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トーナメント一回戦 中庸剣のトッド

 エマの意識は連続しておらず、時々視界が点滅するように暗くなる。


 大会一回戦となった、やる気は全く起きてこなかった。波にさらわれたまま帰ってこない。


 そんなことよりも昨日ドミニクに教えられたことの完成度が低すぎて、何でうまくいかなかったんだろうということをずっと考えていたら、朝になっていた。そのまま寝ないでドミニクに会いたかったが、予定があった。


そう、それが一回戦。


「正直、眠い」


 リングアナウンサーがうるさげに相手の事をしゃべっているが、何も頭に入ってこなかった。剣士風の男で何だか特徴らしい特徴が無かった。


 一応本線にストレートインしているから、それなりに実力を認められて入ってきているはずなのだが、エマは何も感じ取ることが出来なかった。なんというか、普通にそこそこの熟練度なのだけれども、とてつもなく普通な感じだ。強さのバロメーターにも凹凸がないバランスよく特徴が無い。



「やばい、マジで寝そう」


 エマの事がコールされているが、それも何一つ頭の中に入ってこない。ダークホースだのなんだの。うるせぇあたしが優勝するんだよみたいなことだけが反射的に出てくるだけで他には何も起こらず意識は時折白ばんでいく。



「はじめぇい!!!!!」



「うぇ、試合はじまったのか」


 ぼんやりしていたら、試合が始まってしまった。


 対戦相手の剣士風の男は一気呵成に攻め込んでくる。


 頑張ってんなーと思っていたら、剣が振り下ろされた。何も考えてなかったが、受けられた。


 エマはひたすら眠くてやる気が出なかったので、立ったまま寝はじめた。


「貴様、我を愚弄する気か」


「いや……そんなつもりは……無いんだけど」


 攻撃を受けても、目が覚めなかった。言ってから完全に意識が落ちた。完全に寝ていた。部屋にいるのも闘技場で殺意に溢れたこの男を相手にするのも大して変わらない。


 意識は完全に白ばんだ、槍を抜いたまま、切りかかられながら眠った。



「は」


 

 エマは完全に落ちていた。何分経ったのか分からない。


 剣士風の男は、肩で息をしていた。目の前に突き付けられていた剣は垂れ下がっており持ち上げ続けることも難しいぐらい消耗している。


「なんということでしょう! エマ・バレー選手およそ眠っているとしか思えない立ち姿でオーディナリーブレイドのトッド選手の剣を受けきった!」


「はぁ、はぁ、はぁ、舐めやがって……」


「ほんとに寝てたのか、アタシは……」


 生ぬるい攻撃を受けて、「眠い」と形容することはあるが本当に眠りを誘う攻撃があったことに驚いた。


「くそ、受けてみろ我が家に伝わる、必殺中庸剣!」


 トッドの周りに闘気を纏う。


 なんとなくエマは思った。


 およそバランスが良いとか極端に振りすぎないことが奥義なんだろうけど普通にトッドが強ければそれは強いのだろうけど、眠ったまま避けられる攻撃の最大出力と言われも困るなとふんわり思った。


「つぇぇぇぇぇぇぇい」


 と、突っ込んできたところにエマは前蹴りを合わせた。


 トッドは「く」の字になるとその場に蹲って、吐いた。勢いもあったためか思ったよりも強く入ってしまったらしい。


「あ、ごめん」


 というと、そのままトッドは気を失って、自らが吐いた吐しゃ物の中に倒れた。


「だ、ダウンーーーーーーー!! 一回戦勝者はエマ・バレーだああ! 圧倒的に舐めた前代未聞の試合中の睡眠というトラブルを超えても勝利! 予選リーグから上がって来たとは言え優勝候補かもしれないぞ!」


「いや、あたしが優勝すんだよ」


 エマは誰に聞かれるでも呟くと観客たちが沸き立つ競技場を後にした。

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