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異世界転生しても社畜なので辛い  作者: あぶてにうす
1話 異世界転生しても結局働き詰めで死ぬ
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英雄たるゆえん

 リーズは、走っている途中で転んでしまった。


 もとより、リーズは運動神経も良くなくて鈍臭いということは自分でも分かっているつもりだった。


 立ち上がろうとした時に、足首に激しい痛みを感じた。転んだときにひねったのだろう。


 声をあげてはいけないことは分かった。


 自分に気がついて、なんとかしようとして、全員死んでしまう。それだけは避けたかった。


「リーズ!」


 エマと、ほかのみんなが一斉に振り返った。


 エマはおそらく、この状態を見て瞬時にどういう状況か分かってしまったのだと思う。


「わたくしのことは良いから先に行ってください!」


 迷わないで。と背中を押すつもりで言った。


 エマは迷いをより深めてしまったようだった。自分を助ければ総崩れ、助けないで走り続ければなんとかなるかもしれない。その二択をより迷うことになってしまっていた。


 そんな葛藤の中に少し可哀想だと思う気持ちがあった。


 何度となく、ドラゴンの討伐を行ってきてその指揮権を持ったとしても、持ち前の才能でなんとかできてしまったのだろう。能力が高すぎるせいで挫折を知らないでここまで来てしまったのだ。自分の死が彼女の傷になってしまうと思うと、死にゆく身でありながら同情せずにはいられなかった。

か。


「女性の自己犠牲ほど、私が最も見たくない行動です」


 そんな中で、ヒューゴがファヴニールとリーズの間に立っていた。


「あなた、何を」


「これしかないと私は思うんです!」


 ヒューゴが盾を構えながら言った。



「リーズを守り、みんなで生き残る方法は、ここで食い止める他ないと思うんです! そしてここで倒さないといけないと思うんです!」



 ヒューゴが叫ぶように言った。


「リーズを見捨てるなんと私にはできない。犠牲になるのは、私が一番最初であるはず。それが私に与えられた役目のはずだ!」


 エマは何も答えなかった、もちろんドミニクも答えなかった。リーズもその可能性に関しては全くと言っていいほど考えていなかった。


「リーズ、大地支えし巨人の顕現と、宿し神の肉体の術式って混ぜられる?」


 加護術式を重ねがけすることは出来ない。


 混成加護術式。それが出来るか、ヒューゴは聞いているのだろう。


 加護術式とは教典に載っていることを引用することによって、教典の故事を部分的に付与するというものである。


 混合術式とは、二つの術式を混ぜ合わせて教典の二つの効果を生み出すことであり、教典を自分で改変し新しい術式とするものだ。


 これが出来た人間を実際にはリーズは知らない。ただ、そういうものがあるということだけは分かっていた。


 うまくいかなければ、一つの術式よりも威力が劣り、ただの妄言として聞き流されるということだってありうる。


「それが必要なの?」


「そう。多分、私一人で一度受け止めることになるから。リーズは私を信じて欲しい。私もリーズを信じて命を預ける」


 なんでもないことのようにヒューゴは言った。


 リーズを救うために命を張るから、自分を守るために全力で命を張ってくれと。


 ヒューゴの勇気は正しいのか、あるいはただの蛮勇なのか、リーズには分からなかった。


 ただ、この背中を見ている限りは彼が前にいるかぎりは大丈夫。そう思えてくるのだった。


「わかりました」


 覚悟を決める。ここでこの男の提案に乗らなければ全滅してしまう。


「汝その身に落下せし大地を受け止めしもの」


 エウバの章の大地支えし巨人の章から始め。


「その身に神を宿し、その大地打ち砕きしもの。神の力を持って無双の力を得る」


 モーラの章の宿し神の肉体を改変する。


「汝、巨人の力を持ってして全てを撃ち倒せしもの。宿りし神の巨人!」


 混成術式を練り上げた。術式としてきちんと成立し、全力で詠唱をかけた二つの術式をひとつに練り上げる。


「ありがとう。あの龍と戦える」


「三十秒しか持たないと思って!」


  術式自体は成立したが、消耗が激しかった。呼吸を止めて水中の中にいるような息苦しさが続いている。


「それだけあれば十分」


 ヒューゴは前を向いて盾を構えたままで言った。


 ヒューゴは自分の盾をメイスで叩きながら大きな音を出した。


「我こそは、フェレイル家五男。ヒューゴ・フェレイルである! 聖典に現れし古龍よ! いざ、尋常に勝負しろ!」


 ファヴニールはヒューゴの挑発に答えるように吼えた。


 大きく息を吸い込むファヴニール。また、先ほどの白い光線を繰り出す気なのだろう。


「邪悪なるものすべてに閉ざされた門よ、ここに顕現せよ。ここより先は楽園、汝の立ち入りを禁ずる! 『天国ヘブンズへのゲート!』」


 ヒューゴが盾を地面に突き立てると、巨大な青い門の幻影が現れてヒューゴの前で閉じられた。


 放たれるファヴニールの白い光線は一直線にヒューゴに放たれた。


 衝突すると光線と、青い門。


 青い門の幻影は徐々に消えていき、全て消えた。だが、ヒューゴの盾で受けとめ。光線は途絶えた。


「その程度か! 来ないならば、こちらから往くぞ!」


 ヒューゴは一気に駆け出すと、飛び上がり、ファヴニールの顔面を持っているメイスでぶん殴った。


 ファヴニールの顔面が弾かれる。


 ヒューゴは着地と同時に前足にメイスを振り下ろし、盾を一度手放して、両手でメイスを掴むと全力で振り抜き、ファヴニールの巨体をもろともに吹き飛ばした。


「すごい」


 リーズは誰に聞かせるでもなく呟いた。


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