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異世界転生しても社畜なので辛い  作者: あぶてにうす
1話 異世界転生しても結局働き詰めで死ぬ
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続く訓練

「ぶっ込むぞ! 連結を離すな!」


 応と、気合いの入ったいらへ。


 エマと槍兵達は隊列を組み、一つの大きなやじりとなり突撃をかける。


 武器魔術の一環である連帯だ。


 およそその武器を使うにあたって武器ごとに地面から得た力を放出する技術は体系だてられている。連帯は複数人で隊列を組み一つとなる事で一つの巨大な術式となす技術である。


「総員、衝撃に備えろ。何が何でも崩れるな!」


 一方でヒューゴはヒューゴの周りに重装備の盾兵を従え、密集することで一つの巨大な壁をなした。


 激突する槍のゲシュタルトと盾の塊。


 激しくぶつかったかと思えば勢いは盾にいなされ、後方へと走り抜ける槍の陣営。


「二秒後に左旋回、再度突撃をかける」


「連帯を解除、ターンし再度連結する」


 エマは連帯したまま塊として旋回。ヒューゴは塊を解除し、形を変えて再連結の指示。


 彼らが行っているのは紅白戦。


 訓練の過程の中で、エマが率いるオフェンスの陣営とヒューゴの率いるディフェンスの陣営をぶつけ合い、どちらかの陣営の連帯が途切れた段階で勝敗が決する。

 再び激突。


 互いに何度もぶつかり合い連帯を解かずにやり続ける。


 アイト村の住人はほとんど全員が高度に訓練をされた民兵でもあった。連帯を習得するのにそう時間はかからず、十日程度の訓練でもきちんと形になっている。出来るようになったあとはどれだけ継続して出きるか、スタミナが問題になってくる。


 故に、同じ程度の連帯と連帯をぶつけて先にほどけた方が負けという紅白戦でもってスタミナの錬成にあてている。


 今回はヒューゴの連帯がほどけてヒューゴが負けた。


「はい、今回はあたしたちの勝ちー!」


「あー、負けてしまいましたね、みなさんそれでは次はこうならないように罰ゲームをこなしましょうか」


 ヒューゴがさっぱりと言うと盾兵の顔色全員が青白くなり、ため息、それでもやるしかないと受け入れて罰ゲームをこなす。


 罰ゲームとは、片膝をついたまま、その場でジャンプし、足を入れ替えてもう一度最初の体制から跳ぶ足腰の鍛錬だった。これを百回こなし、少しだけ休憩してまた紅白戦を実施する。


 ヒューゴは軽々こなしていたが彼についていた盾兵達は壊れたブリキ人形のような緩慢さで、罰ゲームを実施していた。


 一方でエマのチームもエマのチームで全員がその場に座り込んだ、倒れて肩で息をしている。エマにとっては別段大した強度でもないのだが、彼らにはかなり苦しいだろうということは分かっていた。限界まで追い込んで、怪我人が出る前に引き上げる見極めをせるのがエマとヒューゴのもう一つの役割だった。


 勝敗はそれぞれあまり変わらない程度なので、消耗の度合いはあまり変わらない。


「あと一回やりますか?」


 罰ゲームの足腰の鍛錬を早々に終わらせたヒューゴがエマに聞いた。


「この辺でいいだろう。ギリギリまで毎日やるんだ。今日無理させて明日怪我人を出したくもない」


「それもそうですね」


 足腰の鍛錬を終えた盾兵達が終わった順にその場に倒れていく。


 体力も限界だろうが通常時にやる訓練ならここからもう一踏ん張りして、限界を超えたあたりで数回回すのもありだけど当日欠員を出すわけにもいかないのでここまで。


 侵攻ペースから考えて、残りは五日間。あと三日は追い込んであと二日は鍛錬は休ませ、作戦説明。残り一日は最終調整と動きの確認だけを行う予定だ。


「よし、じゃあ今日はここまでだ! 各員体を冷やし過ぎないようにしてから帰れよ」


 うめき声のような返事がバラバラに返ってきた。


 エマとヒューゴに関しては軽く体があったまった程度の強度の訓練だったので別段そこまで大したことではない。


「調子良さそうだね」

 振り返ると宗弥が立っていた。



 身にまとっているのはギルドの紹介者としての服装ではなく、異様に白いシャツに首に赤色の飾り、上下黒色の仕立ての服に黒の革靴。およそ当世風の格好からかけ離れていた。おそらく異世界転生された時に纏っていた服装なのだろう。


 顔色がものすごく悪かった。青ざめていて、べっとりと黒いくまが出ている。


「なんだぁ? その変な格好は」


「まあ、交渉するのに時として、異世界から来たってのは武器になるから今日はこんな感じさ」


 宗弥はいつも通りの顔で苦笑した。顔色は悪かったが。


「ふーん、で、何しに来たんだ? 仕事ここでは何もしないんだろ?」


「そうそう、今回の君たちに任せた仕事に関しては何もしない。ただ、ちょっと報告しなきゃいけないことがいくつかあって、教えてもらっても良い?」


「まー、別に良いけど」


 別段友好的な気持ちになるわけでも無いけれども、逆に協力してやらない理由もない。


 必要だというなら、それはそれなりには協力するべきだろう。


「作戦はもう決まっている?」


「そうだな、ドミニクに任せた長弓隊で交戦地帯に誘い込む。次にあたしたちの槍隊で突撃を仕掛けて、さらに進撃をさせる。ヒューゴの盾隊で進撃を受け止めさせて再度あたしの槍隊で突撃とドミニクの長弓隊の連帯による一撃を叩き込む。盾の連結で動けなくして、最後はあたしの天鱗砕きで仕留める」


「結局教えるだけって話しじゃなくなってんのね」


「ったりめーだろ、余計なことしやがって」


「悪かった。結局僕が足ひっぱっちゃったな、その件に関しては」


「お、おう、分かってりゃ良いんだよ……」


 意外な反応だった。


 自分がお膳立てしたことを台無しにされて、もっと宗弥は怒っているのではないかと思った。それについてあっさり謝られるとは意外だった。


「作戦の概要書とかあると報告しやすいんだが、持っていたりするか?」


「あるぞ、写しなら数枚写しがある」


 ほぼ全員が閲覧出来るように複写は多めにとっておいたし、全員の頭の中に入っていなければ一つの群れを一つの生物として巨龍をしとめるのは難しい。


「もらえるか」


「ああ、いつでも持ってるし一枚くらいはくれてやる」


 宗弥に概要書を折り畳んでいたものを取り出して渡す。自分用のは自分用であり、追加で何かを書き込むために持ち歩いてい予備だ。


「ありがとう、助かる」


 宗弥は概要書をなぞりながら、たまに顔を上げて大まかに指差しながら何をするかということとどこで起こるのかということをイメージしているようだった。


「本当に何しに来たんだ?」


 何もしないと言った割には熱心に読み込んでいるように見えた。


 エマ自身は宗弥がギルドに送っている書類の内容は詳しくは知らない。けれども、その割には熱心がすぎるというか、そこまで必要なのかという気もする。今回が始めて宗弥が同行しないクエストで自身が知らないことを埋めるための態度なのかもしれないけども。


「提出書類に書くことを確認に来ただけだよ」


「本当に?」


 じっと、目を見ると宗弥は少しだけ目を逸らした。


「いや、本当にただ今回提出が必要な書類は結構膨大だから必要なんだって。君らの帰ってくるところを守るってのも結構大事な仕事なんだよ?」


「そーかよ、そーかよ」


 カマをかけるだけかけてみたが、今回はこの件と関係なくただの確認だったらしい。


「あと、みんな元気かな? 作戦のそれぞれの役割分担と訓練の度合いも聞きたい」


「いいけど、報告書書くのにそんなに情報がいるのか?」


「僕だって一応このパーティを受け持っている紹介者だよ? いくら仕事は任せたからって、顔を見る必要がないなんて思ってないし、それに何よりみんなに会いたかったからここに来たんだ」


 宗弥は笑って言った。


 これは本当のことだ。会いたかったから来た。それだけは分かった。


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