態度のデカい異端者。水無学最強の変態淑女
スポーツもの割と好きなんですけど、なかなかヒットする小説ないんですよね。
今回、次のサブタイ悩んだ結果から若干短めです。
私立水無神楽坂学園 スターティング5
9番 星仲真那花 1年 身長160(①~③)
10番 大王凪巴 1年 身長169(①~⑤)
11番 泉奏 2年 身長167(①~③)
12番 硲凛 1年 身長189(④~⑤)
13番 鷹子初夢 1年 身長173(②~④)
アベレージ 身長171.6
私立俊英東学園 スターティング5
4番 児玉桃香 3年 身長172(F)
5番 滝川こころ 3年 身長174(C)
6番 浜野井英子 3年 身長164(PG)
9番 豊田陽菜 2年 身長175(C)
12番 佐藤由羽里 2年 身長158(PG)
アベレージ 身長168.6
「これは当たりを引いたな」
由羽里を舐めるように観賞した凪巴が目を光らせる。
次は鑑賞する気満々であった。
「はいはい、機会があったらね」
変態は楽でいいわねと、初夢はおざなりに答える。
初夢など、初めての決勝という舞台で気を落ち着けるのがやっとだった。
後半に先輩たちが控えているものの、前半で十点も二十点も離されてはそれで決まってしまう。
(昨日は後半だったしそれどころじゃなかったから気にならなかったけど、緊張するわこれ。シュートに影響しないようまずは走って緊張をほぐ……)
「ってちょ、何揉んでんのよっ」
突然胸をほぐして来た凪巴に、試合直前を考えて先ずは警告を発する初夢。
「ふむ。強いて言えば、少々手持ち無沙汰だったからか?」
ジェスチャーで頼んで来た真那花とアイコンタクトしつつ揉みながら、凪巴は咄嗟に別の理由をでっちあげる。
「そんな理由であたしの胸を揉むな!」
我慢を解き放った初夢の裏拳が、背後の変態を撃破するべく急襲する。
凪巴は揉み手の感触を惜しみながらも離し、初夢の裏拳を危なげなくサッとかわす。
「甘い。自慢ではないが、私はこれでも香澄が係わらなかった目標は全て無傷で揉んで来た女だぞ」
「本当に自慢になんないわね!?」
テレビ撮影されてる中で揉まれた恥ずかしさと怒りで試合前から肩で息をしつつ、初夢は緊張がほぐれているのも感じていた。
試合開始。
準決勝でトリプルクラッチ──本当は違うが周りの認識ではこう──をこれでもかと見せ付けた真那花に対し、執拗にマークマンが張り付く。
(好都合だな)
それを見ながら、凪巴はいつもと変わらず動く。
香澄という規格外を除けば、真那花はクイックネスにおいて水無学最強だ。
いくらシールド──相手のお腹に前腕を押し当てて上半身を密着させ、離れずに自由な動きを抑制するディナイディフェンス──で張り付かれても、相手が一人ならどうとでも捌く。
水無学の売りでもある頭脳プレイで、シールドよりも厳しいフェイスガードを餌食にしていることがここでも一役買っていた。
体力の心配も殆ど必要ない。
そのためのタイムシェアである。
そして同じく香澄を除けば、凪巴はスピードやジャンプ力において水無学最強だ。
(児玉桃香。県内ナンバー1Fの座。ここで降って貰おうか!)
一気にギアを上げ、俊英東を蹂躙する変態淑女。
由羽里の胸にそれとなく接触を図るのも忘れない。
(こいつ、やっぱりただの変態じゃない!)
そんな恐れを、相手どころか会場中に抱かせる凪巴。
水無学のベンチサイドも、得意顔か苦笑いに反応は真っ二つである。
高校生県内ナンバー1F対去年の中学生県内ベスト5、そのポジションは──PGF。
水無学に入ってARという立ち位置になり目立ちがぼやけたが、元々攻守において抜きん出たものがあった。
何せPGの役割を担おうと思った理由が、ディフェンスでも強者と揉み合いたいからである。
周囲評価でのPGFにありがちな、ボール回しも上手いオフェンス面だけのPGFではない。
攻撃は最大の防御という言葉がある。
だが、バスケでは防御が最大の攻撃になり得る。
所謂四点プレイ。
ターンオーバーで相手の攻撃の機会を潰しつつ得点を挙げれば、相手の二点を消してこちらの二点を追加出来る。
相手チームの攻撃回数を減らすことと、チームの攻撃回数を増やす、もしくは減らさないこと。
勝利の四原則の二つを、一度に満たすスーパープレイ。
更に──。
「真那花ッ」
「おう♪」
何度も機会を見て、挑戦して、やっとの思いで桃香から白星を挙げた凪巴のターンオーバーに応えるため、マークを振り切って走りそのパスを受ける真那花。
ファストブレイク。
相手のセーフティ役がゴール下でブロックに跳ぶが、相手が一人なら、真那花の方が有利。
クイックドロウショット。
それは単なる一つの技術ではない。
それ故に可能な高決定率。
勝利の四原則の一つ、シュート成功率を上げることに特化した防げないシュート。
時にターンオーバーから、時にディフェンスリバウンドから勝利の四原則の三つを満たす攻撃を繰り出す水無学。
そして、真那花に相手の意識が集中すれば、自然と周りが活きる。
クイックドロウショットはシュート成功率を上げることに特化しているから、真那花にシュートチャンスが渡る回数は少なくても悪くない。
9番 豊田陽菜 →14番 小森愛 1年 身長166(PG)
12番 佐藤由羽里→15番 椎名沙織 1年 身長169(SF)
アベレージ 身長169.0
第二ピリオドに入り、俊英東は二名を交代する。
(懐かしい顔だな)
その内の一人、椎名沙織を見て、凪巴は好戦的に口元を歪ませる。
(私と同じ去年の中学県ベスト5。前回はこちらのチームが敗れたが、今回はそうはいかせない。真に恐ろしい小さな彼女もいないようだからな)
沙織の実力は高いが、それでも同い年以下なら県ベスト5という程度に止まる。
凪巴が同じ中学県ベスト5で、強敵と認識していた者は二人。
一人は過日に翠にグーパンされた県立悠院咲高校の一年生。
そしてもう一人、沙織と同じ中学にいたアシスト王はこの大会で見かけていない。
(あれ程の腕なら、背は低くとも県外の強豪校から推薦を受けていたとしてもおかしくはない)
水無学は相手の目まぐるしい攻防の変化に苦戦するも、凪巴のたまのターンオーバーもあって若干有利に展開する。
外面はひねているものの内面は意外と素直な初夢が、チームの好調に乗ってスリーを三本決めたことも大きかった。
四十八対四十三という五点リードで、先輩たちへ繋ぐ。
私立水無神楽坂学園 後半スターティング5
4番 斎乃宮麗胡 3年 身長165(①~③)
5番 彩瀬四季 3年 身長169(①~⑤)
6番 轟静 3年 身長177(④~⑤)
7番 空雅恵理衣 2年 身長159(②~④)
8番 百乃千尋 2年 身長172(③~⑤)
アベレージ 身長168.4
14番 小森愛 →7番 進藤葵 3年 身長170(SF)
15番 椎名沙織→8番 中川杏 3年 身長162(PG)
アベレージ 身長168.4
後半は、三年生同士の熾烈な競り合いで始まった。
六点差までなら、バスケでは一気に逆転可能な範囲である。
どうしても点差を縮めたい俊英東のベストメンバーと、後輩たちに負けられないと十点差以上を目指す水無学のベストメンバー。
そんな思惑が交錯し、五点差付近で試合が膠着する。
4番 児玉桃香 →11番 今野美樹 2年 身長167(SG)
5番 滝川こころ→9番 豊田陽菜 2年 身長175(C)
6番 浜野井英子→10番 八木智佳 2年 身長170(PG)
アベレージ 身長168.8
第四ピリオドに入り、膠着状態に痺れを切らした俊英東は、体力の減った三年生たちを下げ、スリーの得意な智佳と美樹を投入する。
しかし、それは結果として悪手となった。
水無学がスリー合戦に応じていれば、恐らく二校の点差は縮まっただろう。
だが、そうは麗胡が卸さなかった。
当然、彩華や香澄に撫子も、その指示を覆す本部命令は発しない。
相手のスリーを警戒してインが緩くなり、そこへつけ込まれるのも承知の上で自分たちはいつも通りに点を重ねていく。
スリー狙いを色濃くした布陣が、スリーを殆ど決められない流れでインサイドを攻撃する俊英東。
それに対して、いつも通りの流れでインにアウトにと回して攻撃する水無学。
チームオフェンスのテンポの良し悪しは、徐々に徐々に水無学有利の流れを作る。
残り三分。
俊英東は再度三年生たちに託すも、勝敗の天秤は傾かなかった。
「……」
八十三対七十二。
最後は静が安定のレイアップを決め、水無学が初めての県大会優勝と全国への切符を手にした。
淑女とはいったい・・・(哲学)
区切りよさそうな所で(恐らく)毎日投稿していく予定です。誤字脱字やルビ振りミスのチェックで度々更新されるかもですが、一度投稿されたシナリオの変更はない予定・・・