最終決戦ーかつての勇者と一騎打ち(卓球でな)
白い部屋には終わりは見えず、地面はあるが大きさの概念は無かった。
部屋の終わりは見えず、どこまでも高さはあるようだった。
ヨシュアはいきなり斬りかかって来た。
斬撃の速さは遠くから見たことはあっても近くで見たことはない。とても適切に受けることなんてできずに、ただ、防衛本能から手を出した。
宗弥の手の先から光の壁のようなものが現れて、ヨシュアの剣は弾かれた。
ヨシュアが連続して剣を振るって怖くなってガードみたいな形をしていたら、剣が光の形に阻まれて弾かれる。
ひょっとしてと思いながら、手刀を作り振るってみる。
思った通りに光の刃が手の先に発生し、ヨシュアに防御をさせることが出来た。
ヨシュアがためらいなく反撃を繰り返してくる。宗弥は自分の前に光の壁を何重にも出して防ぎ切った。
ヨシュアは距離を取って攻撃を止める。
「あんた、もう気が付いているな」
「ここが思ったことがそのまんま実現する空間ってことにか?」
少し想像をしただけで、この空間では簡単に実現することが出来る。
この世界にやって来た時に全くできなかった手のひらに炎を出すとか、試しにやってみるけど簡単に出来てしまった。チート能力解放である。
「そうだ。これは俺たち側が勇者に一対一の空間に閉じ込め決着がつくまで戦い続けるというものだ」
「なるほどね、本来困難を乗り越えた勇者の方が大体力が強いケースが多いから、打ち倒される魔王側の力不足を補い数的な優位も無くす。そういう空間なんだろうね」
「……その通りだ」
ヨシュアが同意した。
ヨシュアとナイアだが、ナイアからすれば何とかパーティの一人を懐柔して憑りついて最終決戦まで持ち込んだものの恐らく正面切って勝つのはかなり厳しかったのでこの空間に誘い込んだのだろう。
「なるほど、力の優位を無くすものだけど、僕にとっては立場が逆で力の面では追い付かれるけどそれを補って余りあるメリットがあったわけなんだ」
ヨシュアは返事こそしなかったが答えは合っていたみたいだ。
結局エマや宗弥をその場で倒しても残った三人を一斉に相手にすれば、そちらの方が分が悪い。だからこそ、ハンデを埋めても一対一での決着にこだわったのだ。追い込まれていると煽ったけど、追い込まれているのは事実のようだった。
「決着の仕方ってのは、どちらかが参ったと思うまで続けるってところかな?」
「その通りだ、伊達宗弥よ決着がつくまで俺と戦い続けろ!」
「はい、わかったというのは答えることは簡単だけど力が同じだけある、戦いの未経験者と戦うってのは君にとっても怖い事なんじゃないか?」
「御託は結構だ。行くぞ」
「待て、待て待て待て待て」
迫ってくるヨシュアを前に手を出して、落ち着けというジェスチャーをする。
「なんだ。まどろっこしい」
「いや、あのね。初心者ってのは戦いのセオリーも分からずに何をやってくるか分からない訳だ。ここは思ったことが思った通りになるところだろう? それなら余計に何をやってくるか分からないじゃないか。さらに言えば参ったと思うまで戦いは終わらない。君は本当に絶対に勝てるつもりでいるのかい?」
「勝てる! 勝てるつもりでいるからこの戦いに引きずり込んだ!」
「いや、僕の提案はもっと簡単にケリがつく方法があると思うんだけどどうかな?」
「なんだと」
「スポーツ、スポーツというのはどうかな? 既定の点数やセットを取れば決着をする。ゲームの負けというのを分かり易いし、必ず決着をする。分かり易いだろう」
「言っていることは理解できる、しかしこちらにメリットが無いではないか」
「バカ言え、終わりのない泥沼の戦いをしてどっちが勝つか負けるかなんてリスクのあることをしなくて良いんだぞ。今のままじゃどうなるのか分からない勝負が勝敗がはっきりつくんだぞ? これってすごくない?」
格闘技の試合なんかは、参ったをしない限りは規定時間が経過した後「どっちが強そうだったか」という基準で判定される。ただ、一般的なスポーツであればルールの上でどちらかが参ったをするでもなく、特定の点数を取れば勝ち負けがきまり引き分けという概念を無くすことが出来る。スポーツは偉大だ。
「それは確かにそうだが……」
「でしょ? 1対1で出来る球技が良いと思うんだ。……具体的には卓球とか。ほら、君も元は現代人なんだから、卓球ぐらい大体ルールは分かるでしょ」
卓球。
宗弥が唯一出来る球技であった。そこそこ腕に覚えがあり、素人相手ならなんとか勝てそうな気がする競技だった。
「なぜ、卓球なんだ。ひょっとして、現代で経験をしているのではないか?」
「ん、ひ? ……え、あ何のことでしょうか?」
秒で看過された。
人生ってうまくいかないねと思った。
「まあ、良いだろう。ここは思ったことが現実になる世界。現代での経験など些末な事だろう」
「……。おーけいではルールを定義しよう。まずは卓球台と、ラケットと、ボールをここに出そう」
卓球台とラケットとボールが出現する。ご丁寧にそれぞれメーカー名まで刻印されている。ラケットはシェイクハンドのものが二本現れ、それぞれ手に取った。
「まず、このコートとボールと卓球台に関しては何があっても壊れない。これは確定事項だ」
「分かった」
それから、宗弥はヨシュアに卓球のルールを教えていった。
11点制で3ゲーム先取で決着。1ゲームごとにサイドを変える。
10―10になったら、2点差が付くまでゲームは続く。などなど。普通のルールについてはヨシュアは知っていたのでこの辺りの話をした。
「では、始めようか……」
「そうですね」
宗弥とヨシュアがコートについて、決戦が行われることになった。
卓球によって。




