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転生、だけど労働  作者: あぶてにうす
異世界転生者、訳あって社長になる。
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異世界転生者、家に帰る

 伊達宗弥が再び目を覚ましたのは、駅のホームだった。


 時刻は午前1時辺りには宗弥と同じように顔色の悪い奴と、逆に顔をまっかにしてふらふら歩いている酔っ払いしかいなかった。


 宗弥は辺りを見渡して、自分の手をじっと眺めると、何もかもがむなしくなって力が抜けてその場に座り込んだ。


 宗弥は生き返ることが出来たようだった。勇者として、力を尽くし、魔王として戦いを終わらせた。その結果当初の目的であった復活という結末にたどり着くことが出来たのだった。


 宗弥は顔を覆い、何も見ないようにした。


 涙が流れるかと思えばそんなことはなかった。


 自分は死にたかったのだということを突き付けられた。


 何かを成し遂げ、誰かに惜しまれながらかっこよく死にたかったのだ。死んでなお、看取るものも誰もいないこの世界で生きていけというのはあまりにも酷いということを思うのだった。


 死の間際、自分はとても幸せだったのだ。


 あそこで死なせてくれれば意味のない自分の人生というものに、意味を見出して喜んで死んでいけるはずだったのに。生きろというのだ。そんな残酷なことはない。


 再び目を開けた。


 もうすぐ電車がやってくる。自分はこのゲートを上って電車に轢かれて死んだのだったが死ぬ気も起きなかった。


 この程度の事で死んでしまうなどバカバカしい。意味などないが、意味なく終わらせることが馬鹿げているということを理解できる程度には成長が出来ていたらしい。


「あほくせー」


 心の底から出た、ぼやくような叫びだった。


 またもや、何もかもを失ってしまった。


 宗弥はこの段階で疲れ切っていたが、判断は出来た。会社は辞める。何を言われようが辞めるということ。


 休む。何もしないをする。はちみつばかり追いかけている黄色い熊みたいな怠惰な生活を送る。まずはそれで良いだろう。


 この世界に信頼できる仲間も家族もいないけれども健康でありさえすれば、なんとかなるのだろう。と言い聞かせるが、心の中は虚無感でいっぱいで、生きる意志さえあっという間に溶けてなくなりそうだった。


 上長に連絡を……と思ったが、業務用のスマートフォンはガストンにあげちゃったことを思い出し代わりに虹色の貝殻が出てきた。がんばれって言われたような気がした。


「ガストン、ありがとう。君にまた救われた」


 貝殻を強く握りしめると、ポケットの中にまたしまった。消えた思った生きる意志が小さな炎として灯った。


 とりあえず家に帰る気もしなかったので、とりあえず最終電車に乗って隣町の歓楽街で電車を降りた。


 なんとなく、とんこつラーメンを食べて腹ごなしをし、一人で居酒屋に入ってはだれと話すこともなく粛々と酒を飲んで酩酊していった。


 なんでこんな世界でまた生きていかなければならないのだろうという思いは、心の底から沸き上がり酩酊をしては甘いドブにおぼれていくような感じがした。


 居酒屋でひとしきり飲んでから、キャッチに導かれるままにキャバクラらしきところに行った。


 女の子が頑張っていろいろ話してくれたが、宗弥の心は何も晴れず、酒を飲んで会話をしてみたがただの自傷行為に過ぎなかった。


 あまり楽しい気持ちにもなれずに会計内容も大して見ないでカードを切って、また意識を失った。


 気が付けばカプセルホテルのベッドで目を覚ました。めちゃくちゃ気持ち悪くなっていたが吐くほどでは無かった。時刻は午前十時を指していたが、もう何もしらねぇという気持ちになった。


 とりあえずサウナ行くかという気持ちになり、サウナに入って疲れを癒していった。


 カプセルホテルをチェックアウトするころには昼を回っていた。


 そういえばパソコンがあったから体調が悪すぎて会社を休むことと業務用スマホを川に落としたとメールを送った。メールでいろいろ書かれていたがすべて無視した。


 そろそろ家に帰ろう。今現在の自分と向き合おう。すべてはそれからだ。


 昼の空いた電車に乗り込み、最寄り駅で降りて家路に向かった。


 マンションにたどり着くころには午後三時を過ぎていた。


 カギは何故か開いていた。中に入ると、人がいた。


 その少女の金髪は燃えるように輝いていて、年相応の背丈、西日に照らされた横顔は彫像のように整っていた。何故だか、近くの高校の制服を身に纏っていた。


「おう、おかえりー。部屋汚かったから勝手に掃除したぜ?」


「エマ?!」


 見まがおうことなんかなかった。エマ・バレーは異世界での冒険での一番の相棒だったのだから。


「何でいるの?」


「え、何か魔王を討伐した報酬に元の世界に帰るか、こっちの世界に来るかどっちか選べてなんかエロい女神に言われてこっちに来た。安心しろ、コセキとか、身分とか、いろいろやってくれたからなんとかなっているぞ! めちゃくちゃ嫌がれたけど」


 あっけらかんとしたいつもの調子で、エマは言ってのけた。お前、実家とかもろもろどうした。


「何でぇ! エマは帰ってみんなに話してって言ったのになんで!」


「んなの、別にみんなにまかしときゃ良いじゃん」


「良いじゃんって、結構大事な役割を任せたはずだけど……」


「大丈夫だって。どうせドミニク辺りは何となく気が付いている節があったしリーズもヒューゴもいるんだろ? 問題ないさ」


「まあ、それは……確かに」


 他にもクリードもいればガストンもいるし、残してきた勇者たちがきちんと意思を伝えてくれるはずだとは思うが、念には念を入れたかった。


「っていうかさ、あたしは一個だけ気に入らないことがあって、宗弥はみんなの事を助けたけど、宗弥は誰が助けるんだよ」


「それは……」


 と言いよどんだ。最後に忠告された通り自分の幸せや救済といったことは勘定に入っていない。赤字を切るのならば、自分の腹を切ればいいと思い続けていたからだ。


 それはガストンにも言われていた。ガストンがくれたお守りというのは、ガストンの願いなのだろう。


「宗弥を助けに来た。最初みたいに二人で頑張ろうぜ」


 エマは手を差し出した。


 世界が再び彩りを得たようだった。きっと生きていけるという確信を得ることが出来た。


「頑張ろうって、さすがにそれはかっこよすぎませんか?」


 そう返事をして、エマの手を取ったのだった。


「そうだろ?」


 エマは太陽のように笑って答えたのだった。

ひとまずこれにて完結です。

ここまで読んでくれて本当にありがとうございました。

連載初期の6年前から追っかけてた人いたら、報告いただけると助かると共に本当に申し訳なかったと思っています。(書くの遅すぎ)

これから見直しながら、ちょっとずつ誤字脱字を直していこうとおもっているのでお気づきの点があればご指摘いただけますと助かります。

どっかでおまけエピソード(女子高生拾ってくるはなしじゃないですけど、エマと宗弥のその後のはなしとか)書くことはあるかもしれないです。ネタバレ含んだあれこれと、あとがきめいたものはどっかで書こうと思っています。


感想とか書いてくれたらうれしいなぁ

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