神の祝福
ヒューゴは目を覚ました。
その場で起き上がり体の異常を確認する何一つ問題は無かったが、武器はすべて砕かれてしまっていた。だが、そんなことでさえヒューゴには些末に思えているのだった。
再び起き上がると、また骸骨の兵士達が起き上がり、ノーライフキングと共に村へと向かっている。
止めないとなと思いながら起き上がると、ノーライフキングのもとへと歩き始めた。
歩いていると、骸骨の兵士達が一斉に襲い掛かってきたが、無意味と分かっていたので抵抗もしなかった。
剣や槍が体に当たると、そのすべてが砕け散った。もちろん体に傷一つ無い。
骸骨の兵士達が組み付いてくるが、意に介せずに歩き続けていると次第に纏った骸骨達が砕けていく。
『ほう? 生き返ったというのか』
「私は死んだよ。だけど、少しばかり神様が力を貸してくれるそうなので、あなたは斃すよ」
ノーライフキングが斧を振りかぶった。
今、手元に武器は無い。拳で戦うにはいささか心許ない。貰えば多少なりとも損傷する。
選ぶ手段はーータックルだ。
地を這うように、一直線に、まっすぐに。
『なにぃ』
ノーライフキングに馬なりになると顔面を拳で殴り潰そうと振り落として、腕ごと頭を砕く。
死んだところで即座に回復する体、かまわず馬乗りのままぶん殴り続ける。
殴り、壊し、殴り、壊す。
ノーライフキングが下で暴れようが、骸骨兵が襲い掛かってこようが意味が無いことだった。
馬乗りで殴り続けると言うことは案外難しい。下になった人間は必死になって暴れてバランスを崩すし、戦場であれば殴っている間に他の誰かに殴られるという可能性がある。
ただ、今の状態にあっては懸念すべき何もかもが無意味だった。
壊すごとに強くなっていくノーライフキングも周りにいる骸骨兵も関係が無い。
ノーライフキングが強くなり、それに伴って骸骨兵が減っていくが何も関係が無い。どれだけノーライフキングの力が強くなろうがヒューゴはびくともしなかった。
ただ、殴り、壊し、殴り、壊し、殴り、壊し。
何百回、何千回と繰り返す。
やめてくれ、助けてくれという懇願のような声を聞いたような気がしたが、気にしない。許さない。ただ、滅ぼすまで殺し続ける。
繰り返す。ただ、繰り返す。繰り返す。
こんなに簡単な事なのに、神の力を借りなければ成し遂げられない偉業。
太陽が高く昇ったころ、ノーライフキングの体は黒い液体となって溶け出していた。
殴って、中途半端に再生して、殴って半端に再生して、壊していくごとに液体へと近づいて行く。
やがて真っ黒な液体が地面いっぱいに広がり、ノーライフキングは二度とよみがえる事はなかった。
「終わったか」
ヒューゴはそう言うと、ため息をついてその場に横になった。
そして、穏やかなまま眠るように目を閉じたのだった。
◆ ◆ ◆
「お疲れ」
モーラは洞穴の中で座っていた。
「あれでやれたのか?」
「さあ、知らねえ。ただ、ノーライフキングのやつは数百年に一回ぐらいは復活するし、あれだけやっておけば数百年、もしくは数千年。ひょっとしたら完全に死んだのかも知れないな。さすがに俺が力貸しているしな!」
自信満々といった顔でモーラは行った。
「んじゃ、仕事の引き継ぎってやつをはじめようか」
「よろしくお願いします」
ヒューゴの魂は神の座へ行く。
肉体はすでに死んでいるのだった。




