ところで君は?
「君、誰なんだい?」
晴れてお役御免となったリャンを宗弥は呼び出した。
「誰、と言いますと?」
「すっとぼけるの、止めていただけます? あなた、リャンさんじゃないですよね?」
リャンは何をわれたのか理解出来ない様な顔をしていた。
宗弥はまっすぐにリャンの目を見続ける。本気であるということを伝える。
一時間が経過した。
途中で誤魔化すような、問いかけをしたり、移動しようとしたがすべて無視をし続けた。
「はははははははははははは、あんたすげぇな! どうして分かったんだよ」
哄笑。
リャンのものと、明らかに違う邪悪な笑み。化けの皮を剥がした。
「エマの格闘戦のセンスと、リーズの加護術式強度を同時に持ち合わせる者などそもそも人間では無い」
「というと?」
「そもそもエマの格闘戦の才能は技量だけでならあのレベルに到達している人間などこの世にそもそも十人もいない。体格に勝る人間が最終的に削り勝つということはあり得るが技量で引き分けることなどない。リーズも同様だ。あらゆるデータを調べ尽くしたが、同等以上の加護術式強度を持ち合わせるものは十人もいない。その二つを兼ね備える人間など存在しない」
宗弥はため息をつく。
「君は人間じゃない。本物のリャンになりすました別の誰かだ」
「正解」
リャンは指を差した。
「二つ目はノーライフキングの登場だ。変な所に出た。そもそも戦略的な価値も無ければ、滅ぼしたところで何のメリットも無い村になぜ数千の軍勢に匹敵するノーライフキングが現れる」
宗弥は推理をしゃべり続ける。
いよいよリャンの顔が人の気配から、強大なすさまじいものへと変わっていくのを感じた。目を爛々と輝かせ、口が裂けているかのような笑顔を浮かべている。
「君らの目的は分断だ。僕とヒューゴとリーズを引き離して個別に撃退する。だから目的は、ヒューゴとリーズを倒すために計画をした」
「へえ?」
興味深そうにリャンはうなずく。
「まず第一に、教会内部で働きかけリーズを出世するように引っ張り上げる段取りを取る。そうして、交代要員としてやってくるリャンに成り代わり君がやってきた。同時にギルド内にクエストを発生させ我々を分断させる。それで、離れたリーズとヒューゴの所にノーライフキングを派遣し刈り取るという作戦だった筈だ。君が実在する人物に化ける能力があるとすれば、君とノーライフキングが僕らに挑んだって解釈でいるよ」
「っは、たいしたもんだ。大体あってんだよな。ノーライフキングの奴は残念だったが、まああいつあほだから仕方ないんだわ」
「まあ、今回に関して言えば僕の負けなんだけどね。ドミニクを先行して派遣して早く駆けつけられたけど、せいぜい被害が多少少なくなったぐらいだ」
いよいよ宗弥の背中に冷たい脂汗が這うのが止まらなかった。
おそらく、今目の前にいるこの魔物はノーライフキング以上の格の魔物であることは間違いがない。
「でもさ、なんで一人であたしに話しかけたんだよ? 下手すっと死ぬぜ?」
「簡単さ。僕は僕の敵って奴をはっきり見たかったんだ。ファヴニールの時もそうだし、ラサ王国の王位継承もそう、そして今回の件もそうだ。全部背後に君がいるね」
「なるほどな、答えちまった時点であたしの負けってか。なら、ここでお前やっちまえば良いのか」
「君はそうしないよ、自分の作ったシナリオがきちんと履行されなければやらない。もしくは、シナリオ外のことが出来ないのではないかな?」
そう言うとリャンはまた笑った。
肉食獣が牙を剥くような笑みだった。
「そういうことにしといてやるよ。ま、どうせ近々会うだろうよ。じゃあな」
そう言うとリャンは目を閉じた。
リャンの頭の上から煙の様なものが立ち上り、やがて掻き消えて行った。
「……あなたは?」
目の前のリャンが目を覚ますと、宗弥に初めて会うような顔をした。
「はじめまして? 伊達宗弥って言います」
「ええ、はじめまして。私は、リャン・ミオと申します」




