神に呼ばれた者
リーズはヒューゴの為に祈り続けていた。
ヒューゴが戦うごとに、彼が追い求める力がより強大なものになっていく。
止めようにも止まらないだろう。彼が必要であるとするならば。
死霊の群れを打ち倒し、ノーライフキングに挑むにあたってその求めはより巨大なものになっていく。
リーズはそれに応えようと必死で加護をかけたが、より一層強まっていく。
次第に意識が遠のき始めて、倒れた。
誰かが心配そうに声をかけてかけよってくるのが分かる。
薄れゆく意識の中で彼に念話をかけようとする。
もう、限界だからあなただけでも逃げてと。
しかし、念話は通らなかった。何者かに邪魔をされた。
『今、良いところだからよ。邪魔すんなよねーちゃん』
若い男の声だった。
その声を聞いた瞬間にぱったりと意識が途絶えたのであった。
◆ ◆ ◆
ヒューゴは自らの死を自覚した。
気がつけば暗い洞窟の中で座っていた。死んだら行くとされる楽園への道なのだろうか、詳しいことは何一つ分からない。
「おっすー、お疲れー」
突然陽気な声で背中を叩かれた。
振り返ると、巨大な男が背後に立っていた。
ヒューゴも人よりかはかなり大きい方だが、彼に関しては頭2つ分程度高く、幅にしても倍ぐらいの大きさがあった。全身は筋肉の鎧のうえに鎖帷子を纏っている。顔は浅黒く傷だらけであったが陽気な笑みを浮かべている。
ヒューゴは直感的に、この男には勝てないということを理解した。
「あなたは……?」
「俺か、俺はモーラっていうんだ。一応神様らしい……ぜ?」
「モーラ様ですって?!」
ゲーン教の一節。大地支えし巨人に登場した、ゲーン教の神の一人である。
教典では異世界の侵略の際に空から降ってきた、大陸を独りで受け止め、神になった男。
即座に跪き、こうべを垂れた。
「おいおい、顔を上げてくれ。かたっくるしいのは無しだ」
顔を上げる。
「まあ、座れや。足は崩して良い」
「はぁ」
釈然としないまま、ヒューゴはその場に座り、モーラを見た。圧倒的な強さを纏っていながら、その実優しそうで多くの人に好かれていたのだろうと思った。
「いろいろ、思うことはあるだろうけど、なんやかんや俺は神になっちゃった。神になると次の継子が来るまでの間、座に封印されていて天国に行きたくても行けない訳なんだわ」
突然突拍子もない説明を始めるモーラ。
「そんでまあ、座にいながら良さげなやつを見つけて継子にして俺はお役ごめんしたかったんだけど、どう? やらない?継子」
「何故それを私に聞くのですか?」
「そりゃあ、お前、俺の生前ぐらい才能あるし? 術式展開で俺は仕方なく力を貸してやってるけど、なんかお前何もしなくても力を引っ張って来れんのよね」
「力が貸せてしまうとはどういう事なんですか」
「さあ? 俺も知らんし、そういう難しいことは何一つ分からん。ただお前には才能があった。神様を味方につけて、しまう肉体と心があったそれだけのことさ」
神はよく分からないけどお前は凄いと言っているようだった。
「そう言うわけで、お前には俺に代わる才能がある。その才能を見込んでのお願いって訳だ。ところで、お前さんはどうしてそこまで身体を張れる?」
「私に出来るから、私にしか出来ないから」
即答した。
出来るからやる。それが与えられた使命だからやる。周りの人間を悲しませたくないからやる。それだけの話だった。
それを聞くとモーラは満足そうに笑った。
「お前、やっぱり俺に似てるわ! 気に入ったわ」
「私を継子にするのは良い。それが出来るのだから。だけど、私には今仕事があって、目の前にいるあの不死者の王を斃さないと村のみんながやられてしまう……」
「おう、そうだ、言うの忘れたわ。俺がお前の前に出てきた事だけど、命を犠牲にでかいことっする代わりに、俺に魂をくれって話なんだよ。力? 貸すよ貸すよ~」
「だけど、私は死んで」
ノンノンと、モーラは人差し指を左右に振る。
「俺がこうなったのも、死んだ時か死にかけの時だ。受け止めるっていったらそうなったんだわ。今となっちゃ、後悔してるぐらいだけどな。だけど、楽しいこともある。こうしてお前みたいな才能のあるやつにたまに出会えるんだからな!」
「じゃあ、みんなを守れる?」
「そうとも、ちょっと守る規模と派手さは足りないが、相手には不足は無い。やってやろうぜ」
そう言って、ヒューゴの胸に拳を当てる。
「お前と、俺でよ」
「ああ、やってやろう」
ヒューゴは迷うこと無く答えた。
出来るのであれば迷う必要などない。
命などくれてやる。




