ヒューゴさんを返してもらいます!
リーズはパチリと目を覚ました。
知らない洞窟だった。
知らない大男と、ヒューゴがいた。
「ヒューゴさん!」
「え、あ? リーズ?」
ヒューゴは面食らいながらこちらを振り返る。
「こちらの方は?」
「モーラさん。大地支えし巨人で有名な方」
「初めましてお嬢さんモーラだ」
モーラは気さくに笑いながら、手を差し出した。
リーズは即座に悟った犯人はこの大男だ。この男がヒューゴをそそのかしてて、ヒューゴの魂を連れ去ろうとしている。
パァン、とモーラの手をはじいた。
「あなた! あなたですね! ヒューゴさんに力を貸す代わりに命を奪う不届きな神は!」
「ふ、不届きな神ってめちゃくちゃだな。そもそもこいつが死にかけて、力を貸す代わりにあいつを殺すって事にしたんだよ。これは、俺とあいつの契約だ」
「そうですよ、リーズ。モーラさんが力を貸してくれたからノーライフキングが倒せたんだ。私はこの契約に不満は無い」
「わ た く し が 不満ですの! お分かりになりますか?」
リーズの迫力にヒューゴもモーラも気圧された。
「……だけど、これは決まった契約なんだ。力を貸す代わりに、神の座をかわる。そういう契約だ」
「そんな無茶苦茶な契約が通るとでも思っているんですか?」
「どっちがめちゃくちゃなんだよ……」
モーラもあきれて反論する気を失っていた。
「他の神々に問いかけたところ、その契約が間違っているというからわたくしはここにいるのです」
「そうは言っても」
パァン。
リーズはモーラの頬をひっぱたいた。顎が揺れたようでモーラの目が若干飛んでいる。
「他の神々はこの契約が間違っていると、言っておられます。その認証がこの掌には込められておりますの」
「そんな馬鹿な」
パァン。パァン。パァン。パァン。パァン。パ。パ。パ。パ。パパパパパパパパ。
すさまじい勢いで往復ビンタをする。
リーズは非力だ普通の世界では大の男にビンタしたところで、すこし驚かせるぐらいのことしか出来ない。
だが、この神々に認められたビンタであれば、大地さえ支えた巨人をボッコボコにすることが出来るのであった。
容赦もためらいもな。自分がめちゃくちゃやっているということを考えずに、モーラをただひたすらにボコった。
「分かった。分かった。分かった。契約は破棄。破棄だ。くっそ、今回はうまく出来るとおもったんだけどな。またこれか」
顔面がもはや原型をとどめないぐらいに腫れ上がったモーラが言った。
「また……?」
「おう、前にヨシュアっていう活きの良いガキがいたんで今回みたいにスカウトしたんだが、やってきたハレって女に同じような目に遭わされて失敗した」
「そうですか……」
あの小説に書いてある神とはモーラの事だったのか。
「ま、他の神様方は大体こうなる宿命を受け入れてそうなっているし、俺だってそのつもりだけど選ばなかった未来とかそういうのは何だか輝いて見えるんだよ。つまり、嫁とか、妻とか、恋人とかさ」
モーラは深いため息をつく。
「ヒューゴ、お前いい女いるじゃねーか。女泣かすのは男として一番やっちゃダメだわ」
「……そうですね」
ヒューゴはためらうように息を吸ってから、きっぱりと返事をする。
「帰りましょうヒューゴさん」
「帰れ帰れ。出口はあっちの光が差してる方だ」
モーラは払うように手を振る。
「最後に一つ。いざって時は俺の声を聞いてくれ手伝ってやるよ」
リーズは鋭くモーラを睨めつけたが、モーラは肩をすくめた。
「いや、さすがにこういうことはしないけどさ。気に入ってんのさ。ヒューゴとかお前らのこと」
「ありがとうございます。モーラ、短い間ですが、あなたと共に戦えたこと、あなたと話せた事うれしく思います」
ヒューゴは言う。
「こちらこそありがとうな、マイフレンズ」
そう言ってモーラはその場に座ったままにこやかに笑ったのだった。
リーズとヒューゴは出口へ向かって歩く、やがて光が差す出口にさしかかりまたも意識が切れた。




