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止まらない仕事

 葬式はつつがなく行われた。


 およそ町中の人が来たのでは無いかというぐらいに沢山集まった参列者達。バレー家を筆頭としたドラゴンハントに特化した騎士団の町、この町に生きていてバレー家の恩恵を間接的にも受けない人間はいないことであろう。その先代当主が死んだとなれば、葬式に参列しないわけにはいかないだろう。しかし、参列するのは老若男女、老人から子供までやってきている。義理を果たすということなら、家や商店の権力者のみ出席すればいいものの大人も子供もやってきている。それだけ、エマのじいちゃんことマルケスは町に愛された当主であったのだろう。


 宗弥達は事前に仕立てておいた喪服に身に纏い、参列をしていた。エマは前席の親族席に座っている。


 これといったイベントは当主の挨拶がある程度のものだった。


 当主の名前はトウタ・バレー。


 黒髪に碧眼、気の弱そうな顔をしているが、背は高く引き締まった体をしているということが服の上からでもうかがえる。まぎれもないエマの父親だ。


 なんとも記憶に残らない挨拶をして、あっさりと葬式は終わったのだった。




 葬式の後埋葬が終わり、親族とその関係者による懇親会という名のパーティーが開かれた。


 皆喪服に身を包んでいるが、和やかな雰囲気で行われていた誰も彼も踊りこそしなかったが、酒を飲み談笑している。


 日本の葬式後にある飲みの席みたいなものだろうと宗弥は雑に理解した。


 エマは方々に呼ばれ挨拶周りに忙しく、リーズはこの町に赴任していたことがありその当時の知り合いに呼び止められている。その近くにヒューゴが控えるような構図になる。なんやかんやノーライフキングの一件もあって、ヒューゴと婚約しておりその話題が出てはキャッキャしているように見受けられる。とても葬式の雰囲気ではない。


 宗弥とドミニクは暇そうに飯をふんだんに皿に盛りつけてはそれを黙々と食っていた。


「はぁ」

「どうしたんだ、ため息なんかついて。あんたはいつもの事だけど」


 と、ドミニク。


「なんというか、うまいことバレー家にすり寄ってお仕事とか貰えないかなーとか、ぼんやり思っていたけど、エマは人気者だけど家とはこじれまくってるし、頑張って来たはいいけど仕事にならなくって悲しいっていうかさ。でもご飯はおいしいんで無限に食えてしまうというこの感じ」

「働きすぎじゃん?」


「そうかな?」

「おれなんかでも狩りがうまくいかない日もある。そんな日は飯にもありつけないけど、今日はごちそうがたくさんある。気楽に飲んで食って。明日には観光してゆっくり帰りましょうよ」


 ドミニクに慰められてしまった。

 一理どころか百理ぐらいある。なんとなく思い当たる節があり、ゆっくりする時間というのが必要なのだろうという気にはなる。


 ノーライフキングの一件以来、宗弥は明確に敵というものの存在を理解した。


 ファブニールの件もそうだし、ラサでの件にしてもこの敵が一枚存在として噛んでいるということを感じている。


 ファブニールと、ラサの件はなんとか先手を取れたがノーライフキングの件に関しては宗弥は一切介入できないという結果になってしまった。


 なので宗弥は生産性の高く拘束時間の短いクエストを回して、紹介者としての運営を安定させて冒険者に対しては余暇を出して訓練なり休暇などに使うように促した。一方で宗弥は、ギルドの外に出て情報収集を行っていたがこれといった成果は出てこなかった。


 今回の件に関しても、クエストをこなすよりかバレー家と接点を持って敵の正体を明らかにしていきたいと思っていたが完全に空振りだった。


 確かにドミニクに言われるように、調査もいれると休みなんかあってないようなもので必死に働いていたのだということに気が付いたのだった。


(社畜でもないのに働きすぎてしまっている……だと……?)


 山盛りにしたローストビーフをむさぼりながら最近の労働に思いを馳せてしまった。働きすぎである。


 ワインを一気に飲み干すと割とすべてのことがどうでもよくなった。


「ドミニク、ありがとう。なんか元気出たわ」


「最近ずっと青い顔してるから、割とみんな心配しているのに気が付いた方がいいかも」


 などとドミニクは言って立ち上がると料理を取りに行った。


 行く途中で、ラサの皇太子ですよね? みたいな聞かれ方して一斉に人だかりが出来てしまった。


 宗弥は、久しぶりに何もする必要がないという幸せを手に入れて一人で飯を食って酒を飲んでいた。

 会も終わりに近づいてきたころ、エマがやって来た。


「めちゃくちゃ酔っぱらってんじゃん。大丈夫かよ」


「大丈夫、心配するな。今日も凛々しくございますね。お嬢さま」


 などと言っていたら、一瞬で腕を極められて背後に回り込まれた。


「それ以上はいけない」


「明日実家に来てくれないか?」


「良いけど、何かあった? 挨拶出来るなら、僕の仕事の上では助かるは助かるんだけど……」


「どうも、割と重大な知らせがあるみたいなんだ。今日、じいちゃんの葬式で集めた親戚全員集まってもらうような事だからよっぽどのことだと思うんだが」


「トウタさんの次の当主でも選定するんじゃないですか? それでエマが選出されました。みたいな」


「そんな流れに成るわけねーだろ。結局の所実家にあたしの味方なんて誰一人居ないんだ。じいちゃんだけが最後の味方だったけどあっさり逝っちまった。いや、というかあたしがこの町を出る前から調子は悪かったは悪かったんだけど、帰ってくるまでもたなかったんだ」


「何があると思う?」


「当主は兄貴のエルヴィンがやることになると思う。それ以外のことは何も分からないけど、アンタだけどもこっそり来てもらえないか」


「分かった」


 なんとなくエマにはこの話がただの簡単な話に終わらないということ、大きな問題をはらんでいるのではないかという予感を分かったということだった。


 エマはアームロックの形を解いて、正面に回り込んだ。


「明日、午前九時にこの屋敷の前で待ち合わせよう。じゃーな」


 そう言ってエマは宗弥からさっさと離れていった。


「たまにはいいと思うけど、飲みすぎんなよ」


「分かってらい」


 酔いが一気にさめるような感じがした。このままぼんやりして、明日を漫然を迎えるのではなく、明日にも大きな仕事が待っている。


「結局仕事ですか」


 と、ひとりごつ呟くのだった。

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