パーティのはじまり
「来い、ヒューゴ、王様を守るぞ」
「分かっている」
即座に、エマとヒューゴは護身用の武器を手に取ると、セト王の近くへと駆け寄っていく。
次々と変質していく黒い獣達、黒い薬を飲んだ人間の周り一帯でパニックが起こり、我先にと中庭から逃げようとする。
しかし、門番をしていた衛兵もまた黒い薬を飲んでいたために、黒く変質していく。
鎧を纏ったままで、そのまま変身を果たし、逃げてきた人間たちへと襲いかかる。瞬間。横から鎧を着込んだ男たちがタックルで押し倒した。そうして、中にはの正門からひとりの男が入ってきた。
濃紺の盗賊ギルドの制服に身をまとった男クリード。同様に何人か同じような服をきた人間を連れて中に入ってきた。
「避難誘導はお任せください、経路は全て我々の手の者が守りに入っております。落ち着いて慌てずにお逃げください」
濃紺の制服を纏って盗賊たちが中へとはいり、それぞれ避難誘導と、黒い獣との戦闘へと入る。
濁流のように人々は中庭から逃げていった。何人かが、逃げ遅れて負傷したり、致命傷を負っているようでもあったがごく少数だった。
「宗弥、待たせたなぁ!」
クリードが山羊頭をぶっ飛ばしながら中へと入って来て宗弥達と合流した。
「打ち合わせ通りにやってくれたこと、感謝します。それと彼らに装備を与えて下さい」
「あいよ!」
クリードがそういうと、彼の後ろから二人飛び出してきた。一人は、エマの槍とドミニクの弓を持っていて、もう一人はヒューゴのメイスを持っていた。
エマと、ヒューゴへ投げて渡される、槍とメイス。それと盾。
「なんか何が起こっているかぜんっぜんわかんねーし、今めちゃくちゃムカついてるけど、とりあえずこいつらを倒せばイイんだな!」
と、エマ。
「ああ、頼む」
「了解、ヒューゴ三秒後にアースクエイクをかけろ。その時に一気に刺し貫いてやる」
「分かった」
ヒューゴが襲いかかってくる黒い獣たちを薙ぎ払っているとエマが壁へと張り付き、そこから飛ぶ。
「アースクエイク」
ヒューゴがメイスを振りかぶると、思い切り振り下ろす。
衝撃波があたり一帯に伝わり地面を揺るがしていく。魔獣とは言え人の大きさよりも大きいという程度のサイズであれば簡単に転倒する。
エマが着地するとき、周囲の全員が彼女とヒューゴを除いて転倒していた。
「ドラグーンドライブ」
エマが真っ赤な炎のような光を纏い、低く構える。
ぞろぞろと立ち上がってくる、黒い山羊頭達その心臓めがけて走り出した。
赤い閃光は山羊頭の心臓を貫くと、そのまま次の山羊頭をさらに貫く。次々に、山羊頭の心臓を貫きつづけて、五体貫いた所で槍を立てた。
「焼き鳥みたいだな」
宗弥が呟いた。
焼け焦げて真っ黒になった肉が串に貫かれているようだった。やがて黒い液体になって溶け落ちる。
ヒューゴはやってくる相手をひたすらにぶん殴って弾き飛ばしていった。
心臓を刺せば死ぬがそうで無ければ死なない。ヒューゴはどちらかと言えば守る方の戦いに特化し、その間にエマが倒す。そのコンビネーションは何も言わずとも成立する。
「厄介すぎるな君達」
起き上がりながら、山羊頭となったマッシュが言った。
「しゃべれたのか、あんた」
「私が頭だからな。ナザレ何体か食え。そうした方がいいはずだ。他の者どもは守れ、攻めるな」
ナザレが変化した山羊頭の元に別の山羊頭が集まってくる。
ナザレだった山羊頭の頭が大きく変形して開くと頭をまるごと噛み砕いて、バリバリと食べ始める。手軽につまめる菓子のように簡単に食べる。
「させるか」
エマがナザレへと突っ込んでいくが、別の山羊頭に阻まれて止まった。
山羊頭はエマとの戦いへ入るが、ただ単純に攻撃をするだけでなく防御を行うようになっていた。
そこから、別の山羊頭が現れて二対一の状況へと変わる。
エマが攻めあぐねて上手くやることができない。
マッシュが統率して、コントロールしているのは間違いがないようだった。マッシュの周りにも何人か集まり、マッシュに喰われていく。
何体かが寄り集まってできた黒い山羊頭は食べた分だけ大きくなった。
マッシュは集まってきた衛兵やら、盗賊達に向けて、炎を吐いた。真っ黒な炎が放たれて何人かが巻き込まれのたうちまわる。
「かか、いかに有能なドラゴンスレイヤーとて、この形状、そうやすやすと倒せると思うなよ」
マッシュが言った。
そう言い放った直後にドミニクがマッシュの心臓めがけて弓を放つが全く通る気配もなく弾き飛ばされた。
「なるほど、たしかにそうだね」
そう言いながらも、ドミニクはナザレに襲い掛かられる。
「おっぶ」
振り下ろされる拳を転がって避けたら、宗弥にぶつかった。
「なんでそんな邪魔なところにいるの!」
「うるさい! 僕だっていきるのに必死なだけだ!」
宗弥はさらに転がって、壇上から転がり落ちる。
「ドミニク、宗弥はそっちで頼む。こっちは王様守るので手一杯だ!」
「うお、いざって時に本当に役に立たねー」
「ごめん、守って!」
宗弥は立ち上がるとそのまま正面へと駆けていく。それを追うように背中を向けないでいくつか弓を放っていく。
「ドミニク、これを使え!」
セトが王権を投げて寄越した。走りながらも、ぴったりとドミニクの手に収まるように受け取る。
「引けるかどうかわからないんだろう?」
ドミニクが走りながら、宗弥に投げて渡し、自分の弓を引き続ける。
「今のお前なら引けるはずだ。大丈夫力になってくれるはずだ!」
セトが言った。
ドミニクはセトの目を見た。心のそこから自分のことを信じきっているような眼差しで、なんだか照れ臭い気持ちになった。ただ、手にした時、確かに引けそうな気はしたのだった。




