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異世界転生しても社畜なので辛い  作者: あぶてにうす
3話 神になるものと、神を引き摺り下ろすもの
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安心と実績の訓練パッケージ(そこそこ儲かる)

「んじゃ、とりあえず雑にやってみるか。お前ら全員でわーっと来い。ヒューゴが受け止めてもたもたしている間にあたしが狩るわ」


 エマの指示はとてつもなく雑だった。


「え、それだけ……」


 出された指示を聞いて、集められた兵士たちは呆然と立ち尽くしていた。


 宗弥は、漠然と新卒で入った時に出会った時にチューターだった無愛想な先輩を思いだした。


 よくないとっかかりだとは思ったが、エマが人に何か教える際はまずやってみろというのが多かった。


 ハルスバン公国騎士団アルミン駐屯地。


 よく晴れた日だった。ピクニックに行くにはちょうど良い日和で、小高い山にある訓練所で近くでは鳥のさえずりなども聞こえてくる。


 アルミン冒険者ギルドのボス、メアリー・ラインからの直接の依頼だった。


 アイト村でのファヴニール討伐クエストを経て、宗弥と宗弥のパーティは公国騎士団内で知れ渡っていった。


 もとより、カリスマめいた人望と才覚を持ち合わせているヒューゴもいたのも大きい。


 アイトの村での功績は結局のところ古竜討伐兵器を軍から借りて討伐をした(ということになった)ものの、最も評価された点はたった数十名で百人程度討伐に必要とされる巨竜を倒したということだった。


 村人を手練れの兵士以上に訓練をしたパーティとして評価をされた。


 評判が巡り巡って、騎士団から直々に依頼があった。


 クエストではあったがランク指定は特にされていなかった。お金は国が直接払うのもあって想定以上には出た。しかし、これをやるのは一度潰しかけたメアリーの顔を軍に対して立ててやるというのが大きい。


「加護術式つけても良いし、狙撃もありだ。一応殺し合いをするつもりはないから非殺傷武器でやりあう感じだ良いな? お前たちはがんばってあたしたち四人を倒せ。以上だ」


 エマがそう宣言をすると、騎士たちはおのおの武器を構えて交戦体制に入る。


「リーズ、始めるぞ。ドミニク適当に。ヒューゴはあたしの前で構えろ」


「承知しました」


 リーズ、直後に宿りし神の肉体を詠唱。


「了解した」


 ヒューゴ、盾を構える。構えただけで、術式が成立する。


「え、僕だけ適当にって指示雑すぎない?」


 ドミニク困惑。


「別に適当で良いだろ。やること分かってんだろ?」


「ああ……。向こうの弓兵がエマかリーズを狙うだろうから、先手打って倒せってこと? んで、適当に隙を見つけて大将を討てとかそんなところ?」


「分かってんじゃねーか、王子様」


「うるさい!」


 そう言ってドミニクは飛び出していった。


 それなりに修羅場は潜ってきており、役割分担も明確になってきた。


 ヒューゴは敵の突進を一人で受け止める。


 エマは撹乱、もしくはクローザー。ドミニクの役割も比較的近いが、飛び道具や空からやってくるものの対策もする。リーズは全体、もしくはヒューゴにのみ集中して加護術式をかける。


 この動作をエマの指示で、あるいは適当に判断して行動していく。


 作戦の根本にあるのはあまり動かない壁役のヒューゴと、それを支えるリーズ。


 兵士達が一斉に突撃槍を構える。背後では、騎士団所属のクレリック達が一斉に宿りし神の肉体を一斉に詠唱する。


 兵士達が一斉に突撃をかける。


 ヒューゴは盾を構えた。唱えるまでもなくヒューゴの盾魔術は成立し、前進から青い光が出ている。


 兵士達の突撃。濁流のような突撃立ったがヒューゴの構えた盾の幻影の前で全員がぶつかって止まった。


「気合いが足りませんよ! クルガンオオトカゲの方がまだ強い」


 ヒューゴの裏を取ろうと回り込み始めるが、即座にエマが反応する。


 右翼からなだれ込んできた、槍兵に対して突撃を開始するエマ。


 とっさのことに槍兵達は盾と槍を構え防御の陣を組む。


「連結が甘いんだよ」


 エマは意に介さずさらに速度を上げて突撃をする。


 自らに刺さるであろう槍を手元でたやすく弾き飛ばしながら、槍を構えて突撃をする。


 あっさりと盾の連結は崩れて、槍兵が何人か吹き飛んだ。


 隊列が乱れた後はエマはさらに加速して、敵陣をめちゃくちゃにしていく。


 自分に刺さる攻撃だけを的確に弾く飛ばし、邪魔になるやつだけを転ばせたり、打撃を加えて生きながら前へと進みつづける。


 リーズはその後ろに従いながら、ヒューゴとエマに加護術式をかけていく。


 戦列は中はエマがズタズタにして、正面はヒューゴが前にでることで相手はどんどん倒れていった。


 エマはあまりに早すぎて誰も捕まえることが出来ない。


 ヒューゴは多少攻撃を肉体に受けても弾き飛ばしメイスで立ちふさがる相手を凪払っていく。ブルドーザーを人の身で体現していた。


 さて、この状況で狙われるのはリーズだが……。


 一本だけ矢が森の中から飛んできて見当違いなところへ飛んでいった。


 リーズは全く気を取られることなく詠唱を続ける。


『あ、悪い、しとめ損なって一本飛んでった。弓兵はとりあえず全員仕留めた』


 飛んできた矢はドミニクが仕留めている途中に悪あがきみたいに放たれたものらしい。


「形成を整えろ! いくら強力な個人であったとしても、我らが力を合わせればそう易々と突破はできまい!」


 これまで攻め込んで来たもの達が一斉に集まり密集して壁を作る。その動きの速さは目を見張るものがありよく訓練された感じはした。


 目の前に壁のように盾兵達が整列した。


 連結式の盾魔術を組み合わせ強力な壁になる。攻め込めば負ける。だから防御から初めて攻撃の力へと変える。


 エマが突っ込むが簡単に弾き返される。


 続いて、ヒューゴが思い切りメイスをぶつけるものの何も起こらなかった。


「堅ぁっ!」


「よく訓練された、ファランクスですね。私程度が叩いたところでびくともしない」


 ヒューゴとエマの攻撃では抜けそうもなかった。


「フハハ、思い知ったか! これぞ我がアルミン師団に伝わる伝統の盾、『何者も立ち入れぬ聖域(エルドラド)』よ!」


 向こうの指揮官は勝ち誇ったように笑った。


「弓兵隊、構え!」


 どうやら向こうは、盾で固めて弓矢の雨あられで攻撃をするつもりらしい。


「てーーーーー!」


 と、大きな声で指揮官が叫ぶ。


 しかし、何も起こらなかった。


 守りを固めていた盾兵達がお互いに顔を見合わせていた。


 ヒューゴとエマはそれぞれの武器を納めた。弓兵は先ほどドミニクが全滅させていたのを知っての行動だった。


 誰も何もしゃべらなくなった。


「おしまいでーす!」


 ドミニクの宣言が辺り一帯に響き渡った。


 盾兵達が一斉に振り返り明らかになったのは、ドミニクに羽交い締めされてナイフを突きつけられた、指揮官の姿だった。


 ドミニクは弓兵を全員倒したあと、背後から忍び寄り指揮官を仕留めた。エマの言う「テキトー」にやれというのはこのあたりも含まれているのだろう。


 全く関与してないが、すごいなぁと宗弥は素直に感心してしまっていた。



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