夏休み図書室
暑い真夏、私の逃げ場所はただひとつ。涼しい図書室だった。
顔中にかいた汗を吹きながらふと視線をあげれば君がいた。文字をたどる目、本をめくる指先、本を見つめるその横顔。すべてが美しかった。もっと君の事を知りたくなった。
涼しげなその顔で見つめるその先には「サスペンス小説だ」と知ったとき私は完全に恋に落ちていた。憂鬱だった夏休みに出会った君。図書室に行けば君がいる。それだけで十分だった。あなたが誰でどんな人か知らないけれど、そんな事よりも、君自身をもみて心を打たれた。
毎日心が踊った。行けば君がいる。でも、図書室が閉まるとき、ちょっぴり寂しい。けれど明日も君と会える、そんな夏休みは好きだ。
でも、夏休みが終わったら次はいつ君に会えるのだろうか。夏休みが終わるにつれ、不安になった。君が誰なのか知らない私。普段はどんな人なのだろう。でも、私には好きな場所で好きな人ができたこと。それだけで十分だった。また、来年の夏も会えるのだろうか。