許可はいただけていると思っていたのですが……
宗弥はギルドに戻ってラサ王国から振り込まれた報酬の受け取り書類にサインをして、ロビーを出ようとする。
「ふふふふふ、今日はお肉、お酒も良い。どこのお店に行くか今からたのしみ、ふふふふ」
久しぶりにまとまったお金が入って、この後の打ち上げをどこにするかということで宗弥の頭の中はいっぱいだった。
出口を見ると、そこにクラリッサが立っていた。
宗弥は、何か特殊な能力者が覚悟を持って自分に立ち向かってくるような迫力を感じていた。
「あ、あれ、クリスちゃんどうしてそんなに……怒っている……の?」
「話は聞かせてもらったわ、ボスが呼んでいるわ」
クラリッサに手を引かれるまま、メアリーの執務室へと連れて行かれる。
ノックを二回。
「入ります」
「どうぞ」
部屋に入ると入ったでまた凄まじい怒気を肚の中に溜めたメアリがー座っていた。
宗弥にとっては、少しばかり手が震えるほど怖い。殺す気である。これはやらかした時の空気に限りなく近い。
生き残るには……。
「何故、ここに呼ばれたのか理由は分かっているのか?」
「いえ、全く」
すっとぼける。
「貴様はギルドに入った際に就業規則を読んでいるはずだな。では、今回の問題が重大な規則違反であると言うことは分かっているのだな?」
「はて、ああー、そう言えば今回、ミカエラの盗賊ギルドの方々に確かに協力を仰ぎましたが、その事ですか? それに関しては事前に報告はした上で良いと伺ったはずだったのですが」
「それだけでは無いぞ、貴様今回の件で、自らペーパーギルドを作ったな?」
「さて、それに関しては僕もわかりません。何せ向こうが勝手に作ったので……」
確かに就業規則には、盗賊ギルドとの接触と、紹介者がペーパーギルドを作ることに関しては許されていない。
過去にペーパーギルドを用いた横領事件を元に、そして盗賊ギルドとはかつて熾烈な縄張り争いがあったために接触を基本的には認められていない。
「最初に聞くが、何故ミカエラに接触をしたのだ?」
「そもそも、僕たちはを襲ったゴロツキの正体がミカエラ盗賊団から派遣されていた奴らなんです。彼らもまた何も知らないようだったので協力を要請しようと思いましてね。それで最初の段階で、『どんな手段を使っても解決をしても良いですか?』と聞いたらあなたは好きにしろとおっしゃったでは無いですか、なのでミカエラへ協力を要請しました。それで現状の関係ではウチからミカエラに依頼をすることは出来ても、ミカエラからウチへの依頼ははねられてしまいます。故にギルドを向こうが『勝手に設立し』そこから間接的にウチへと依頼をしていただき、襲撃者に依頼したものをあぶり出すことに成功しました」
「何の相談も連絡も受けていない上に、就業規則を破って良いとは一言も言っていないぞ?」
「で、あればミカエラ盗賊ギルドと接触をしたことに関しては、あくまで抗争を目的としたという前置詞が入りませんか? 今読み返してもらっても良いと思いますが、あくまでそれは抗争を目的としたことで、手を組むということに関しては特に禁止の事項はございません」
「では、ギルドに関してはどう説明をつける。完全な飛ばしの仕事では無いか」
「結局のところミカエラにある仕事を依頼主をハメるために『向こうが勝手に作った』ギルドですので僕自身は設立に関与していません」
「しかし、貴様やったことを纏めれば規則では争うことをしないとなっていて、暗黙のうちに接触をするべきではないと言われていた盗賊ギルドに自ら接触を図り、その上でギルドを勝手に設立をした。これは盗賊ギルドと組んで利益を不当に受けているという見方をされてもおかしくはなく、厳しく処断されるべきではないかね?」
「いいえ、そもそも事件の究明の為にはなんでもして良いと許可をしたのはメアリー様ですし、ギルドは向こうが作ったものですし、僕としては特に関与しておりません。どこに処断される要因があると言うのですか?」
負けを認めるわけには行かなかった。
あらゆる手を使ってもこればかりは認める訳にはいかなかった。
ミスをしたわけでも無ければ、違反を明確にしたわけではない。
しかし、限りなく黒に近いグレーまで使っていることは分かっている。目に見える限りの罰を受けてはならない。
「チ、今回は不問にしてやる。貴様にはまだ利用価値があるから使ってやる」
「ありがとうございます。今回の件の副産物ではありますが、ラサ王国からの仕事も今後受注できるようになっておりますので、今後ともよろしくお願いしますね」
「もういい、出て行け」
「失礼しますー」
宗弥は頭を下げると、部屋を出た。
クリスちゃんも一緒に部屋を出た。ツカツカと急いで部屋から離れるように歩いていく。
「あんた永遠に出世出来ないわよ?」
「なんか、そういう星の元に生れついてるっぽいんだよなー」
追求こそされたが、一応は不問。
ということだが、紹介者を評価する仕組みというのは曖昧でただ成績が良ければより良い地位に行けるというものでは無い。
少なくともメアリーから自分に対しての心象は良くない。前回の件もあるし、今回のものでより一層肩身が狭くなることだろうことは想像がつく。
「あ、そうだ。今日このあとクリードさんと会うけどクリスちゃん暇?」
「暇だけど、クリードさんって誰よ?」
「ミカエラの紹介者だよ。今回の件の僕の相棒さ」
「……呆れた」
そう言いながらも、クラリッサは宗弥について行ってクリードと三人で会うことになった。
クリードとクリスちゃんは案外すぐに意気投合して、酒場でさんざん宗弥の悪口をいっていじり倒して遊んでいった。
「やっぱりねぇ」
二週間後に発表された評価更新で、宗弥のギルドからの評価は中の下から最低に下がった。




