はじめての四半期決算はボロボロすぎて賞与も出なかった
宗弥には金が無かった。
とにかく金が無かった。
古龍討伐兵装を三十発試射するにあたって使った金額が尋常じゃない額になっていた。結局予想はしていたし、古龍も全て打ち倒すとなればどれだけ巨龍討伐の報酬が大きかったとしても、赤字になるのは明白だった。
結果として何が残ったのか、宗弥がパーティーを作ってからおよそ三ヶ月、この四半期の中で着々と堅実に利益を上げ続けていたが、今回の討伐クエストで全ての営業利益を吹き飛ばすだけのインパクトはあった。
そうして宗弥の給料が一ヶ月分まるごと出ないという結果に陥ったのだった。
宗弥は売り上げ高こそギルド内最高を記録していたが、そこから経費を引いた営業利益は限りなく0に等しく、四半期ごとに行われる紹介者ごとの決算結果によるランキングは最下位を記録した。
「腹減ったナァ……」
過労で死にかけてから、クラリッサとリーズの必死な蘇生処置によって生き返ったは良いが、今はひもじさで死んでいきそうだ。
入院生活を開けて、入院費を全て払ったら今度は生活費が家賃を残してほとんど、なくなってしまったのだった。
結局どこまでいってもこんなものなのだろうか。
「宗弥入るぞ」
と言いながら、ノックもせずに入ってきた。
「な、なんだあ!」
「なんだあじゃねーよ。飯食ってないんだろ? 飯喰いに行くぞ、おら立て」
立てと言われたが、半分拉致されるような形で連れ去られた。
「お、お姫様だっこはダメだってー!」
「なら、こうか?」
お姫様抱っこの形から、荷物を肩に担ぐような形に変わった。
「これもこれでなんか、歩かせろー!」
「やだよ。みんな待ってんだ。歩いてる時間がもったいねぇ」
そうして酒場へと連れてこられた、賑わっている中で奇異な視線が飛んでくるがあまり深く考えないことにした。
「ほい、座れ」
ぽんと、椅子の上に座らせられた。
テーブルの上には豪奢な料理が並び、うまそうな匂いを立てていた。テーブルを囲んでいたのは、エマと、リーズと、ヒューゴ、ドミニク、それとクラリッサが集まっていた。
「祝勝会、まだでしたよね?」
ヒューゴが満面の笑みで言った。
そういえば、アイトの村で討伐直後に祝勝会をして飲んで騒いだりしていたらしい。宗弥はその間生死の境をさまよっていたから知らなかったけれども。
「これ食って元気出せよな。今朝獲ってきたオキ鳥持ち込んでいろいろ作ってもらったんだ」
と、ドミニク。
いくつか並んでいる鳥の料理はドミニクの持ち込み品だろう。
「その後お体大丈夫ですか?」
必死に看病してくれたリーズは心配宗弥の顔を覗き込んでいた。
「いろいろ聞いたんだけど、飯食べてないって本当なのか?」
エマが言った。
「本当です! これが、皆様を雇っていた紹介者の虚しい実態なのです!」
クラリッサが演説調に立ち上がって言った。
「ちょ、ちょ、やめて、それはとても」
恥ずかしい。
「そんな、相談してくださいよ!」
「どうして言ってくれないんですか」
「言ってくれればおれが色々獲ってくるのに……」
口々に詰問された。
「いや、その、僕の悩みをみんなに背負ってもらうわけには行かないでしょう?」
「ああ、お前はそういうやつだよな?」
エマが呆れ返ったように言った。
「勝手に背負い込んで、辛い時も顔に出さないで勝手に死にかけて、お前はそういうやつだよな?」
「そうなのか?」
客観的に自分を見たことがないから、よくわからない所感だった。
「そうだぞ。今回は……まあ仕方ないとしても、その後が腹たつ。もっと宗弥のこと教えてくれ。困っているなら助ける。ダメな時はダメって言う」
「そうよ、アンタ図太いやつって思ってたけど、案外大事なことは全部抱えて溺死するタイプなのよね」
エマと、クリスちゃんに一斉に指摘された。
「もっと頼れよ。あたしたちを」
「が、頑張る……」
眉間に皺を寄せて神妙な顔で答えることしか出来なかった。
そうだ、思い返せば、現世で死んだ時だってそんなものだった。抱え込んで抱え込んで、自分が働き続ければいいのだろうと思っていたら死んでしまったのだ。
頼ってくれて、頼れる仲間がいる。
宗弥は、やり直すにはまずは頼ることを覚えていこうと思った。
「あ、教えるの忘れてたけど、古龍討伐の報酬出るって」
「うお、マジでか! それはとてつもなく、とてつもなく圧倒的にうれしいいいいいいいいいいいいいいい! ぴゃああああああああああああ」
その日、一旦の大変なこと全てにケリがついた宗弥は一番騒いでいたのだった。




