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異世界転生しても社畜なので辛い  作者: あぶてにうす
1話 異世界転生しても結局働き詰めで死ぬ
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開戦準備

 酒場では皆一様に顔を赤くして騒いでいた。男も女もあまり関係なく酒を飲んで楽しんでいた。


 宗弥はその日のうちにまた帰って行った。作戦概要を根ほり葉ほり聞いた上で帰った。


 しかし、その後アイト村にやってくることは無かった。今は、ドラゴン討伐二日前に行う決起集会を行なっていた。


 エマは乾杯の音頭を取ると、そのまま端っこの方でジュースを飲んでいた。


 ドミニクとヒューゴは騒ぎの中心にいて、ドミニクがヒューゴに酒を飲まされて目を回していた。


「宗弥、あいつ結局来なかったな。この間は何しに来たんだろ」


 エマは向かいに座っているリーズにつぶやくように聞いた。


「さあ、本当に宗弥さんは仕事に必要だったからいらっしゃったのではないでしょうか?」


「リーズは不満に思わないのかよ」


「不満なのですか? 宗弥さんの対応が?」


 リーズは微笑んだまま、質問を質問で返した。


「……そうだよ。あいつが何考えてるんだかよく分かんねぇ。やる気があるんだか無いんだか、ギルドに報告をするにしても熱心に聞いて来たし、適当にあたしたちを見捨てたと思っていたけどその割にはあった時嬉しそうだったし」


「宗弥さんは何かを隠しているのかもしれませんね」


「なら、相談すべきだろ? そんだけ信頼がないって言うのか?」


「そういう訳ではないのではないのですか」


「じゃあ、どう言うわけで相談しないんだよ」


 リーズは、しばらく眉間にしわを寄せて考え込んだ風だったが、しかめた顔を解いた。


「さあ、わたくしには分かりかねます」


「分かんないのに何で穏やかでいられんだ」


「そもそもわたくしとあなたとで、いる理由が違うんですよ。わたくしは彼を信頼できる雇用者と考えていますから、彼の動きの根本に彼自身だけの保身のためだけって意図はあまり無いようにも思えますがね」


「そらそうだけどさ」


「エマの場合は対等なつもりで一緒にいるでしょう? だから、そのように思うんです」


 カチンと来た。


 言っていることは正しい、正しいからこそ腹が立つ。対等なつもりで、いや違う、宗弥は自分を正しく使いこなすことが出来ると信じていたから声をかけた。そもそも対等なつもりだったが、対等なのではないのだ。


「なるほどな、なるほどなるほど、ああ、リーズあんた凄いな」


「どういたしまして」


 リーズは楚々として微笑んだ。


「あいつは、これからの仕事のためのことをしてるって言ってた。多分それ自体は間違いじゃ無いんだろうから、明後日、明後日頑張ってあいつにちゃんとやれたって報告しないとな」


「そうしましょう。今日は今日で楽しみましょう」



* * *



 雲ひとつ無い蒼天。風も無く、暑過ぎることも無く寒過ぎることもない。ただ、定期的に遠くから地鳴りのような音が聞こえていた。巨龍の足音だ。


 大き過ぎる龍種は翼で自分の体の重さを支えるほどの筋力が発達していないため、地面を歩いて移動する。通常、マナの溢れ出るパワースポットに生息し数百年その場所から動くことをしない。移動することがあるとすれば、その土地のマナが枯渇し移動をしなければならない状況に限られる。


 アイト村の壁の外側にはほとんど全員の村人が集まっていた。ごく小さな子供と動くことが困難な老人や病人、怪我人、それを看病する人間以外は全員壁の外に集まっていた。


 主だった戦闘要員以外は、ゲーン教聖歌斉唱に参加するか、もしくは補給物資の運搬として重用される。


「みんな、今日までの訓練ご苦労だった」


 エマは全員の前で言った。


「今日までの辛い訓練は今日死ぬためにあるんじゃない。明日も楽しく生きていくための訓練だ。一人の犠牲も出すつもりはない。そのつもりであたしらは、訓練をして来たし、その基準まで育てあげたつもりだ。死ぬのは許さねぇ。こんなのは決死の作戦なんかじゃない。今の全員でやれば、やれて当たり前の作戦だそのつもりで倒すぞ!」


 力強い雄叫びが帰ってきた。その答えの声には女の声も子供の声も混ざっている。


 過酷な訓練の末、一つにまとまりを得てこの村は一つの巨大な兵器へと姿を変えていく。群れとしての強さで一つの強大な個を打ち砕くのだ。


「んじゃ、始めんぞ。全体に対しての作戦の落とし込みはなんっかいもやってるから分かっていると思うが少しでも理解してないと思ったら懇切丁寧にもう一回教えてやる!」


 そうしてエマは、全体の作戦概要を説明した。三時間後に訪れるであろう巨龍に対しての討伐作戦だ。


 巨龍は基本的に飛翔しない。動きは徒歩でよほどのことがない限り羽ばたくことはまずない。


 徹底的に地面に縛り付けて打撃を与え続けることによって撃退するというものだった。


 エマが話した限り理解できていないもの、ついてこれていないものはいない様子だった。もとよりこの村の住人は皆誇り高き戦士なのだ。


 それからそれぞれの隊に別れての作戦説明。長槍隊の長はエマと村長。盾隊はヒューゴ。長弓隊はドミニク。聖歌隊と、その外補給関連に関してはリーズを責任者として説明を再度行わせる。


 それぞれに作戦説明、体調の確認を行ったが問題はなし。


「往こうか」


 ヒューゴが言った。


 精悍な顔つきだった。普段のやらかすときの顔では無く、やるべきことと必要なことをやるときの顔だ。


 全ての準備が終わった頃、遠くから響く足音は巨大な地鳴りのように鳴り響きつづけていた。



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