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異世界転生しても社畜なので辛い  作者: あぶてにうす
1話 異世界転生しても結局働き詰めで死ぬ
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作戦決定。あんだけ怖いっていっておきながらねぇ?


「ちょっと待ってここでの責任者は私よ、指揮統括は私が」


 クラリッサが口を挟んできた。


「なら名目上はそれで良いと思います」


「名目上というのはどういうこと?」


「形だけであれば、それで構いませんよ」


「どういうことなの? 私が作戦指揮を執って」


「あくまでも、決めるのは僕でもクリスちゃんでも、なんならエマでもない。ここにいるみんなだ。結論は、勝つ算段があるのはエマの指揮下に入ることだ。それはすでに決まったことではありませんか?」


「そ、それはそうだけど、どうしてあなたの言うことを聞かなきゃいけないんですか?」


「簡単なことですよ」


 宗弥はクラリッサを指で指した。


「あなたに従ってもらうためです」


「私が、あなたに?」


 クラリッサが自分を指差して、眉を寄せる。


「そうです。この場において思い通りに動かない人間が最も邪魔になる可能性がある。このクエストは僕が受注し、エマとここにいるみんなに依頼したクエストだ。委託という形で名目上あなたを責任者とすることは出来る。だが、あなたに決断権はない」


 宗弥は畳みかける。これで終わりにする、そのつもりで言葉を叩きつける。


「なぜなら、みんながあなたの意見に反対したからです。誰もあなたに賛同していません!」


 そう言い切ると、頬と眉間を奮わせて目が赤くなっていった。泣くなら泣けば良いが、そうすればより信頼を失うことを知っているのか、クラリッサは泣かなかった。


「よし、じゃあ、みんな紙に自分の戦闘技術を書いて欲しい、どこで何年修行したとかも書いてくれると助かる。それと今の装備品もだ。書き終わったら僕かエマに集めてくれ。無かったらこちらから貸し出す」


 宗弥が書いてくれと言ったのは、ギルドで最初に書く履歴書のようなものの簡易版のようなものだった。


 一斉に冒険者たちが紙に今言ったことを書いていく。


 クラリッサがまだ呆けているようだったから、宗弥は彼女の肩を叩いた。


「紙とペンは持っていますか?」


「ええ……」


 クラリッサは弱々しく答えると、メモサイズの紙束とペンを宗弥に渡した。


「なんで僕に渡すんですか?」


「違うんですか? 足りていないとかではなくて?」


「あなたが書くに決まってるじゃないですか」


「え?」


「ここにあなたのクレリックなら使える呪文と、何年やっていたか、書いてエマに渡して欲しい、いいね? あなたがここでは一番あてになるんですから」


 クラリッサは目を見開き、握ったペンが、ミシリと軋みをあげた。


「じゃあ、よろしく」


 宗弥はその視線に殺意が混ざっているのを分かりながらそう告げて、クラリッサから離れた。


「ちょっと表出ろ」


 そう呼び止めたのはエマだった。


「なんだい」


「すこし聞きたいことがある」


 そう言われるままに、一緒に小屋の外に出て一分ほど歩いた茂みの中へと誘導された。


「どうしたんですか?」


「あんた、何で知ってた?」


 エマが聞いた。


 宗弥は木を背にしていて、エマから見上げるような形になるが逆に威圧されているような感じがした。


 中学生にカツアゲされる大人みたいだ。


「気になったから調べた。図書館には新聞がおいてあって、これはたまたまかもしれないけど、君の住んでいる地方の新聞もあった。確かに君はさっき言ったようなことをやり遂げていて、地元でも注目されていた存在のようだった」


 三年分ぐらいの記事を流し読み程度であったけども一通り読んでみたら、やはりエマは注目された存在だった。


「あたしが嘘ついて、そいつだって言い張るとかは考えなかったのかよ」


「いいや、それは全然」


「なんで」


「簡単でしょだって、君は生意気がすぎて頭を冷やしてこいと家を追い出されたようなもんだ。当時の新聞を見る限り、やっぱりクソ生意気みたいだった」


「……そうだよ」


 実績は十分、頭もいい、だから冒険者になれと言われた。新聞には新たな門出と祝福されてはいたが、実際はやっかいだったのだろうと思った。


「それにだ」


「何だよ」


「かわいくて、綺麗で、かっこいいって風に新聞には書いてあったんだ。人を惹きつけるような才能もあって、そんなやつは僕の知るかぎり君しかいなかったよ」


「そ、そうかよ」


 エマは視線を逸らして宗弥からすこし離れた。


「まー、僕としては、意見が分裂して全滅するっていうのが一番怖かったから、こうした訳だ」


「そうかよ」


 再びエマから睨まれるのだった。


「期待している」


「あんたに言われなくてもそうするつもりだ」


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