表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜の帰り道  作者: soyo
3/5

疑えば目に

猫の幽霊、噂の正体は?

最近、学校で猫の幽霊が出るって、皆噂してる。

そこかしこの教室で、黒猫の目撃談がある。近づくとパッと廊下に逃げて追いかけると姿は見えなくなる。鰹節やら、猫缶を廊下に供えてやると、次の日にはなくなっているらしい。他にも、3つの尻尾を付けてるとか、鏡の中へ消えていくだとか。面白がって尾ひれをつけて、今や学校で知らない人はいない程大きな噂になっている。

馬鹿みたいな話だけど、もっと奇妙なのは噂の発端。話の元を辿ってみると、どうやら猫の幽霊だって言い出したのは桜子らしい。桜子は幽霊なんて信じないし、ましてや、こんな下らない噂を吹聴するなんて絶対考えられない。


放課後の校舎。噂の規模からして、桜子1人が発信源って訳じゃなさそう。それなら、少なくとも目撃談には実体験が混ざってる筈。黒猫に見紛える仕掛け、若しくは現象。あてはないけど、1階から総当りに、学校中探し回ってみる事に....ん?

廊下の先に黒い影、見つけた! 走って寄ると逃げて行く。階段をすごい速さで駆け上る。私が2階についた時にはもう姿はない。息を切らしながら、丁度そこを通りがかった生徒の女の子に尋ねる。

「今、ここ、幽霊、通ったよね?」

「幽霊?」

その子は不思議そうな顔をするだけだった。まさか本当に....? いやいやそんな訳....ないよね?


桜子との帰り道。

事のあらましを話すと、桜子は、あははと楽しそうに笑った。

「笑ってないで教えてよ! 私が見たのは何だったの?」

「見た通りよ」

「幽霊だって言うの?」

「猫よ。貴女が見たのは猫、ただそれだけ。幽霊を見た人なんて誰一人いないわ」


桜子の語る真相はこう。

校舎に迷いこんだ野良猫を保護した人が居たらしい。でも、学校で野良猫を世話するなんて、誰かに見つかったら追い出されてしまう。そこで、相談にのった桜子は、学校に猫の幽霊が出るという噂を流した。

もし猫が見つかっても、幽霊か、そんなの信じない人には見間違えか悪戯だと思われる。猫の幽霊の正体が、まさか本当に猫だとは誰も思わない。桜子は、校舎の中を気ままに歩く猫を、噂の中に隠した。


「疑えば目に鬼を見るって言うけどさあ。鬼を見ても疑ってるだけってのは早計だったかな」

「貴女は幽霊に怯えてたでしょ?」

ニヤニヤ顔で、揶揄う桜子。

「ち、違うよ!」

桜子が関わってなかったら、絶対信じなかったのに、と言っても負けな気がするから、もう何も言わない。そんな事も見透かした様に

「分かったわ。そういう事にしときましょ」

と、桜子はまた悪戯に笑うから、ため息が出た。

「それじゃ、また明日」

「また明日」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ