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異世界転生しても社畜なので辛い  作者: あぶてにうす
3話 神になるものと、神を引き摺り下ろすもの
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最後の面談(コイバナ)

「教会側からやって来た補充されたリャンさんは文句なしに優秀でした。加護術式で貴方と同等、素手で殴りあってはエマと同等の技量を持っています。コミュニケーションが不可能で無ければ僕としては何ら不満の無い結果でした」


 ギルドの個別面談室。


 部屋にはリーズと、宗弥、それと相談役としてクリスちゃんの三人。


 宗弥は満足そうに今回やってきたリャンについて入れ替えをするには十分過ぎる能力を持っているということを説明していった。


 ここのところ、リーズの顔色がずっと優れないようだと思っていたが話していく毎にリーズの体温がより一層下がっていっているかのようだった。


「という訳でリーズさんはクビです。おつかれさまでした今までありがとう」


 宗弥は笑顔で言い切った。


 突然クビを宣告する時、言うべきことを言って辞めていただくには笑顔で爽やかに言い放つ他方法が無いのだなということを言いながら思った。


 もちろん彼女に能力が不足しているとかそう言うわけでは無い。これまで、自分たちのパーティを盛り立ててパーティを守った立役者だ。より大きな組織、教会から引き抜かれてしまった。それでも、リーズは残ろうとしたからリャンの能力はどの程度のものであるかとしても、結局のところここで言うことは変わらない。


 用済み。それよりかは自分たちが扱えないところまで遠く行ってしまった。「君は遠くにいる」そのことを突き付けることだった。


「……そう、ですか」


 リーズは俯いて噛み締めるように言った。


「ここまでは建前なんでしょ? ちゃんと言いなさいよ」


「そう、建前。ここまでは建前。さて、リーズさん今言ったように、君のここでの役割は終わりだ。でも、君は大きく出世をすることを約束されていながら満足をしていない気がするんだけど、どうなのかな」


「満足……そう言った意味で言えば、十年分以上かけて積み上げるものが一挙に縮んだような気がします」


 宗弥の見立てでは、リーズは出世よりも一人のクレリックとしてゲーン教の教えと、教えを守る人々のために働くことを重じているように思っている。アイトの村で、村人を犠牲にパーティのメンバーだけ生き残ろうという算段を提案したとき強烈に反対したのはリーズだった。


「現場を離れるのが嫌?」


「いえ、そういう訳ではないんです。重要な仕事だと思いますし、その場所でもわたくしに与えられた役割はきっと出来るでしょう」


「えーじゃあ、気になる人でもいるの?」


 クリスちゃんが言った。


 好きな人でもいるの? みたいな雰囲気で。


 え、そっちの問題なの? ということを飲み込んで話を進める。


「気になる……人ですか……確かに言われてみれば」


「ねえ、誰なの?」


 クリスちゃんはとても楽しそうに前のめりになって聞いてくる。


 宗弥は、目の前でガールズトークが始められる現実に適応出来ず、固まってやり過ごすことを心に決めた。


「……ヒューゴさんですかね?」


 宗弥はこの間事情を聞いて納得したが、横でクリスちゃんが物凄い顔をしていた。

 

 怒りを伴わない般若というか、理解が出来ないということが顔に書いてあった。思い返せば、ヒューゴはクリスちゃんが放逐して宗弥が拾ったメンバーだった。


「……確かに顔は良いことは認めるけども」


「顔? 何のことです?」


 リーズが文脈をよく理解していない回答をした。


 宗弥は、この時点で二人に致命的なズレがあることを理解していたが埋めようとするとそれはそれでめんどくさいし、結局自分の持っていきたい話にクリスちゃんは持っていって楽しむだけだろうか……。拗れているが、ぽわぽわしたリーズはぽわぽわさせておいてクリスちゃんの納得いく話にすり替える。


 コイバナに加担することを宗弥は心に誓った。


「クリスちゃん彼の魅力をご存知無いんですね?」


「そりゃ、あんたのところに行ってからは、破竹の勢いで活躍しているっていうのは聞いたけど! 聞いたけどさ! 人格! 人格壊れてない? 彼人格壊れてない?」


「そんな事は無いですよ」


 と言いつつ、まあまともじゃ無いよねと思いながらも


「彼には伝説的な逸話がいくつも有りまして、例えば、銀山の防衛戦で彼を筆頭にした防衛部隊数十人で数百から数千の軍勢を押し返した話がありまして、ヒューゴは最前線に立って味方を盛り立てて、最終的には銀山を応援が来るまでの間守り抜いたのですよ」


「昔は眉唾だと思っていたけど……本当みたいね、それ」


「そうです。当時の部下から話を聞くことが出来たのですが、その時のカリスマと英雄としてのあり方はあまりにも神々しく、絶対の忠誠を心に誓ったそうです。ここに来てからの惨状を聞いて彼は、涙ぐみながら語ってくれました……」


「なるほど?」


 クリスちゃんはいまいち納得していないようだが、宗弥は一気に畳み掛ける。


 なお、リーズはなにが起こっているのかまだ理解出来ていない様子だった。


「理由はある。アイトの村のファヴニール討伐! 僕らがバルムンク打ち込む直前にヒューゴはリーズを守るために数十秒間ではあるけど、ファヴニールに一騎打ちを挑んでいるんですよ? そんなことされたら、もう、吊り橋効果で一撃必中ですよ! ねえ!」


 リーズの方を向いてウインクをすると、リーズは曖昧に微笑んだ。多分なにもわかっていない。


「そうか、そんな事が…………あるのね……」


「そうです。ええ、そうなんです!」


 やけくそ気味に頷くが、なんとも言えないこれ以上引っ張るにも限度がある。


「決めた! 私応援するわ! ちゃんと想いを伝えないとね!」


 宗弥はリーズの顔を見た。


 リーズも同じように笑っていた。これはなにが起こっているのかよく分からない時に浮かべる笑顔だ。


「ごめんね」


「何のことです?」


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