トーナメント予選Aブロック
「第十三回、究極闘技王座決定戦!
このアルミンから4年に一度、最強の荒くれ者を決める戦いだ! ファイトは一ヶ月に渡って行われる過酷極まるトーナメント。
過酷すぎる大会の勝者には、最強の称号と国中からかき集めた100万ガルド。
名誉も金も一挙取り!
これまで人生上手くいかなかっただめな奴も強ければ富も名誉も手に入る夢に溢れた大会だ!
さあ、本日は大会初日。トーナメント参加者は厳正な審査によって既に選ばれた25人が決まっている!! この場所に集められたのは残りの5名の枠をかけた予選会集められた有象無象500人超!
ルールは単純明快! 五等分した100人以上ごとに分けて最後の1人になるまで戦い合う超過酷なバトルロワイヤル。これの勝者が夢の舞台へのチケットを手にすることができるのです!」
朗々と司会進行役が語りかける。厳めしい顔をした、燕尾服に身を包んだ壮年の男だ。
沸騰する超満員のコロシアム。
アルミンの外れも外れ、ギルドからははるかに離れた場所にある巨大コロシアム。すり鉢状のコロシアムには最大で3万人を収容することができる。
進行役の後ろにはずらりと、532人の予選参加者達が並べられていた。参加者にはそれぞれエントリーナンバーと文字がアルファベットが記されたバッチを装着している。
「さあさ早速初めて行きましょう。Aブロックと記載された方々はお残り下さい!」
◆ ◆ ◆
「すっげぇ人」
エマは漫然と辺りを見渡しながらそんなことを思った。
辺りを見渡せばコロシアム中を埋め尽くす人人人。最前列には国賓クラスの観戦者まで集まってきていて、どっから集まって来たんだよという気持ちになる。
究極闘技王座決定戦とは、さっき司会の人間が言っていた通り国の中の最強の人間を決める闘技大会だ。歴代の優勝者の中には、マリア・バレーやヨシュアもカウントされている。
エマにとって特に興味のある大会では無かった。
多分自分が一番強いだろうからわざわざ証明してやる必要もないし、前回大会の優勝者はトウタ・バレーだ。しかも2大会連続優勝の記録を持っている。
この大会にトウタが優勝した直後にエマが倒したのでなおのこと興味も無くなっていた。
くだらないと思っていたが、今回に関しては自分の生存をかけての戦いとなるので話は別だ。
Aブロックの人間が残れと告げられた。
エマは改めて自分のネームプレートを見る。Aー532番。最初のブロックだ。ぞろぞろとAブロック以外の参加者以外が散っていき、残されたAブロックの参加者がそぞろに散り始めた。
段々と数が減っていき、そこそこ混み合っていたコロシアムの中央はまばらになってきた。百人ぐらいここに残されているがそれぞれが暴れても余裕があるだろうと思った。
トウタはこの予選には参加せずにシード枠でトーナメントにエントリーしている。エマのいるAブロック予選から勝ち上がると決勝で当たる。
エマは直前も直前の飛び込み参戦であった為、普通に書類審査を通せばアルミンでの実績を含めて、シードであってもおかしくはなかったがこうして予選に参加することになった。
「おい、お前」
「なんだテメェ」
おもむろに後ろから声をかけられて、振り返るとチンピラ風の金髪の男がいた。アルミンのギルドで何度か見たことがある男だった。
確かギルドの中ではそこそこ強いらしいが、興味がなさすぎて名前も覚えられない男だった。
「俺と組まねぇか? 百人なんて相手してたらどっかで怪我しちまう。他の連中も協力をしながら、なんとかしようとしている。最後の二人になったら俺たちでやり合えば良い」
「下らねぇし、やらねぇ」
「ああん? なんだと」
チンピラは露骨に不快感を表したがエマにとってはどうでも良いことだった。
「100人倒せばいいだけだろうなんでそんなシンプルなことが出来ないんだ」
チンピラはなんだかよく分からない捨て台詞をはくと、他の話し合っているグループの所へと行った。真っ先にエマを指してあいつを倒そうなどという算段を立てているのだろうと思った。
「無駄なことを」
エマはひとりごつ呟いた。
長旅から帰って来たところ、即座に大会にエントリー。すぐに自宅に帰って寝て起きて今である。
この予選における大変さとか、もろもろすべてどうでもよくなっていた。さっさと終わらせて帰って寝たいというのが、切実な願いだった。
『それでは、Aブロックの皆さまだけ残ったようですので改めて大会ルールを説明いたします』
かったるすぎて何も耳に入ってこなかった。
簡単に覚えていることは三つ。なんでもあり。協力あり。時間制限は日が沈むまで。とのことだった。
『闘技開始!』
高らかに宣言された。
さっき話していたチンピラと他五名が真っ先にエマめがけて襲い掛かってくる。
が、エマは鞘も抜かずに六人が出てきた瞬間めがけて槍を振り回したら、振り回すごとに倒れて行った。
「お前、覚えていろよ!」
「正直、アンタの名前も憶えてないんだわ」
「お前!!!!」
チンピラの頭をぶん殴って、気絶させた。三下のかわいそうな末路だと思った。死んではいないけど。
エマは六人を倒してからコロシアムの端っこでぼんやり、他の連中の戦いを見ていた。
控えめに言ってもこの中では、あのチンピラが一番強かったんだなということを漠然と思った。この場にエマがいなければ彼がこの予選を勝っていたのだろうということを思った。
このまま放っておくと本当に夜まで時間がかかりそうだなと思ったので、さっさと終わらせようと考えた。
「ドラグーンドライブ」
簡易詠唱でのドラグーンドライブで走り出す。
誰も彼も反応することが出来ず、エマに一方的にやられていく。誰かと戦っているものを両方倒し、反応したが防御も何もできないものを引き倒し、縦横無尽にコロシアムを駆け回り倒し続けた。
10分後すべての参加者を倒して、残っているのはエマだけだった。
「もう帰って良いか?」
『なんということでしょう! 一昼夜かかるはずの予選が、なんと十分で終わってしまいました!
勝利者はエントリーナンバー532番エマ・バレーだ!』
沸騰するコロシアム。
観客に応えるでもなく、エマは槍を鞘にしまったままコロシアムを後にしたのだった。




