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筋トレしてーぜ  作者: あまたちゃん
3/6

招待状2

 こんこん。

 こんこん。こんこん。

 第二放送室のドアは静まりかえっている。ノブをまわしても、カギが掛かっていて開かない。

 こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん、こん。

「やかましい」

 こつん、と後ろからこづかれる。

 ふりむくと、金髪の女が見下ろしていた。でけえ。

「あ、あの、おれ」

「きいてるよ。ほら、どいて」

 ドアのまえにたつと、こん、ここん、こん、こん、とリズミカルにノックする。

「あたしだよ」

 もういちど、こん、ここん、こん、こん、とノックする

 しばらくすると、がちゃり、と音がした。

 金髪の女につづいて入る。

 さびれた部屋に、うずたかく積まれた筋トレ用具。プッシュアップバー。ダンベル。腹筋ローラー。エキスパンダー。邪魔だといわんばかりに、部屋の片隅によせられている。

 そしてなにより。

「バタフライマシン……」

 あんなものをみせられたら、大胸筋を鍛えたくなってしまう。はやくあそこに座りてえ。胸板に負荷をかけてえ。あのバーを開いたり、閉じたりしてえ。

「このひとが?」

「きみ、松木くんだよね?おーい。……なんかトリップしてるけど」

 がちゃり、とドアの閉まる音。いっきに部屋が薄暗くなる。

「筋トレ部にようこそ、松木くん。……松木くん!おい、松木!」

「いてっ!あ、ああ。すんません」

「あたし、部長の新堂礼ね。よろしく。きみの名前はきいてるから、いわなくていいよ」と金髪がいう。

「『君の名は。』、みた?」と黒縁眼鏡の女が、金髪にいう。おれを見もしない。

「しょーもなかったね、あれ。ま、いつもどおり、お寒い恋愛コメディだったよ。つーかほら、自己紹介して。……この子、青木つかさ。人見知りだけど、仲良くしてね」

 青木先輩は無言で部長の足を蹴る。

「こんなかんじで、照れ隠しするから。あと、脱ぐとすごいよ」

 はじめて青木先輩と目が合う。殺意に満ちた目。おれなにもしてねーじゃん。

「ふたりしかいないんですか?」

「梅宮と、あとふたりいる。五人だね」

 部長のよこで、先輩が舌打ちする。かんぜんにチンピラだ。

「依存されないようにね。こういうタイプは、たぶんデレると監禁して一日中……」

 殺意が噴きだす。しかもおれに向く。それをたのしむ部長は畜生。まちがいない。

 こん、ここん、こん、こん。

「おつかれさまです」

「お、梅宮。この子でいいんだよね?」

「きてくれたんだ」と、梅宮がいった。

「ここは、どういう……?」

「筋トレ部にようこそっていったでしょ?部長の話はきくように。きみは筋トレ部のホープとして、ここに召喚されたってわけ。部の存続は、きみにかかってるからね」と、部長がいった。

「はい?」

「まずは部屋の入り方から。このリズムね」

 こん、ここん、こん、こん、と机をたたく。

「どういうこと?」と梅宮に訊く。

「どういうことって、どういうこと?」

「いや、部の存続だの、筋トレ部だの」

「ごめんね、松木くん。とにかく、話は入ってもらってからってことで」

 なにその既成事実つくっとけ、みたいな姿勢。

「そんなわけで、よろしく、松木くん」

 そんなわけで、おれ、筋トレ部に入部しました。

しました。

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