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異世界転生しても社畜なので辛い  作者: あぶてにうす
1話 異世界転生しても結局働き詰めで死ぬ
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バカにつけるなんちゃらはねえ

 三日後、クラリッサと一緒に来た喫茶店でエマと二人で奥の個室でこれからクラリッサとヒューゴの到着を待っていた。


「なあ、あたしも一通りの経歴は確認したが、公国騎士団の百人長って結構大したもんだけど、それを手放すって嫌な予感しかしないんだが」


「頭とケツは決まってるんだから、受け入れるしかないよ」


「分かった。だめでもなんとかする」


「助かるよ」


「お待たせしました」


 クラリッサが個室に現れた。宗弥は即座に立ち上がって、礼をした。


「お待ちしておりました」


「入って」


 中に入ってきた男は、かなり背の高い男だった。短く刈り込まれた輝く金髪に、サファイアのような瞳。鼻はピンと高く、物語の王子様みたいな顔をしていた。だが、きちんと鍛えられているの首から肩にかけての形や厚い胸板が均整はとれていながらもよく鍛えられているのは宗弥が見ても明らかだった。


 真新しい皮の鎧と、剣を身にまとっており、皮の質感は頑丈そうで裁縫もきちんとしていそうだった。最近買ったもので、前職で貯めたお金で買ったのだろう。


「はじめまして! ヒューゴ・フェレイルです!」


 耳をつんざくほどの大声だった。


「こちらが例の方、ヒューゴさん」


「かつての仲間からはヒューゴと呼ばれていました! この度ご紹介いただけたからには全力で仕事に取り組ませていただきます!」


 またまた大声。クラリッサの耳元をよく見ると耳栓をしていた。真横でしゃべられると尋常ではなくうるさいのだろうし、ずっとこの調子でしゃべり続けるのだろう。


「専属契約書がこちらになりますので、確認の上サインを下さい」


 クラリッサが契約書を宗弥に見せた。宗弥は確認をすると、サインをした。


「では、私はこれで失礼します」


 契約書を受け取ると、クラリッサはそそくさとその場を立ち去った。


「では、おかけください」


「はい! ありがとうございます!」


 いちいち声が大きい。


「早速ですが、Cランクの優先順位低めのクエストを二人に受けてもらってもいいですか?」


「は! 光栄でございます!」


「おいちょっと待てよ、こいつのことなーんも知らないのに、ぶっつけでやるってのかソーヤ」


 エマが早速噛み付いた。


「そうだよ。実戦で出してみなければ分からないじゃないか。ヒューゴさん、装備はそれで全部か? もし取り行くなら三十分後にギルドの前まで来て欲しい」


「はい、わかりました! それでは早速行って来ます!」


 そうしてヒューゴは個室から出て行った。


 静かになったところにはエマと、宗弥が残った。


「おい、こんなんで良いのかよ、もっと色々聞くこととかあるだろ?」


「無いよ。さっきも言った通り、誰かを入れて参加人数三名以上のクエストに参加する。クリスちゃんは手放すことを決めているし、彼も何かを疑っている節も無い。話すことが無いならさっさと本番で効果検証しよう。Cと言っても害獣討伐に毛が生えた程度のものですよ? それにだ」


「なんだ」


「お金ないんだから、ここで頼むものは最低限にすべきでしょう?」


 テーブルの上に並んでいるのはエマの分のオラニエのジュースだけ。宗弥少し悩むといって店員を一度返した。ヒューゴもクラリッサもまだ注文はしていない。


 本来クラリッサがもう少し書類の説明をするだろうと思ったが、すんなり終わったし、契約内容も話したことがそのまま書いてあっただけだった。


「アンタ、割と迷い無くカッコ悪いことやるよな」


「僕はカフェを取るより、今日の分のパンが食べたいのだよ」


 宗弥とエマも部屋を出てお会計を済ませる。



 エマの準備も、宗弥の準備も済んでいたから、そのままギルド前にいってヒューゴを待った。


「おまたせしましたーーーーー!」


 遠くからヒューゴが走って来る。その背中には何故か巨大なかごを背負っており、何かの葉っぱが時折落ちていくのが見えた。


「すいません! 遅くなりました」


「別にいーんだけどよー、背中のそれ、何だ? ドクケシソウか?」


「そうですよ! ドクケシソウです! 冒険者必須のアイテムだって、お得だったようでこの町に来た日に買いました」


「いくらだった?」


「これだけはいって千ガルト!」


 エマの目から光が消えたように思えた。


「宗弥耳貸せ」


「なに?」


「あいつヤベーヨ」


「何が?」


「まず、あいつの装備だ。あれはこの町に入ってすぐのところにある武器屋の『新人冒険者入門セット』の中でも最も高くてタチ悪い奴だ。高くて豪奢な作りのわりに大して切れないし、防御力も高くない。あいつみたいな元々金持ってるやつからボルための装備だ」


「そうなのか、ずいぶん立派に見えたけど」


「極めつけはあのドクケシソウな。ドクケシソウというけど、毒ってかなり多様でドクケシソウで対応できる毒はあくまで軽度な毒までで、死に至るような猛毒には使えない。その代わりにちょっと回復する効果もある。正直御守りに十セットぐらい持ってるのがせいぜいだ」


「でもともといくらなの?」


「確かにあいつの言うとおりあの量であの金額なら普通に買うより安いんだけど、あれだけ量、多分三〇〇セットぐらいは普通卸値で取引するもんだし、半額か三〇〇ガルトが妥当な金額だよ。そこでもすんなりぼられてる」


「うーんなるほど、とりあえず今日の現場次第だな」


「いやな予感しかしないんだが」


「よろしくお願いします!」


 馬鹿でかい挨拶に不安を覚えながら、宗弥たちは準備を進めていった。


 宗弥が受けたクエストとは、ここから歩いて半日かかる洞窟に生息する大型害獣であるクルガンオオトカゲの討伐だった。異世界から出て来る魔獣ほどでは無いが、三匹もいれば非武装の村を滅ぼせるぐらいには凶悪だった。今回は根城になっている洞窟が発見されたので、そこにいるクルガンオオトカゲを討伐し、洞窟を埋めるまでがクエストだった。


 支給装備は洞窟を埋めるための爆薬のみ。輸送用に馬車が一つ貸し出される。ちなみに大体のクエストは成功すれば良いのだが、失敗すれば報酬は手に入らず、ただ、必要になった費用だけ支払うことになる。


 今回のクエストは持ち出しがあまり多くなくて済む。三人以上、十人未満の少人数パーティーで、爆薬は原価に含まれず、あくまで火薬と人員の運搬用の馬車を借りる代金くらいで済む。馬車はエマが操れるから御者を雇うお金はかからなかった。


 早速この城塞都市の入り口にある、馬車のレンタル業者を訪れた。


 宗弥は即座に今出せる中で最も安価な馬車を選んだ。エマと店員がものすごく嫌そうな顔をした。しかし、「金がない」の一言で一蹴する他選択肢が無かったのだった。


 それから、半日かけて馬車で移動し、洞窟の前までたどり着いた。


 森が開けた先の崖にぽっかりと穴が空いている。人が十人ぐらい一斉に突入出来るほどの大きさだった。


 確かにこの規模で見れば、十人以上入れても混乱するだけだし、逆に危険度が上がる。だから三人以上十人未満のパーティー指定なのだと思った。


「基本的に日中は眠っているらしいが、物音を立てるとすぐに起きてくるらしい」


「まあ、あたしたちみたいなのがこっそり入ったところで少ししたらすぐに起き出してくるんだけどな」


「巣穴の中にいるのは、まだ数匹と言われている」


「なら増える前に気合いいれてサクッと終わらせないとな」


「その通りだ。だから最初の何体かは気づかれないようにやろう」


「了解した」


 それからエマによる簡単な作戦説明が行われた。こっそりと潜入して一体倒す。倒された悲鳴で何体かが寄ってくるから、隠れて待って不意打ちで数体を倒す。最後は入り口におびき出して正面から叩く。


「最後、正面から叩くって、大丈夫なのか?」


「きっちり数を減らしておけば問題ないはずだ。今回のこの穴の規模から考えれば先遣されて、仮の巣作りを任されているだけで規模はそこまでじゃない」


「まあ、たしかにそうだな」


 宗弥はクルガンオオトカゲの討伐でもランクがBになることを知っている。それは、この現状が放置されあの洞穴に数十匹規模の群れが住み着くようになれば報酬とクエストランクは上がる。


 今このクエストを受けられているのは、前提としてちょうどCランク程度のクエストをうける紹介者が全員出払っていることと、群れになってから報酬が上がった段階で依頼を受けようと考えている紹介者がいてたまたま受ける人間がいなかったのだ。


「ヒューゴ、さっきから黙ってるけどあたしの言ってること分かったか?」


「ああ、大体理解した」


「よし、細かいことはあたしが指示するからきちんと従え。あたしが何も言わなければ何もするな」


「はい!」


 やたらと大きい返事にエマは顔をしかめた。


「なら早速行くぞ、装備らしい装備も特に無いが……そのドクケシソウは置いていっても良いんじゃないか?」


 ヒューゴは変わらず、大量のドクケシソウが入った籠を背負っていた。害獣討伐にも関わらず、農作業に来た感じがすごい。


「いえ、皆さんに何かあったときのために持参します! クルガンオオトカゲに噛みつかれると多少なりとも毒はありますし、長期戦となった際、体力回復にも有効でしょう!」


「……確かにそうだな」


 エマの瞳から輝きが消えて、引きつった笑みを浮かべた。


「じゃあ行くか、宗弥はそこで待っていろ三時間帰って来ないなら救援を呼んでほしい」


「分かった」


 宗弥は、エマたちから離れ、ヒューゴとエマは洞窟へと入っていく。ヒューゴが駆け足気味に入ると突然立ち止まった。




「我こそは! フェレイル家4男、ヒューゴ・フェレイルなり! おお、この洞穴に潜みしクルガンオオトカゲよ! 尋常に私と勝負をしろ!」




 あたり一面に響き渡る声だった。洞穴から離れつつあった、宗弥の鼓膜をぶち壊しそうな勢いだった。


 鳥が遠くで羽ばたいて行った。たまたまでは無い、ヒューゴの声がうるさすぎるのだ。


「うっそだろお前!」


 そう言って、エマは洞穴に背を向けて脱兎だっとのように宗弥のところまで走ってきた。


 洞穴の中から地鳴りのような音が聞こえてくる。


「ヒューゴ、バカ、お前もさっさと逃げろ!」


「それはなりませんエマ。騎士たるもの敵に背を向けるわけにはいかないのです。例え、この身が砕けようとも許されない!」


「お前騎士辞めて冒険者になったんじゃねーのかよ!」


「あ、それもそうでしたね」


 ヒューゴがエマたち一行を振り返った瞬間、穴から飛び出してきたクルガンオオトカゲに跳ね飛ばされていた。


 きりもみ回転をしながら、ヒューゴは遠くに吹き飛ばされていった。


 穴から出てきたクルガンオオトカゲ達は周りをしばらくあたりを見渡したがエマ達や吹き飛ばしたヒューゴに気がついた様子はなくそのまま穴の中へと帰って行った。


「撤収だ」


 エマはあきれきった様子で失敗を宣言した。


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[気になる点] 五男とあるけど他では4男となっている どっちですか?
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