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恋情【桜色の恋】

作者: 緑憐
掲載日:2020/04/23

 幼いころの設定をそのまま利用しています。

 細かい設定を只今思い出し中。

 家ごもり中にノートを数冊発見(立派な黒歴史です)。

 見れば赤面・・・。すぐ隠しました。

 

「桜が綺麗だね。」

「うん。」

 着物を着た私と、スーツを着る翼君。

 私たちの影は、今もならんでいる。


 責任という大きくて、大変で、少しづつ自由を奪っていくものが私たちの背中に乗ってから長年といえる年月がもう流れた。

 物心ついたころから責任を負うことが決まっていて、少しづつ、少しづつ責任がのっていったのだから、自分達の年齢と近い年月もうおっているかもしれない。

 

 幼いころ見た夢、幼いころやりたかったこと。すべてをかなえられなかった。毎日がむしゃらに責任に向き合って・・・・・。気が付いたら、大人になっていたのだから。

 責任に向き合う仲間は私たち二人だけだったけれど。数年前、私たちの活動が世界的に認められてから共に向き合う仲間は増えた。


 重くて、重くて仕方がなかった責任は仲間と分かち合うことによって、徐々に小さく形を変えた。

 休みなど、忙しくて取る暇などなかった私達は、お休みを頂くことも多くなって。




 こうして今、桜を見に来ている。



「翼君。」

「何?」


「髪に桜の花びらがついてるよ。」

「本当?」


「取ってあげる。」


 彼の頭に手を伸ばして気づいた。私は、いつの間にやら背を抜かされていたらしい。

 私よりも小さい時があったのに・・・。今はもうつま先立ちをしなくてはならない。


「とれたよ。あっ!」

 ちょんとはじいたと思った私は、バランスを崩してしまったらしい。

 気づけば彼の腕の中で。ぎゅっと抱きしめられていた。

 

 そんな一瞬の出来事で、もう終わったことなのに・・・。

 私の心は、ドクン、ドクンと音を立てる。


「ねえ鞠花。今日は話したいことがあって桜を見に来たんだ。」


「話したい、こと?」

「うん。」

抱きしめられたままだからだろう。翼君の吐息が耳をくすぐる。なんだかくすぐったくて・・・。なのに、彼がここにいるんだってちょっと安心してしまう私がいる。


「話してもいい?」

「いいよ。」


「一回だけ、一回だけしか言わないから、よく聞いて・・・。」


 私と翼君の目が合ったそのとき、言葉は紡がれた。



「鞠花、貴女が好きです。愛しています。」


 紡がれたその一言は私の心を淡い、それこそ桜のような色で染めた。

 嬉しさと、ときめきのあまりその言葉がうまく理解できなくて顔が赤く染まるばかり。


 彼の瞳は真剣で、彼の頬は私だって見たことがないほどに紅色だった。



 責任を負う私にはこの感情なんていらないから。翼君はきっと、私と同じ気持ちを想ってくれていないから。

 心の奥底で隠していた彼への恋情、翼君を好きだって想う気持ちが今、あふれそうになるよ。






 どのくらいの時間がたったんだろう。

 ずっと二人で、見つめあっていた。

 

 見つめあう時間は私にとって、私たちにとってはたった一瞬だった。

 けれど、その一瞬がたまらなく大切で、愛しかった。



「返事を聞いてもいい?」

 いつもの様子で言う彼の顔は、もうあどけない少年の顔ではない。

 私に恋した一人の男の人の顔だった。

 

 初めてだった。

 こんな風に彼を一人の男の人だと意識したのは。



 私には、長年募らせていた恋情を彼に伝える勇気はない。

 けれど。

 私は、想いを伝えてくれた彼がどうしようもなく愛しく思えて・・。今すぐに伝えたいと、そう思ってしまうんだ。


 桜さん。風に舞う桜の花びらさん。

 どうか、私の伝えたいという思いを勇気に変えてくださいませんか。

 私は今、彼に想いを伝えます。

 返事という、想いを。




「私も、貴方が好きです。ずっと前から愛していました。」





 ある夫婦が暮らす屋敷の一室には一枚の絵が飾られている。

 桜舞う春の風の中で二人の男女が抱き合っている美しい絵だ。

 抱き合う男女の長年の恋が叶った時の様子を描いたものだという。


 その絵につけられた名は恋情。

 これは、ある恋人たちの物語。


 

 


 

 

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