地獄ちゃんねる1
「4号機だったらなあ」
「なんて?」
「4号機だったらなあ!」
アニソンの爆音。出玉の洪水。紫煙がただよう。
ここは人生の墓場、パチンコ店。
親父の財布からぬいてきた、五千円札を手に通路をあるく。
おれのとなりをチンピラがあるく。
「万枚もでたんだぜ!」
ここに通うようになって、話しかけられるようになった。名前はしらない。おれは「4号機おじさん」と呼んでいる。見た目でいえば、ほぼ同い年。4号機なんて打っているはずがない。どんだけ昔の機種だとおもってんだ。薬物でもやっているのだろう。血色わるいし。
「獣王」だの「吉宗」だの「アラジン」だの「北斗」だの、口をひらけば四号機談義がはじまる。
家には「南国育ち」の実機がおいてあるらしい。スロ好きにはたまらない、らしい。
だがな。おれはスロットが好きなんじゃない。稼ぐために打つだけだ。チンピラ。おまえとは背負っているものがちがう。
チンピラが舌打ちした。出玉で溢れた玉箱をシェイクする、ジャージのじじい。つとめて無表情にシェイクしている。クソうぜえ。おれでも舌打ちしたいくらいだ。
スロットの島をうろつく。どの台もグラフがしゃばい。設定6とはいわない。せめて4、できれば5。
「クソが」
どこにもない。地雷だ。まず負ける。だったら帰るか?
いや、帰れねえ。この台なら、もしかしたら。腰をすえる。
天井はまだか。金が呑まれる。クソが。クソが。クソが。クソが。なけなしの金なんだよ。親父に顔向けできねえだろーが。クソが。クソが。クソが。目押しを外す。ちくしょう。なんなんだよ。
「クソ……」
背中をつつかれる。肩をたたかれる。
ふりむくと、梅宮がいた。
5スロです