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異世界転生しても社畜なので辛い  作者: あぶてにうす
3話 神になるものと、神を引き摺り下ろすもの
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「リャンさんって昔の知り合いだったって本当?」


 今日も今日とて、クリスちゃんのお気に入りを勝手に宗弥が奢って藪から棒に会話を始めた。


「あなたって、いつも突然で失礼な人ね」


「世間話とか苦手で」


 宗弥は苦笑しつつ言ったが、世間話は実際苦手だしさっさと本題に入りたかった。


「どうしてそんな事を聞くのかしら?」


「正直不審な点しか無くってね」


「不審? どこが」


「テストでいかさまをしようとして出来るようなものじゃない。そもそもあの試験方法は僕が考えたものだしこの街の外に出回ってはいない」


「そうねだから、イカサマをしようにもやりようが無いわね」


 冒険者の評価というのは、曖昧で人から人への「あいつはどうやら良さそうだ」という基準がほとんどを占め、実際の実力とかけ離れていることがままあった為、宗弥自身が考えた方法として単純な技術の出力数の測定や絶対的な技量の持ち主による技量値の判定などを考案した。


 今回このテストをリャンは受けたけれども、そもそもこのテストを行なっているのは宗弥とたまに要請されてクリスちゃんに提供している程度でこのギルド内でも広まっていない。他国の人間が知るはずもない。


「おかしな話さ、エマと技だけで競って互角、リーズと同じだけの加護術式の出力を持つ人間、いればそいつは転生者本人だと思うんだよ」


「それはあなたの想定でしょ? リャンが私の知らないところで凄い努力をしてこの領域に辿りついたのかも知れないし……」


「かもしれない。でもね、エマは彼女が属しているドラゴンハント協会の中で大人も混じった武術大会をあの年で数度優勝していて、才能だけならヨシュア戦記に出てきた彼女の曾祖母さん以上とも言われているね」


 何か体力や、膂力による問題で押し切られるということは考えられるが、試しで戦った時に見受けられなかった。


「リーズは元々エリートじゃないし、田舎の教会の子供でたまたま才能があって神学校に進学して、術式強度と研究論文が評価されて主席で卒業。あの強度って本部に行けば簡単にころころ転がっているもんなんですか?」


「そんなことは無いわ……彼女は同業から見ても天才中の天才よ……」


 苦虫を噛み潰すようにクラリッサは言った。


「そうなんだよ。ここ数ヶ月で彼ら、彼女らの替えってどうやったら確保できるかみたいなことたまに考えて調べたりしてるんですけど、見つからないんだよ」 


「あんたサラッと酷いことしているのね」


「組織はいつでも代謝するもんでしょう。今はこれで機能しているけど『たまたま』ここにいるだけだ。だから、もしも何かが変わった時にどうするべきかって事は常々考えているんだけどさ。僕には代替出来ない手持ちが四つもある訳だ、そのうち二つの要素を部分的に満たせる百点越えみたいな人材そんな都合よく来ると思います?」


「そりゃあ確かにそうだけど」


「僕の想定では教会はどっちも百点出せるような人材じゃなくて、どっちも五十点ぐらいで合わせて百点みたいなそんな人材を教会は送って来たと思うんだけど、どう思うかな。それでも十分優秀だと思うんだけどね」


 クラリッサ目を向いてむに打たれたよう止まった。


「合ってる?」


「多分」


「どういう人だったか教えて貰っていい」


「良いわ。リャンは神学校時代に同期だったの。そんなに加護の術式は得意な方では無くて、四年の時に僧兵科に上がってるの。僧兵の候補生としてはとても優秀だったから、そのまま本部付きの僧兵になったわ」


「学生の時の成績の特徴は?」


「加護術式は知ってる限り中の下程度、卒業までそんなに変わらなかったはず。三年までは落ちこぼれてて、四年で僧兵科に上がってから適性があったみたいね。格闘戦はかなり強いとは聞いたけど……」


「リャンの生まれは一族で武芸を継承する寺と聞いているけど、どうして実家に戻らなかったの?」


「え、あんたそこまで調べてるの? 気持ちわる。彼女もともと家を継承する権利も無ければ兄妹の中でも、そこまで才能がある方じゃ無かったみたい。学校は頑張って成績優秀で卒業したけれども」


「なるほどね」


 リャンの一族の調べはついていて、その一族の中で最も才能があるとされていた次の後継者を一年前にエマが武術大会で倒しているという記録まで確認している。


「卒業してからって何か聞いている?」


「たまに会う事はあるし、私と違って教会本部の側付きの僧兵にまでなっているからかなり優秀な部類だと思うけど、でも久々にあってあんなに出来るなんて正直信じられなかったわ」


「だよねぇ。僕が持っている情報を統合しても、かなり優秀な僧兵以上の情報が無いんだよ。それで、おそらくリーズを引っ張るにあたって最高の手札を向こうは切ってきたはずなんだ。僕の想定以内だったとしても」


「確かに、その通りね。能力が過剰すぎる」


「でしょー? だから仮説を立ててね。ここに来る間に何かされたんじゃ無いかなって」


「何かって何よ」


「何だろうね」


 そう言って宗弥は笑って、クラリッサは呆れ果てた。


 確実にリーズを連れ戻すための処置、霊薬を服用したという線が濃厚だけれども何かが引っかかっている。


 誰が一体何のために。

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