郷田、浴衣でよくない?」
郷田「そうだな、いままでの遺恨はとり
あえずお湯にながしますか」
後藤「おお、成長したねえ、郷田〜」
後藤、郷田、浴衣に着替える。
○同・大浴場・着替え室
後藤、315のロッカーにタオルを
入れている。財布に熊のキーホルダー。
郷田「後藤、おまえさあ、やらしいな、
“サイコ”って女と付き合ってんのか?
変わらんな、そのマニアックな性格」
後藤「お前、良く見てんな。因みに“サイコ
”じゃない。そんな異常な名前じゃない」
郷田「俺は、そんな、まどろっこしいこと
はしない。目があったロッカーが俺に
とって運命100%のロッカーだ。
恋もロッカーもフィーリングが大事なんだ」
後藤「お前みたいに、ちょっと目があった
だけの女にいちいち運命感じる奴が
いるから、世の中に不幸な恋愛が
無くならないんだ。そのおおざっぱな
性格、矯正しろ!O型野郎」
郷田「他人の恋愛を不幸呼ばわりする、
お前こそ、人として終わってる!我が事
しか語らない変態のB型に言われたくない」
後藤「うるせい!言ってくれるじゃないか!
郷田!勝負だ!」
郷田「なにお!このやろ、かえり打ちだ!」
郷田浴衣の上半身を脱ぎ後藤を睨む。
番台に玲香現れる。
玲香「あんたたち、お湯、冷めちゃう
でしょ、さっさとお風呂入りなさい!」
郷田「玲香さま!これは男同士の闘い
なのです!口出し無用です!」
後藤「そうだ!これはプライドを掛けた
闘いなんだ!」
郷田「後藤!俺が勝ったら、血液全部、
入れかえてO型にしろよ!」
後藤「じゃあ、俺が勝ったら、おまえ
B型に変更な!」
番台から玲香、二人を見下ろす。
玲香「あんたたち、そんなに血液どっから
持ってくんのよ!輸血センターだって困る
でしょ!はやく風呂はいんな」
後藤「よし!俺のB型入れてやる!」
郷田「え、まじ、後藤の血かよお」
郷田、玲香の方を見る。
郷田「玲香さまは、何型ですか?」
急に話を振られて、驚く玲香。
玲香「わ・・わたしは、B型だけど・・」
郷田「おれ、玲香さまのB型がいいなあ!」
玲香「私、関係ないでしょ!後藤くんの
B型輸血して、後は郷田くんの体内で
培養したらいのよ」
後藤「郷田!そもそも戦う前に、何負けた
時の話してんだ。郷田、破れたり!」
郷田「なにお!こいっ!O型の血に掛けて!」
郷田、後藤、向かい合い、構える。
後藤・郷田「じゃーーーんけーーん」
(ドアの音)「がらがらがら」
小嶋、大浴場にはいってくる。
小嶋「なんだ、君たちいい大人が喧嘩か?」
後藤「小嶋、口出しすんな!」
郷田「これは、プライドの闘いなんだ!」
小嶋「プライド?なに、くだらない。
それじゃあ気分あがらないでしょう。
勝った方に、僕が100万円プレゼント
するよ、ぐっと楽しくなったでしょ?」
後藤と郷田の動きが止まる。
後藤「まてよ、100万あったら、家賃
払って、エアコン代払って、新しい
パソコン買って・・」
郷田「パスポートとって、引っ越しして、
ダブルベッド買って、ダイアモンドの
指輪買って、玲香さまにプロポーズ
出来る!」
小嶋、二人を軽蔑したように見る。
小嶋「金があっても使う事しか考えない
から、君たちはいつまでたっても貧乏
なんだよ、ほら、勝負の続きやりなよ」
小嶋、浴衣の袖から100万円の
束をだす。
後藤「郷田君、どうする?」
郷田「後藤君、どうしよう?」
小嶋「いくらでも考えたらいいさ、あはは
はは」
小嶋、高笑いする。番台の玲香、
いつの間にか派手に着替えている。
玲香(蓮華)「さすが、億万長者の小嶋君、
面白いゲーム考えるわね。じゃあ、私も
出しましょう。勝った方に、一億円、
どう?さらに楽しさ増したでしょう」
後藤、郷田、黙る。
郷田「後藤君、世界で一番お手軽な暇潰し
のじゃん拳に一億円ですよ。この人
たち頭おかしいですよね」
後藤「郷田君、ぼく、お風呂で暖まって、
風呂あがりにコーヒー牛乳飲みたいです」
後藤、郷田、浴衣を脱ぎ始める。
後藤「あの、僕たち、とりあえず、お風呂
入ってきまーす」
郷田「肩までつかりまーす」
玲香(蓮華)番台から演説風に。
玲香(蓮華)「みなさん、風呂上がり
ラウンジに集合してね。素敵なゲームを
思いついたわ」
郷田・後藤「はーーい、玲香さまー」
小嶋、札束をしまう。
小嶋「これは、楽しい余興、ゲームの
内容僕にだけ教えていただけませんか」
小嶋、玲香(蓮華)に近づく。
玲香(蓮華)「いいですわよ、小嶋くん。
奥にいきましょう・・・ね」
玲香(蓮華)、小嶋の手をとる。
番台の奥に二人消える。
残された、後藤、郷田、呆然。
郷田「なんだよ、小嶋の奴、きっと二人で
いい事するんだぜ」
後藤「いいさ、ほっとけよ、俺たちは、
俺たちのミッションを遂行するだけなのだ」
後藤、風呂に入る。
○同・大浴場・着替え室
風呂あがり。郷田、浴衣を着てビンの
フルーツ牛乳を飲む。
郷田「軽井沢で、ビンのフルーツ牛乳、
飲めるとは思わなかった」
後藤「それな、軽井沢に対する逆差別だろ」
郷田「何それ?時々、後藤、理解不能な事
言うよな」
後藤「うるせい、素直に面白くないって
言えよ。俺、コーヒー牛乳いただき」
自動販売機に二百円いれる。
後藤「コーヒー牛乳二百円て、玲香、
すっごいぼったくりな。今日の会費も
確認しないと、幾ら請求されるか怖いよな」
後藤、美味そうにコーヒー牛乳を飲む。
○同・廊下
郷田スーツでかくかく廊下を歩く。
後藤「郷田さん、スーツお似合いですよ。
小嶋くんから名刺貰わないと」
郷田「それそれ、真剣に名刺交換したい、
後藤もフリーのプログラマーだろ仕事
欲しいよな」
後藤「ああ、仕事欲しい。のどから手が
出るほど」
郷田「でも、その格好じゃあ無理だな」
後藤、黒のタキシードに蝶ネクタイ。
後藤「イカしてるだろ、燕尾服」
郷田「まるで、チャップリンだな」
郷田、ラウンジのドアを開く
後藤「なにを言う、カト先生だ」
○同・ラウンジ
ラウンジのドアを開けると真っ赤な
絨毯とソファー、ピンクのライト、
ミラーボールが回る。
後藤「あっ、郷田はボーイやる為にその
格好か」
郷田「玲香さまのための衣装だぞ。これで
もポールスミスだ。高かったんだかんな」
後藤「郷田、玲香に対する情熱、異常だな」
郷田「一番嬉しい褒め言葉」
後藤「褒めてないって」
ラウンジの奥に階段があり、
胸と足の露出が多い赤いドレスを
着た玲香(蓮華)と、隣に白い
スーツを着た筋肉質の
上村貴士(28)が降りてくる。
玲香(蓮華)と上村。腕を組む。
後藤「あ、あれは陸上部の上村だ。結局
みんな玲香目当てなのか」
小嶋悔しそうに拳を握る。
小嶋「上村は、外資系証券会社のエリート
らしいが、僕からしたら潰すのは簡単だ」
後藤「潰す?」
小嶋「彼女は僕のものだ。それをあいつは!」
小嶋、上村を睨みながら唇を噛む。
玲香(蓮華)、上村の分厚い胸に体を
預ける。玲香(蓮華)ちらりと、
小嶋の方を見る。
小嶋「上村の野郎・・ふざけやがって」
郷田羨望の表情で玲香(蓮華)を見る。
郷田「玲香さま、赤いドレスお美しい、
ますます綺麗になられて、はあ、溜め息」
後藤「今日は婚約発表会ですか?」
郷田「玲香さま!おめでとうです!」
後藤「郷田はそれでいのか?俺は、お前が
何処を目指しているのかさっぱり分からん」
ソファーに座る後藤。隣に上村の腕に
掴まる玲香(蓮華)が座る。
後藤、玲香(蓮華)、上村の順番に座る。
上村「玲香、シャネルN5の香水、素敵だよ」
玲香(蓮華)「まあよくご存知、上村君流石」
玲香後藤を見る。上村怒り顔。
玲香(蓮華)「後藤くん、元気?その服
似合ってるよ。カト先生でしょ」
後藤「さすがだな、玲香その通り」
玲香(蓮華)「踊ってたもんね、高三の
運動会でダンス。佐伯豊君と」
後藤「よく覚えてるな」
玲香(蓮華)「忘れないわ、たぶん一生」
小嶋が、つかつかと歩いてきて、
玲香(蓮華)と、後藤の間に強引に
座る。後藤、押し出される。
小嶋、玲香(蓮華)の肩を強く寄せる。
玲香(蓮華)「いやん、小嶋君、強引ね」
上村「小嶋、てめえ」
反対側の上村立ち上がり、小嶋の
胸ぐらを掴み、そのまま空中に
持ち上げる。苦しむ小嶋。
玲香(蓮華)「上村君、離してあげて」
上村「玲香、こいつには行儀と言う物を
教えないと」
尚も、上村、小嶋を持ち上げる。
小嶋「うう・・く・・苦しい・・」
玲香(蓮華)「上村君、もう止めてあげて」
上村、止めない。
玲香(蓮華)「だめ、小嶋君、死んじゃう!」
上村、はっと我にかえり手を離す。
ばたんと、小嶋、床に落ちて動かない。
玲香(蓮華)、手を叩きメイドを呼ぶ。
玲香(蓮華)「小嶋君・・大丈夫?」
小嶋気絶したまま、答えない。
玲香(蓮華)「この男を処理して」
メイド(玲香)「かしこまりました」
メイド(玲香)小嶋を怪力で抱え奥へ。
玲香(蓮華)立ち上がる。
玲香(蓮華)「さあ、気を取り直してみんな
でトランプでもしましょうか」
後藤「トランプって正気かよ。小嶋、救急
搬送ものだぜ・・」
○同・ラウンジ・テーブル
玲香(蓮華)、カードを配る。
玲香(蓮華)「じゃあババ抜きでいい?私、
ババ抜きしか知らないから、ただし・・
一人一万円賭けましょう」
玲香(蓮華)、上村によりかかり
ジャケットの裏から財布を抜き取る。
中から一万円札3枚出す。自分と
郷田と後藤に上村の一万円分ける。
上村「玲香、その金は俺の・・・」
玲香(蓮華)、上村の首にキスする。
玲香「上村くん、この子たち貧乏なの。
私のために貸してあげて」
上村「玲香が、そう言うなら」
玲香(蓮華)「一ゲーム一人一万円出して、
最初にあがった人に、全員から一万円を
プレゼントするのよ、うふふ」
ババ抜き開始。一ゲーム目。
後藤の最後の一枚を上村が取る。
後藤カードがなくなり、一番で後藤
上がる。皆からお金受けとる。
後藤「あ・・あがった」
玲香(蓮華)、後藤に抱きつく。
玲香(蓮華)「後藤くん、素敵!おめでとう!」
上村、後藤を睨む。
後藤、汗をかき生唾を飲む。
玲香(蓮華)「上村くん、次のお金頂戴」
上村「もういいだろ・・玲香」
玲香(蓮華)「いやあ、上村君らしくなぁい」
玲香(蓮華)、上村の首に抱きつく。
上村、財布から一万札3枚だして配る
上村、頬がひきつり、目が血走る。
ババ抜き再開。
郷田「わあ!上がった!うれしい!」
郷田、両手を上げて無邪気に喜ぶ。
上村、郷田ではなく後藤を睨み、
目を血走らせながら一万円札を出す。
上村「後藤め・・・」
玲香(蓮華)上村に笑いかける。
玲香(蓮華)「上村くん素敵だわ」
玲香、上村の頬にキスする。
無言で上村一万円を3枚出す。
後藤「ああ、またあがった」
玲香(蓮華)「素敵、後藤くん!」
玲香(蓮華)、後藤に抱きつく。
その途端、上村、立ち上がり、
後藤に掴みかかり、頬をなぐる。
後藤、吹っ飛ぶ。口から血。
玲香(蓮華)「きゃあーーー!」
後藤、ゆっくり立ち上がり血を拭う。
後藤「上村のパンチ、久々だな、昔は
よくパンチくれたよな」
後藤、上村を睨む。
上村「なんだよ、後藤、マジになりやがって、
ゲームだろ、その目やめろよ、盛り
下がるだろ」
後藤「だよな、ゲームだよな。お前たちに
とっては、佐伯豊の事もな」
後藤、ソファーに座り直す。
玲香(蓮華)大袈裟に驚く。
玲香(蓮華)「後藤くん、どう言う事?
上村くんと何かあったの?(大袈裟に)」
後藤「いや・・ごめん、なんでもない、続き
をしよう」
上村むっとしたまま、座る。
メイド(玲香)が、飲み物を持って
くる。一つずつ配る。
玲香(蓮華)「コーヒー牛乳よ、上村くん
好きでしょ」
上村、コーヒー牛乳を口に運ぶ。
顔色が変わる。吹き出す。
上村「何だこれ?」
玲香(蓮華)「それね、泥水、美味しいでしょ」
突然メイドがマシンガンを出して、
郷田を撃つ。郷田床に伏せる。
メイド(玲香)「動くな!変な真似したら
全員、蜂の巣だぞ」
後藤、両手を頭の後ろに回す。
郷田の足から血が流れている。
後藤「郷田っ!」
玲香(蓮華)「皆様そのままで。残念だけど
郷田君は招かれざる客よ。さよならね」
メイド(玲香)の指は引き金に。
郷田のズボン血が滲む。後藤固まる。
上村、震えて動けない。
玲香(蓮華)メイド(玲香)に指示。
玲香(蓮華)「郷田にトドメを」
上村「こりゃ、愉快だ!ついでに後藤も
殺してしまえ」
メイド(玲香)上村に銃口を向ける。
玲香(蓮華)「上村様なんて、ゲスいお言葉。
最初に死ぬのはあなたに変更しましょう」
玲香(蓮華)上村を、ロープで縛る。
上村「玲香、本当に玲香か?お前は誰なんだ?」
玲香(蓮華)「さあ、私は誰でしょう。昔、
誰かをこんな風に縛らなかったですか?」
上村「知らん、そんな事してない」
玲香(蓮華)「やった方はすぐ忘れても、
やられた方は忘れられないのものです。
今から、上村様の逞しい肉体を傷付け
なければいけないと思うと残念ですわ」
上村「なんの話だ?」
玲香(蓮華)「昔、あなたが自殺に追い込ん
だ子いたでしょう?お忘れ?今日はね。
その仕返しパーティーなんですよ、ね
玲香」
玲香(蓮華)、メイド(玲香)を見る。
メイド(玲香)帽子をとる。長い
栗色の髪が落ちる。メイド(玲香)と
玲香(蓮華)瓜二つの顔。メイド
(玲香)と玲香(蓮華)、背中あわせに
並んで立つ。双子みたい同じ背格好。
後藤「さっき迄俺たちがトランプしていた
のは、同級生の炭田玲香じゃないのか?」
玲香(蓮華)「私は炭田蓮華、玲香の妹よ」
メイド(玲香)「玲香は私。私達三つ子なの」
後藤「三つ子?3人兄妹?」
玲香(蓮華)「死んだ佐伯豊はもう一人の兄妹
大切な私たちの兄さんよ」
玲香(蓮華)「兄さんの復讐パーティーに
ようこそ。あなたたち、ここから生きて
帰れるなんて思わないでね」
玲香(蓮華)上村の首にロープを
巻いて締めあげる。
上村「くるしい、首が締まる・・」
上村苦しむ。
玲香(蓮華)「情けないわね、兄さんはもっ
と苦しんだのよ」
後藤メイド(玲香)を見上げる。
後藤「玲香・・・これは?」
メイド(玲香)「後藤、残念だけどあなたも
復讐のリストに入っている。ごめんなさい」
玲香(蓮華)、後藤のお尻を蹴り上げる。
後藤「うわあぁ」
玲香(蓮華)「心配しなくても、後藤様には
スペシャルな余興をご用意してますわ!」
後藤、恐怖で両目を見開いて、
苦しむ上村の様子を見ている。
全身から汗が流れる。震えている。
○神社(回想)
セミの声、学生服の後藤と佐伯豊、
ロープで縛られて、ダンスを踊る。
学生服の上村、パチンコで後藤を打つ。
後藤「痛いっ!」
上村「後藤、もっと楽しそうに踊れ」
小嶋、佐伯を打つ。佐伯は打たれて
も声をあげない。
小嶋「佐伯笑えよ。つまんない奴だな」
小嶋、上村、佐伯を集中して打つ。
○佐伯の家(回想)
佐伯豊のお葬式で御焼香する後藤。
泣き崩れる長い髪の少女。後藤、
頭を下げる。
後藤「お悔やみ申し上げます」
目を見開いたまま、泣けない後藤。
○同・ラウンジ・ステージ
目を見開いた後藤。天井を見る。
後藤「そうだ・・俺は佐伯の葬式の日
から、泣くことが出来なくなったのだ」
縛られたまま、上村、舞台に
上げられる。スポットライトが
が点灯すると縛られた小嶋も倒れて
いる。軽快な音楽が流れ始める。
玲香(蓮華)「あなたがたのダンスみたいわ」
玲香((れいか)蓮華)パチンコを構える。
小嶋、上村踊り出す。
玲香(蓮華)「さあ、どちらにしようかしら」
玲香(蓮華)パチンコを打つ。上村
に当たる。
上村「いたいっ」
玲香(蓮華)「さあ、もっと笑顔で踊って!」
次に、玲香(蓮華)小嶋を狙う。
パチンコを打つ、小嶋の股間に当たる。
小嶋「ぎゃああああ」
玲香(蓮華)「大袈裟ね、兄さんはもっと
近くから当てられたのよ」
玲香(蓮華)がパチンコを打つ様子を、
後藤は、目を見開いて見ている。
玲香(蓮華)「そろそろ、お遊びはおしまい」
玲香(蓮華)太腿の奥からピストル
(コルトパイソン 六発装弾)
を取り出す。舞台に向ける。
玲香(蓮華)「ばきゅーーん(口で)」
弾が発射され舞台の照明が砕け散る。
上村「ひいっ」
玲香(蓮華)「こっちかなー?ばきゅーん(口)」
弾は、小嶋のすぐ横を通りウイスキー
のビンが砕け散る。小嶋、失禁する。
小嶋「あわわわわわ」
玲香(蓮華)「さあ、次がファイナル!」
玲香(蓮華)ピストルを構える。
玲香(蓮華)「どちらにしようかな〜」
小嶋も、上村も腰が抜けている。
小嶋「あわわ、殺される・・」
上村「死にたくない・・・」
玲香(蓮華)ニコニコ無邪気に笑う。
ピストルを器用に指で回す。
玲香(蓮華)「どっちから爆発させちゃおう
かなー」
後藤叫ぶ。
後藤「やめろおおおおおーーーー!」
ダンスの音楽が止む。
玲香(蓮華)後藤を、見て舌舐めずり。
玲香(蓮華)「気が変わった。後藤から先に
爆発させちゃおう。こいつが一番の悪だ」
玲香(蓮華)ピストルを太ももの
フォルスタにしまい、代わりに大きな
ナイフを出す。後藤の首筋に当てる。
後藤「何をするんだ!」
玲香(蓮華)「後藤う〜この世一番重い罪は
何だか知ってるかあ〜」
玲香(蓮華)後藤の口にナイフを
入れる。
後藤「んんんん」
玲香(蓮華)「この世で一番重い罪は、
無関心なんだぜえ〜」
後藤、目を閉じる。
玲香(蓮華)「さよなら、後藤さま〜」
後藤「シャネルN5に惑わされていたが、
この匂いは・・・思い出したよ」
メイド(玲香)後藤の方に走る。
メイド(玲香)「もうやめてえええ!」
メイド(玲香)マシンガの持ち手で
玲香(蓮華)を殴る。玲香(蓮華)
倒れる。
メイド(玲香)「後藤!逃げて!」
メイド(玲香)、玲香(蓮華)(れんか)に
マシンガンをむける。次に、
メイド(玲香)が天井に発砲する。
玲香「復讐なんてもうたくさん!」
(マシンガンの音)「ばばばばばばばばば」
メイド(玲香)ドアをマシンガンで
吹き飛ばす。玲香(蓮華)がメイド(玲香)
にナイフで襲いかかる。
玲香(蓮華)「裏切ったか!玲香!」
玲香と蓮華取っ組み合い。
メイド(玲香)「後藤、今のうち、早く行って」
逃げようとする後藤、
郷田、情けない声で後藤を呼ぶ。
郷田「後藤くーーーーん、助けてよーー」
後藤、立ち上がり、郷田の所に行く。
郷田、足からかなりの出血。
後藤「郷田、歩けるか?」
郷田「後藤モテてるね!今頃、モテ期到来、
羨ましい〜」
後藤「ばか、黙ってろ」
郷田の肩を抱いた後藤ラウンジを出る。
○同・螺旋階段
後藤、郷田を助けながら螺旋階段を
降りる。床に血痕が点々とある。
郷田「くれぐれも、俺を見捨てるなよ」
後藤「その恩知らずな言動で、助ける気
失せた」
郷田「ここで俺を死なせたら祟ってやる」
後藤「お前、既に背後霊みたいなもんじゃん」
郷田、後藤ゆっくり階段を降りる。
○同、玄関
ドアを押す後藤、鍵が掛かかっている。
後藤「このドア開いても、庭はワニが
だらけだろ?」
郷田「あ、ここのワニ、栄養足りてそうだ
から大丈夫。大人しいミシシッピーワニ
だよ、遠足の時、動物園で見ただろ」
後藤「爬虫類オタク、知るかそんなの」
郷田、ポケットを探り、財布に
ついた熊のキーホルダーを見つける。
郷田「ああーのど乾いた〜、フルーツ牛乳
買ってきて」
後藤「うるせい、後で買ってやるから」
郷田「おしゃれな、軽井沢に売ってるかな?」
後藤「俺んちの近所の極楽湯にあるから」
玲香(蓮華)「後藤おおおおおおお」
後ろか玲香(蓮華)の声がする。
郷田「ほら、彼女が呼んでるよ」
後藤「静かにしてくれ、頼むから」
後藤、冷や汗。
○同・廊下
右手にピストル、左手に血のついた
ナイフを持った、
玲香(蓮華)が追いかけてくる。
玲香(蓮華)「後藤〜殺してやるうううう」
鬼の形相。
○同・玄関
後藤、熊のキーホルダーの針金で
ちまちま鍵穴を探る。
郷田「なに、その汚い熊のキーホルダ、
だっせえ」
後藤「だから黙ってろって」
郷田「なにそれ?思い出の品?」
後藤「うるせえ、しつこいなあ」
郷田「あ、女だろ、1組のみゆきか?」
後藤「誰だよ、みゆきって、なかなか
開かないな」
郷田「玲香から貰ったやつだろ」
後藤「そうだよ、悪いか」
郷田「やっぱり」
後藤、急に真剣に郷田を見る。
郷田「後藤さ、開かないのは鍵じゃなくて
お前のハートじゃないか」
後藤「なんだよ急に」
郷田「お前、そろそろ本気だしたら?」
後藤「ああ、いますっごい本気だよ、
心配すんな」
郷田「ちゃかすなよ。争いを恐れて自分の
命も捨てる気か?佐伯みたいに」
後藤、鍵を、回す手を止める。
後藤、郷田の胸ぐらを掴む。
後藤「おいこら!佐伯の悪口いうな!」
郷田「後藤!」
郷田の手を離す。
後藤「ごめん、郷田」
郷田「おまえ、ズレすぎ、怒る相手が違う」
郷田笑う。
後藤「郷田、10分くれ」
郷田、右手をパーにして、左手の
人差し指を立てて、合わせて見せる。
後藤「6分で片付けてこい、か?」
郷田「あいつのピストルは弾が六発しか
はいらん。多分の弾はあと四発で終わりだ」
後藤立ち上がる。
後藤「郷田、ありがとよ」
後藤、立ち上がって階段を上がる。
○同・螺旋階段
鬼の形相で螺旋階段を降りる
玲香(蓮華)。
下から螺旋階段を駆け上がる後藤。
玲香(蓮華)「諦めたか?後藤(激しい口調)」
後藤「お嬢さん、メイクが台無しですよ。
この辺で終わりにしましょう」
後藤、玲香(蓮華)に突進する。
身をひる返して、背後に回る。
玲香(蓮華)「無駄よ!後藤!」
玲香(蓮華)体を回転させて、背後の
後藤にナイフを投げる。ナイフは
後藤の頬をかすめて綺麗に柱に刺さる。
後藤「左手でナイフを投げた。佐伯と同じ
左利き」
玲香(蓮華)ピストルを左手に持ち
変えて、後藤を撃つ。
(ピストルの音)「ぱあん」
廊下の照明が砕け落ちる。
後藤、柱に刺さったナイフを掴む。
柱から引っこ抜く。
玲香(蓮華)「後藤を信じてたのに」
後藤「すまなかったと思っている」
後藤、ナイフを持って、まるで的に
なる様に玲香(蓮華)に向かっていく。
玲香(蓮華)「くるな、後藤!」
玲香(蓮華)ピストルを撃つ。
ピストルの弾、後藤の頬をかすめて
後ろにあるステンドグラスを割る。
ゆっくり玲香(蓮華)に近づく
後藤、自分の眉間を指さす。
後藤「そんなんじゃ当たらない。ここを
狙って、しっかり」
後藤、ちらっと玄関まえの郷田を見る。
郷田、後藤にVサインしている。
後藤「わかってるよ・・あと二発だな」
玲香(蓮華)「後藤ぉぉぉぉ!」
後藤、向かってくる玲香(蓮華)を
抱きしめる。後藤の目から涙が流れる。
後藤「蓮華、お前は佐伯だな。生きてたん
だな。生きててくれてありがとう、佐伯」
玲香(蓮華)、引き金に指をかける。
後ろから血塗れのメイド(玲香)
がやってくる。
玲香「後藤君が死んじゃう!」
玲香(蓮華)がピストルを撃とうと
するのと同時に、
メイド(玲香)がマシンガンを撃つ。
(マシンガンの音)「ばばばばばばばば」
後藤、床に倒れる。
暗転(2秒)
後藤「俺死んだか?」
床に、血塗れの玲香と玲香(蓮華)
が倒れている。(残りあと一発)
玲香(蓮華)後藤に向けていた
ピストルを自分の頭に向ける。
後藤、ゆっくり玲香(蓮華)に近づく。
玲香(蓮華)「後藤・・あの時、なんで助け
てくれなかったんだ、俺悲しかったよ・・」
後藤「佐伯ごめん」
後藤、玲香(蓮華)のピストルを
もぎ取る。もう玲香(蓮華)には
抵抗する力もない。血だらけの
メイド姿の(玲香)も倒れている。
玲香(蓮華)「後藤、そのまま僕を殺れ!」
目を閉じる玲香(蓮華)
メイド姿の玲香、目を薄く開ける。
玲香「後藤君、もう私たち、助からない、
私たちをほっといて、ここから逃げて」
メイド(玲香)の体から血が流れる。
後藤「ピストル持つと周りの景色が違って
見えるというが・・俺の目の前に、
絶世の美女姉妹が見えるぜ。モテ期かな」
後藤、ピストルを器用に指で回す。
後藤「ちょっと、こいつ借りるな」
メイド(玲香)「後藤くん、生きてね。好きだ
ったよ」
後藤、廊下をラウンジに向かって歩く。
○同・ラウンジ
ラウンジでロープに縛られた上村、
小嶋、動けない。後藤、部屋に入る。
小嶋「ご、後藤、助けろ」
後藤、無言。
上村「親友だろ?なんで黙ってるんだよ」
さっき割れた電灯が漏電している。
小さな火がつく。
後藤「その節は、世話になったな」
後藤、ピストルを出し、弾を確認。
後藤「やはり、残り一発だ」
弾倉から残った弾、一発を出し、
上村、小嶋に見せる。
後藤「ゲームでもしようか?運試しだ。
知ってる?ロシアンルーレット」
上村「あわわわ・・知らない・・」
後藤「六発撃てる弾倉に一発だけ弾を入れる」
後藤、筒状の弾倉に弾を一個
入れ、くるくる回してから元に
戻して、上村の頭に銃口を当てる。
後藤「ひとりずつ順番に、頭に銃口を
あてて引き金を引くゲームだ。大当たり
の確率は6分の1、一番ついてる奴の
頭がふっとぶ、って寸法だ」
上村、震えている。
上村「やめろ・・やめてくれ」
後藤「ゲームスタート!」
引き金をを引く。カチリと音がする。
後藤「一発目。上村ハズレ」
今度は小嶋の頭に銃口をあてる。
小嶋「や、やめろ、金ならいくらでもやる」
後藤「お金くれるの?昔はたかるばっかり
だったよねえ、ばあああっん(口で)」
小嶋「ひいいっ!」
小嶋失禁。
後藤「二発目、小嶋残念!」
後藤、自分の頭に当てる。小嶋と
上村凝視する。かりちと音がする。
不発。上村舌うちする。
上村「ちっ」
後藤「三発目、あー残念〜次、上村な」
天井の漏電の火が大きくなる。上村の
頭にピストルをあてる。
後藤「大当たりの確率は3分の1」
上村「あわわわわ」
かちりと不発。
後藤「あと2発、確率は2分の1、次は俺
だっけ?それとも小嶋だっけ?」
上村、自分は終わったと思い笑う。
上村「あははは、おまえら、やっぱツイて
無いな!日陰ものは早く死ね!」
後藤、上村に銃口を向ける。
上村「たすけてくれ!」
天井の炎が床に落ちて、溢れた
ウイスキーに引火する。炎が広がる。
小嶋「火が!火を消せ」
後藤「佐伯ごめんな。死ぬべきは俺たちだよ」
後藤、炎の中、目を閉じる。
○同・廊下
沢山の警察官が廊下を走る。
○同・ラウンジ
炎が広がる。
ドアが開く、郷田の声がする。
郷田「後藤〜ツイてるな〜助けにきたぞ」
沢山の警察官が部屋に入ってくる。
一番前に怪我した郷田が、捜査状を
見せて不安定に立つ。
郷田「警察だ!強制捜査にご協力願おう!」
後藤、目を開けて、両手をあげる。
後藤「なんだ郷田・・・おまえ、警察かよ」
郷田「そう、これでも正義の味方よん」
小嶋、上村、手錠をかけられる。
郷田、後藤のポケットに手を入れ
弾丸を取り出す。ピストルに弾丸は
入っていなかった。
郷田「甘い、おめえ、鳴門金時より甘い、
こんなんじゃ一生出世できないぜ」
後藤「その後、炭田玲香と、炭田蓮華は?」
郷田「逃げられた。奴らは、俺が追ってる
犯罪組織レイカのメンバーだよ」
後藤「炭田蓮華は、佐伯豊だったのか?」
郷田「わからん、逮捕したら聞いてやるよ
名前だって、姿だって、性別でさえ、
幾らでも変えれる連中だ。神出鬼没、
簡単に死ぬ連中じゃない」
郷田、スマホ画面を後藤に見せる。
スマホ画面
「デッドオワアライブ、お尋ね者
佐伯豊生死に関わらず捕まえたら
賞金100万円」
郷田「たった今、ネットに上がった記事だ。
誰かが死んだ筈の佐伯豊に賞金を賭けた」
後藤「佐伯には生きていてほしい」
後藤、郷田、担架に乗せられ病院へ。
○病院
後藤、郷田隣同士のベッドで寝ている。
郷田「後藤、起きろよ、退屈だろ」
後藤「なんだ?いまから取り調べか。牢屋は
冷暖房つきにしてくれよ?お巡りさん」
郷田「俺は秘密のお巡りさんだから、正義
の味方ダイレンジャーとでも呼んでくれ」
後藤「もういい、寝る」
郷田「起きろよー、恋バナしよぜ」
後藤「うるせえ」
後藤布団をかぶる。
○後藤の部屋(夕)
後藤がドアを開けると窓から西日が
入っている。中が見えない。
玄関に女性用の靴が並べてある。
部屋の中央に聡子が座っている。
聡子「いっとくけど、泊まらなかったわよ」
後藤「なに、どこに?」
聡子「山本くんのところ」
後藤、聡子の前に正座。
後藤「あのね、聡子・・」
聡子、後藤の言葉を遮るように。
聡子「てか、この部屋暑い!よくこんな所
住んでるわね」
後藤「エアコン壊れてて」
聡子「うん?」
後藤「修理にくるのが、1ヶ月後」
聡子「1ヶ月?夏終わっちゃうじゃん」
後藤「だろ?で100畳用のエアコンが・・」
聡子「その話、オチあるの?それより返事は?」
後藤、聡子を抱き寄せる。
聡子目を閉じる。
聡子「後藤君・・」
後藤「聡子あのね・・・・」
ドアのベルがなる。勝手にドアがあく。
離れる、後藤と聡子。
電気屋A(玲香)「ちわー、電気屋です。
エアコン10畳用お持ちしましたあ」
電気屋、ずかずか入ってくる。
後藤「ん?この香り、エリザべス・アーデン?」
電気屋B(蓮華)「10分ほどお時間いた
だきまーす」
後藤「シャネルN5の香り・・」
電気屋A(玲香)「それにしても、狭い部屋
だな」
電気屋B(蓮華)「しかも西日ががんがん入る」
電気屋A(玲香)「床、汚ねえ」
聡子「あなたたち、何?人の家で」
電気屋A(玲香)「何も言ってないですよぉ」
聡子「言ってるでしょ」
電気屋B(蓮華)「あれ、おかしいなー心の
声が漏れたかな?」
聡子「漏れた時点でそれ、心の声じゃない
から」
電気屋A(玲香)「ですよね〜」
エアコン設置定位置に置く。
電気屋A(玲香)「彼女、こんな男がいいの
趣味わる〜」
電気屋B(蓮華)「でも、この男、浮気はし
なさそうだね」
電気屋A(玲香)「はい、10畳用エアコン
設置完了」
スイッチを入れるとエアコン動き始
めるすごい勢いで寒くなる。後藤、
目を細めて風にあたる。
後藤「エアコン気持ちいい〜」
電気屋B(蓮華)「代金は無料ですが、
五千円いただきます」
電気屋A(玲香)「参加費みたいなもんです」
後藤金を渡す。電気屋二人出て行く。
電気屋AB(玲香・蓮華)「あざーーーす!」
聡子、後藤、再び唇を近づける。
(ドアベル)「ピンポーーーン」
郵便配達員「後藤さーーーん、速達でーす」
後藤、キスをやめて玄関へ行く。
郵便屋配達員「これ速達です」
後藤、速達うけとる。
後藤「小学校同窓会・・・・マジか」
後藤、天を仰ぐ。
FI N
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