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異世界転生しても社畜なので辛い  作者: あぶてにうす
1話 異世界転生しても結局働き詰めで死ぬ
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クエスト報酬の交渉の仕方。

 そこから先の記録に関してはある程度に割愛すべきだろうと思う。


 ひたすらに長い戦闘だった。


 昼前に始まった戦闘は最初の戦いから、日が暮れるまで戦い続けることになった。


 ローテーションが一時間後に出来てきた。


 まず、ヒューゴがひとりで敵軍の進撃を止めて、受け止めた端からメイスで打ち倒していく。脳へのダメージが限界を迎えたクルガンオオトカゲから倒れていく。


 三十分戦って、ヒューゴとエマが交代する。突進さえしなければ、正面先頭でエマはクルガンオオトカゲを相手に戦うことは出来た。


 ドミニクは弓矢を打ち尽くすと、クルガンオオトカゲに刺さった弓矢を回収して、毒を塗って木の上からバラバラ放っていく。


 リーズは消耗を避けるため、常時肉体強化の術式をかけるのではなく、戻ってきたヒューゴとエマの傷の治癒にその力を使い続けた。


 宗弥は何をしたか。


「クルガンオオトカゲって食べられたっけ?」


「なんだよ、藪から棒に」


 エマがリーズの治癒術式を受けながら答えた。


「食えるよ。火を通せば血は解毒するし」


「あ、それなら、ドミニクさん、調理器具とか一式持っていませんかね?」


「ありますよー。調味料も多少は」


 ドミニクが一度使った弓矢にペタペタと毒を塗りながら答えた。


「ちょっと借りれます?」


「いいけどー」


 宗弥は飯を作った。


 エマにお願いして、肉を剥ぎ取って貰い。


 塩で下味を付けて、香辛料とニンニクにをドミニクが持っていたので多めの油に通して、香りを出す。そのあとクルガンオオトカゲの肉をじっくり油で煮るように火を入れていく。鉄のクシを通して唇に当てて火が通ってることを確認してから鍋からあげる。


 適当に切り分けて、トッピングにドクケシソウを添えて昼食に出そうと思っていたパンと一緒に振る舞った。


 味は好評のようだった。


 飯を作ったあとやることがなくなってしまったのでひたすらドクケシソウを戻ってきたみんなに配った。


 日が暮れたころ、あたりのクルガンオオトカゲは全て倒れたようだった。


「終わった、のか?」


「終わったみたいだ」


 辺りいっぱいにクルガンオオトカゲのピンク色の死体が転がっていた。森の大地にあたるところがピンクで埋め尽くされるほどに。


 クルガンオオトカゲの鳴き声も何一つ聞こえなくなり、あたりは静寂に包まれた。


 いないと分かると、ヒューゴ以外の全員がその場にへたり込んだ。


「長かった。ひさしぶりに弓矢以外を使ったよ……」


「情けないですね、鍛え方がたりませんよ?」


 ヒューゴが言った。


「お前は黙ってろ体力バカ! 終わったし、巣穴ふさいで帰ろうぜ」


「そうですね」


 そうして、馬車の中に積み込んであった爆薬を仕掛けて、爆発させた。轟音を立てて洞窟は崩落し、穴はふさがった。全てが終わった頃には月が煌々と森を照らしていた。


「まさか、あのドクケシソウが一番役に立つとはな」


「そうですね、確かにあれのおかげで何とかなったようなものですね」


 エマにリーズが同意した。


「数十分おきに感染する毒と、微量の体力回復。これだけの長期戦であれがなければ全滅していたかもしれませんね」


「ね! 役に立ったでしょ! ね?」


 ヒューゴがはしゃぎながら言った。


「ぐ、確かに今回はお前が正しかったのは認めるよ……」


「今後は隊の装備として、ドクケシソウをたくさんというのを進言します!」


「あ、それはダメ。どう考えても費用対効果が悪すぎるし、足も早いからダメだよ」


「ぬぅぅん」


 宗弥はドクケシソウについての効果も調べていた。およそ摘んでから二週間ぐらいが効果期限で販売されるまでに三日程度かかり、持っておけるのは十日が精々。使うか使わないか分からないものにお金は出せないというのが宗弥の考え方だった。


「濃縮液なら日持ちもするのでそちらで検討しましょう」


「っしゃあ!」


 ヒューゴが喜びをあらわにガッツポーズを作る。


「そんなにドクケシソウに思い入れがあったのか……」


「帰ろう。帰って報告をして金を貰おう。飯を食おう」


 無言で全員が頷いた。


 クルガンオオトカゲの死体はそのままに、馬車にのって町へと帰還する。


 馬の御者をやってくれたヒューゴ以外の面々は馬車の中でぐったりと横たわっていた。



 * * *


「はい、では、これが今回の報酬分です」


 クエスト達成にあたっての報酬引き換えを交換所で貰った。そこに入っていた報酬は通常通りのCランククエストを達成した時の約束通りの報酬だった。


 メガネをかけた真ん中わけの男は泣きもせず、笑いもせず報酬を差し出した。


「え、こんだけやってCランククエストの報酬だけって舐めてんですか?」


「ええ、ですから、今回討伐したのはクルガンオオトカゲだけでしたので、約束通りの金額です」


「百体倒しても、二百体倒しても同じだって言うんですか?」


「ええ、同じです」


「規模からして間違いなくAランククエストの基準をクリアすると思えますが、格上げは無しですか?」


「はい、その通りです」


 どう考えても、群れを二つか三つ分ぐらい潰したはずなのだが、それを報酬部のこのクソメガネどのは認めてくれないらしい。


「じゃあ、このCランククエストの報酬は結構ですので現物交換でお願いします」


「はあ、現物交換ですか?」


 クソメガネ報酬部の目の奥に明らかな嘲笑を見て取れた。


 現物支給にした場合、クルガンオオトカゲはせいぜい三百ガルドだ。三体か倒して穴を塞いで一〇〇〇ガルド手に入るものをわざわざ格下げして、報酬を安い方を選んだと思ったのだろう。もともとの報酬額の半額にするという話をしているのだから。


「数がかなりありますので、明日一緒に同行して一緒に数えてもらえますか?」


「いいでしょう。きちんとその約束で報酬を手渡しましょう」


「なら、この契約書に追記していただけますか? 『伊達宗弥の希望により、現物交換に報酬を変更する』と、報酬部の承認印もいただけますね」


「ええ、喜んで」


 と、クソメガネ報酬部は判を押した。


 翌日メガネの報酬部はおびただしい数のクルガンオオトカゲの死体を前に顔面蒼白になった。


「ま、待ってくれ、これではAランク以上ではありませんか!」


「いや、おとなしくAランククエスト扱いしてくれたなら、僕もそれで良かったんですけどね。残念ですね」


 ざまあみろとほくそ笑みながら、楽しく数を数えて結果として三万六千ガルドに変えた。百二十体結果として倒していたのだった。


 その日の夜に、みんなを集めて派手に飲み食いすることが出来た。


「宗弥、なんかあんまり楽しそうじゃないな」


「なんかね、どこ行ってもスッキリ解決しなくてここにくる前のこと思い出してた」


 間違いなくハッピーエンドなのだが、なんだかもやっとする一山がある。


 ここにくる前のいつもの出来事だった。


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