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異世界転生しても社畜なので辛い  作者: あぶてにうす
1話 異世界転生しても結局働き詰めで死ぬ
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追加クエスト

 宗弥は一つの絶望の形を見たような気がした。


 まともにあれが全て押し寄せてきたとするならば、小国一つ滅ぼすということは不可能では無いように思えた。


「来ちゃったね」


 と、宗弥


「来ちゃったな」


 と、エマ。


「ど、どういうことなんだよこれ! 説明しろよ! だましたのかよ!」


 ドミニクが喚いた。


「い、いや、僕は嘘はついていない。このクエストはCランククエストで群れが移動をする前に先遣隊であるクルガンオオトカゲを討伐して巣穴を埋めるのが僕が依頼されたクエストだ」


 だった。と過去形にすべきだろうと思った。


 放っておけば、群れとなるクルガンオオトカゲが巣穴に移住し、ここからかなり厄介な害獣の群れとなる。群となったオオトカゲを殲滅しろという内容ならばこのクエストの難易度はAランクないし、Bランク相当になる。


「群れが来る前だから、この程度の報酬だったんだけど……。来ちゃったからな」


 群れになるのを待っている紹介者とパーティーもいるがこの場合は巣穴の前から仕掛けて出てきたところを叩いて確実に殺すというやり方になる。ここで洞窟を背負って、群れを殲滅するというのは上位クエストになった時よりも難易度が上がる。


「もうだめだ、おれは下りる!


「下りるって、逃げ場がそもそも無いだろ」


「そ、そうだけどおれこんな正面から大群を相手にしてなんて、経験ないんだよぉ!」


 ドミニクがパニックに陥って崩れ落ちた。


「ドミニクさん」


「はい?」


「私は慣れていますので、ご安心下さい」


 ヒューゴが笑顔でドミニクに手を差し出した。


「慣れているってあんた……」


「あの程度の信念もない有象無象など、私一人で受け止めて見せますよ」


 さらりとヒューゴが言ってのけた。


 敵は空を覆い尽くさんばかりのクルガンオオトカゲで、数体で村を襲えば家屋を鉄頭で砕きながら滅ぼしていく最もやっかいとされる害獣だ。その群の突撃をヒューゴは簡単だと言ってのけた。


 宗弥を含め、全員が愕然とした。


「言われてみればそうなんだけど、実際それしかアイディアが無いな。受け止めることが出来るのはヒューゴだけだ。リーズは、ヒューゴのサポートをお願い。ドミニクはあたしの指示で動け、宗弥は邪魔にならないところでそのドクケシソウを抱えてろ」


「はい……」


 宗弥に確かに役割は無かったのだった。


「リーズ、あんたはどうだ? ビビってないか?」


「わたくしはいつもサポートする事が出来ませんから、命運は皆様に預けます。もし仮にこの場で死ぬことがあったとしても、後悔をするような生き方はしておりませんので」


 後悔するような死に方をすると、もっと大変な目に遭うからいい心がけだなぁと宗弥は思った。


 降り立つクルガンオオトカゲの群れ。翅が次々に折れて地面に落ちていく。移動する時のみ生える翅なのだろう。


「行くぞ」


 ヒューゴを先頭に、リーズ、大量のドクケシソウが入った籠を抱えた宗弥。リーズの左右にドミニクとエマが並ぶ。


 クルガンオオトカゲたちは洞穴の前に自分たちがいることに気がついたようで、途端に匂いが変わった。


「ヒューゴ、名乗れ。ここが使い時だ」


「いいんですか!」


 目を輝かせて答えた。


「いいからやれ」


 ヒューゴは更に一歩前に踏み出し、ハンマーで盾を殴りつけドラのような大きな音を叩き出す。


「我こそは! フェレイル家五男、ヒューゴ・フェレイルなり! 信念もなきクルガンオオトカゲ共よ! 尋常に私と勝負をしろ!」


 一挙にクルガンオオトカゲの殺気がヒューゴへと集まっていくのが、宗弥の素人目にもわかった。


「では、リーズさん。私はここから一歩も動くつもりはありませんので、それに見合った術式を」


「では、エウバの章から、大地を支えし巨人の顕現でどうでしょうか」


「うってつけですね、お願いします」


「分かりました」


 リーズが詠唱を始める。


 クルガンオオトカゲが突進を始め、ヒューゴが構えた。


「ねえ、いま言ってたのって何?」


 気になってエマに聞いた。


「うっせぇ黙ってろ。単純に、術式を掛けられた人間の、重さと踏ん張りを強化するものだと思っとけ」


「はい……」


「巨人よ顕現しその身に宿れ!」


 リーズの術式が完成し、ヒューゴに付与される。


「城門よ、閉じよ!」


 ヒューゴの盾魔法、個人の力を盾を媒介として広げ力の顕現となす魔法。赤くもやのような城門がヒューゴの盾を中心に閉じた。


 門へと突っ込んでくるクルガンオオトカゲ達。


 だが、ヒューゴはその場から一歩も動くことなく、群れ達を受け止めた。


 ヒューゴの盾の前に折り重なるようにクルガンオオトカゲが積上がっていく。


 豪雨のような突撃だったが、ヒューゴは全く動じることなくすべてを受け止めきった。


「ね? 簡単でしょう?」


 ヒューゴが盾を前に押し込むと、クルガンオオトカゲの群れが吹き飛んだ。


「分かった。出るぞドミニク」


「ああ」


 エマとドミニクが左翼と右翼から抜ける。


 エマは押し返されて怯んでいるクルガンオオトカゲの首すじめがけて槍を突き込む。


 一方でドミニクは同じポイントをめがけて弓を射る。


 それぞれで二、三体に同じことをして倒した段階で、ヒューゴの後ろへと下がった。


 クルガンオオトカゲがまた押し寄せてくる。けれども、盾に阻まれて前に進みことができない。


「数が多すぎるな」


「同感ですね。このままでは日が暮れてしまいます」


「でも、どうすれば良いんだ?」


 降り立ったクルガンオオトカゲは群体で一体何体いるのか、数えるのが億劫なほどに数がいた。


「ヒューゴ、あんた、アースクエイクは使えるか?」


「使えますが、どうしました」


「アンタすげえなやっぱり。五秒後にアースクエイクを全力で打ち込んでくれ。直前に、あたしとドミニクが跳ぶ。それで投げられるものだいたい投げ尽くして数を減らす」


「分かりました。やりましょう」


「よくわからないけど、跳べばいいんだな!」


 ドミニクが答えた。


「じゃあ、カウント行くぞ」


 エマがカウントを始める四、と数えた時にエマとドミニクが高く飛んだ。


 ヒューゴが盾に群がっていたクルガンオオトカゲを吹き飛ばす。


 五、のカウント、ヒューゴが盾を大きく振りかぶった。


「我が盾によりて、全ての地面に立つものは私一人のみ。アースクエイク!」 


 打ち付けられる盾、甲高い音があたり一面に響き渡り、その場の空気が停止したかのようだった。


 地面の底から何かが沸き上がるような音が聞こえてきた。


 突き上げられたかのように、地面が揺れた。


「キャッ」


「おっぶ」


 ヒューゴ以外の全員が、文字通りひっくり返った。


 進んできていたクルガンオオトカゲはもちろん、リーズも、宗弥もすっころんだ。


「やっば、ナニアレ、ナニアレ!」


「ビックリすんのはあとだ、ひっくり返ってるうちにありったけの弓を撃て。一発一発で仕留めるつもりで行け」


「了解」


 エマは左右に三本ずつ投げナイフを取ると、一斉に投げつける。


 ドミニクはドミニクで五本の弓を一斉につがえて撃ちまくる。


 目にも止まらぬ速さで投げまくる、撃ちまくる二人。


 雨嵐のようにエマのナイフとドミニクの矢が降り注いだ。


 二人の着地、宗弥とリーズは立ち上がったが、刃と矢の降り注いだクルガンオオトカゲ達は起き上がっては来なかった。


「お見事です」


「敵はまだいる、つーか増えてないか?」


「あ、あんまり言わない方がいいかなって思ったけど、さっきからどんどん空から来てますね」


 ちょうどエマ達が空中からいろいろ投げまくってたころ、空からまた別のクルガンオオトカゲがやってきていた。


「覚悟を決めましょう。皆さん。ここを生き抜いてこそですよ!」


 先頭に立つヒューゴが言った。


「覚悟決めるのは良いが、クルガンオオトカゲには体液、体臭に微量の毒が含まれてる。もう一回当たる前にヒューゴが持ってきたドクケシソウをとりあえず食っとけ」


「捨てろって言わなかったのこういうことだったのね……」


 宗弥はそう言いながら、かごいっぱいのドクケシソウをみんなに配った。


 宗弥を含め全員がその場で食べ始めた。味は苦味はえぐみがなく、爽やかな香りがした。確かに食材として使われることが多そうな味わいだ。大葉とかよく似ていると思った。


「三十分ごとに一束食え。こっから先は持久戦だしぶとく行くぞ」


 どこを見ても、クルガンオオトカゲたちがまだいる。


 空からはまだ翅の生えたクルガンオオトカゲたちがやってくる。うんざりしそうな状況のなか、全員が覚悟を決めたように見えた。


 屍を超えてまたも突進。それをヒューゴがまた受け止めた。


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