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ドミニクに教わる、近接未来予知!

「んで、まあ、第一回の先生がおれな訳だけど呼ばれた訳がまだ分かっていないんだよね」


 アルミン第二訓練所。


 板張りの床、物は何も置いておらず、人もいない。壁には木製の武器が架けられている。訓練所とされているが、一般的には道場のような場所であった。ヒューゴと最初に手を合わせたのもここである。


「お前さ、格闘戦の訓練をしている時にたまに未来が見えているみたいに、攻撃してきたり防御してきたりしないか?」


「そんなことしてるわけ無いじゃん。っていうか、いつも格闘戦はエマにボコられているだけだろ。何言ってんだ。未来が見えてるならおれが勝つに決まってんじゃん」


 いきなりエマはイラっとしたが、ここでいらついて反論していても何も変わらないことを学習していた。


 ため息をこらえつつ、深く息を吸い込んでドミニクを見る。


「話を格闘から狙撃に変えるけど、控えめに言ってもお前は百発百中じゃんか。撃ってから当たるまで数秒かかることだってある。そりゃあ、何でだ」


 ドミニクの狙撃は百発百中も良いところだ、弓矢がギリギリ届くか届かない距離の1キロメル以上の狙撃だろうが針に糸を通す精度で成功させる。動いていようがお構いなしだ。


「そりゃあ、決まってんだろ目で見て筋肉の動きから次の動きの予想と、風の流れを見て、相手がうみだす風の流れまで見ればどこに放ればいいのかは大体分かる」


 得意げにドミニクは言った。そこではたと気が付いたのか、エマを驚いた眼で見た。


「あ、そういうことか。お前が言ってるのは、その技術を格闘戦に使っていることは無いかってことか?」


「いや、気が付いてんなら言えよ」


 エマはドミニクに聞かれない程度の小声で言った。


「聞こえてんぞ。まあ、おれも悪かった。確かに格闘戦でもやるけどエマ相手だとまあ役に立たない」


「どういうことなんだ?」


「狙撃ってのは一方的にやるのに対して格闘戦は基本的にはお互いに仕掛け合う状況になるわけだ。そんな状況で筋肉の動きまで精密に読み取ったり、風の読みまでやっていたらおれにはお前が分身して見える」


「なる、ほど?」


「いまいちわかってない顔してんな。おれがまじで数秒後まで予想するとお前の行動は何種類にも分岐する。めんどくさいのはでかい動きが2パターンあって、小さいパターンがそれぞれ3つぐらいある。合計6つにまでお前は分裂する」


「あー」


 大体理解した。


 格闘戦において、行動と戦術は一瞬で切り替えている。ドミニクの言う通り数秒先まで予想をするとなれば、たしかに行動は何個にも分かれていく。逆に言えばドミニクの予測がそこまで正確過ぎるが故に格闘戦では使えないということなのだろう。


「はは、狙撃と同じ感じで未来をちょっと予想すれば簡単に勝てるっしょって思ってやった日は過去最高にボコられましたね……。あ、ちなみヒューゴは大体予想通りの動きをするけど、質が高すぎてそもそも勝てなかったす……」


 エマとヒューゴは技量の上で同程度だが、エマはどこから来るか分からない攻撃をしてくる一方で、ヒューゴに関してはどこからどこに来るのか大体分かるが速さ、強さ、精度が受け止めきれないレベルまで練り上げられている。


「でも、お前それ自体はもともと狙撃では出来たんだろ? 格闘戦で見るのは割と最近だけど何かあったのか?」


 ドミニクの接近時の強さは合流当初はほぼ対人戦闘を経験したこともないのもあって、基礎は出来ているが強くはないという感じだった。それでも平凡な物差しで見ればかなり強い部類には入る。

 未来を読まれるような動きをし始めたのはつい最近の事だった。


「いや、なんつーか。このパーティにいてそこそこごちゃついた対人戦闘やったり、お前らと訓練してるうちに少しづつ強くなったんだ。んでまあ、多少なりともやり合えるぐらいのスキルを手に入れたわけだ」


 ドミニクの接近戦の向上は確かに目覚ましいものがあった。


 自分たちのパーティに入って狙撃手、狩人としての仕事以上に近距離戦闘を強いられる機会は多かったし、それを見越して、ヒューゴやエマでドミニクの訓練を行っていったのは事実だ。


 もとより才能があったのだろう。要所を抑えながら、エマの動きを模倣しつつ自分の個性を伸ばしていった。


「技術が追い付いてきたら、きっちり見た時にエマの動きの分身は減っていったんだ。5個あるのが3個ぐらい。結局、おれはおれでそうやってくるんだろうなって分かりながら、仕掛けていきつづけるんだけど、まあ外れるんだわ。たまーに、ほんとたまーに、エマの動きが一つだけになってその予想を出来ることがあるってレベルだ。ざっくり100回に一回ぐらい」


「それだよ、それ。100回に一回。そう、確かにそれぐらいの割合だよな。あれ滅茶苦茶ムカつくんだよな。ドミニクのくせに小賢しいやつ」


「小賢しくて悪かったな。出来たところで、強くはならないし切り札にはならないけど、良いのかこんなので?」                                       

「構わない。今は少しでも間を埋められる技術が欲しい」


「分かった。やり方は簡単で、相手との気流を読んで、相手の筋肉の動きを読む」


 ドミニクが少し離れて向き合う。


「右手を右方向に出すと考えてから右に出してくれ」


「うん? 分かった」


 右に出すと思ってから、右手を出したら。ドミニクがほとんど同じタイミングで同じ動作をした。


「今と同じことをやってみてくれ、おれも一度思ってから行動をするからそれに合わせて同じ行動を取ってくれ」


「分かった」


 ドミニクが左手を、左方向にだした。エマは何も分からなかった。


「出来ないね……」


 エマは呟いた。


「え、これって難しいの? 基本だと思ってたけど……」


「全く分からんかった……」


「マジか……」


「マジだわ……」


 お互いに暗い気持ちになった。


 それから、夜まで同じ訓練をずっとやり続けてようやく10回に一回程度の頻度で出来るようになった。


「間に合うのか……これ?」


 終わったあと息も絶え絶えにドミニクが言った。


「間に合わせるんだ。ちなみにこれ、何段階あるうちの何個めだ?」


「十段階あるうちの一個目………………」


「あう…………」


 エマは聞いて後悔した。

 どんな技術でも大体30分程度練習すればものにできたが、これに限ってはそうではなかった。


 ドミニクも気が付いていなかったが、ドミニクの技術の奥義の一端なのだろう。真似できないから真似しようと思っていた技術にまじめに向き合おうとすればまあ難しいということを思い知らされる。


「まあ、地道にやっていこうや」


「そうだな」


 エマの強気はなりを潜め、ドミニクは憐憫の目でこちらを見守っていたのだった。


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