奇跡
ハデスは 一睡も できなかった......本当に 嬉しいのに それと同時に 悲しみが 襲ってくる
愛するマナが 幸せなら それで充分だと 思っていたのに......生まれてくる 我が子の 顔さえも見れず 終わりがくる事が 辛くない はずがない...
マナの 無邪気な笑顔を 見るたび 心が苦しくて
苦しくて......
「ねぇ!ハデス......どうかした?なんかあったの?......私に 何か隠してる?」
「......」
「ねぇ...ハデス......私は どんな事が あっても あなたを信じて ついて行きます......あなたと 暮らす未来を 決して 諦めたくない!平凡でいい あなたと子供と ささやかに 暮らせるなら 他に何もいらない......私を お嫁さんにしてください......」
「......マナ......僕だって......マナを誰よりも 愛してる!マナと子供と 一緒に暮らす事が
できたら 僕は 何も望まない......それだけで幸せだよ......だけど......」
急に黙り込む......
「......ハデス......私ねぇ 今は 欲ができちゃったの...生きたいって欲が......子供を生んで 育てたい......最後の最後まで 諦めたくない
...死ぬのは 怖くはないよ......でも 愛する人たちを 残して死ぬのは 怖くてたまらない......
それでも それでも あなたの お嫁さんになりたいし 子供も生みたい!母親になりたい!あなたの妻になりたい!あきら...」
ハデスは マナを 強く強く 抱きしめた...痛いほど 気持ちが 分かるから......
「......マナ......ごめんね...ごめん...ね」
マナの手が ハデスの背中に 絡み合う
この 重い重い状況の中 光と共に タナトスが現れた......そして 大きくため息をつく
「フゥ〜!全くあなたたちは だいたいハデス!あなたが消滅する事は ありません!あの時 マナ様は 死の淵にいましたが 死ぬわけではなかったのです!」
ハデスは 驚きが隠せない
「えっ!?じゃあれは?何だったんだ!?」
「ハデス あなたは マナ様が 眠りから覚めない
恐怖で 悪魔に付け入る 隙を与えました。まやかしです。悪魔と契約を交わして しまった......
あなたの弟 ゼウス様からの 伝言です。天界を追放!神の力を剥奪!人間として 生きろ!との事です!あなたの 隠れ兜も二又の槍も 没収します。これからは マナ様と子供と共に 生きるがいい!ただし 人間なので 死は訪れます。肝に銘じて ください......やれやれ...フゥ〜 では」
タナトスは 立ち去って......二人は......顔を見合わせて 吹き出す
二人の 笑い声が 響き渡る......




