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筋トレしてーぜ  作者: あまたちゃん
4/6

招待状3

「放送機材は?」

「たしかまえに処分したはず」

「それでは、面接をはじめます」

 おれと梅宮の会話を部長がさえぎる。

「ほら、梅ちゃんもこっちね」

 机をはさんで、三人の面接官が座っている。中央に部長。右手に梅宮。左手に青木先輩。

「はい不採用。今後のご活躍をお祈りもうしあげます」

 青木先輩は、ぼりぼりスナックをたべていう。ふんぞりかえって、おれの目もみない。マジゆるせん。

「そんなカッコしてると、下着みえますよ」

「殺すぞ」

「すんません」

「で、わが社の志望動機は?」

「筋トレしたくて、そしたら、梅宮さんが紹介してくれました」

「なるほど、縁故採用ね。そういう不正、ゆるせません。不採用」

「なぜ筋トレをしようとおもったのですか?」

「筋トレはひとをポジティブにするときいたからです。ぼくはすこしネガティブなので、どうにかしたいとおもいました。妹から鍛えるようにいわれたのも、理由のひとつです。また、充実した筋トレ用具にも魅力を感じました」

「妹がいるんだね」

「ネガティブなひとは不要です。不採用」

 こいつ不採用にしたいだけだろ。

「梅宮専務の話によると、化学の実験中にまで筋トレへの意欲を示してらしたようですが」

「はい。……わすれたいことがあって」

 ほう、と部長が身をのりだした。

「わすれたいことって?ほら、おしえなさい。運命共同体なんだから」

 こちら側にやってきて、肩に手をまわしてくる。金髪から日なたの香りがする。

「おねーさんにおしえなさい。ね?」と顔をちかづけて、おれの瞳をのぞきこむ。

「その、ですね。親父がリストラにあいまして。いまは、なにも、かんがえたくないので。ちょうどいい機会だな、と。これなら、筋トレに打ちこめるんじゃないか、と」

 部長から目をそらして、きれぎれにいう。なんとか笑おうとする。口の端がひきつって仕方ない。

 薄暗い放送室が沈黙で冷えていく。スナックをほおばる音だけが鳴る。

「重すぎでしょ。不採用」と、先輩が指をなめていう。

「えーっと。……今回の件は、やっぱりなしで」

 おれはだまってドアノブをひねる。廊下は夕焼けで濡れていた。

;;

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