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戦いの前

 試合当日。


 宗弥達は試合会場であるコロシアムに向かっていた。


 途中でばったりと、ナイアもといエルヴィンとその他トウタなどを含めた関係者と出会った。こちらはたかだか数人だが、相手方は数十人と引き連れている。恐らくドラゴンハント組合の人たちや分家の人たちもつれているのだろうと宗弥は推測した。


 そのまま道を譲ってすれ違うのかと思いきや、まっすぐ衝突コースで進んでいきお互いに立ち止まった。


「エマ、そこを退け」


 トウタがエマの前に立ちはだかると言った。


「うるせぇ、てめぇが退け、カスボケ、くそ、腋臭、親父が」


「え、中二? そういえば中二だったか……」


 エマの投げかけるボキャブラリーの乏しさに、反抗期の子供を連想したが、実際こいつは14歳だし、学年で言えば中二だった。


「貴様のような娘が、なぜマルケス父様が高く買われていたのか理解できない。私としてはすぐさま家の中に閉じ込めて二度とこの世に出てこれないようにしてやるつもりでいたのだがな。この大会で真の後継者が決まることで私の思う通りになることだろう」


 隣に立っていたエルヴィンは何も言わずにただその場に立ってほほ笑んでいた。


「好きに言ってろよ。今日の勝負はあたしが勝つ。これは確定だ。あたしが勝ったら何をしてくれるって言うんだ。それだけは聞いてないよな?」


「ほう、勝てる気でいるとはな。よかろう、勝てるのなら何もかもお前の好きにするが良い。もっとも勝てるのならな」


 と、トウタは哄笑する。つられてまわりの数十人といるとりまきも笑い出した。


「オーケー、そこまで聞けたなら十分だ。試合で分からせてやるよ」


 エマはそこまで聞くと、トウタ達を避けるように歩き始める。


 道を譲らない道理がなくなったのだろう。あっさりしたものだった。


「あの……、伊達宗弥……様でしょうか?」


 声をかけてきたのは初老の男だった。


「ああ、ハイデガーさん! その節はどうも!」


 宗弥は即座に近寄ると両手を握って握手をした。当のハイデガーは当惑している様子だった。


 ハイデガーにはファブニール討伐の折に情報収集にあたって協力をしてもらった経緯がある。実家に行った際にご挨拶をしたかったが、あまりにも屋敷の雰囲気が剣呑で宗弥一人で乗り込んで挨拶をするということも出来ずにいた。


 ぎょろっと辺りの目が向くのを宗弥は感じた。恐らくハイデガーに関してもまあまあ勇気を出して声をかけたのだろう。


「ごめん、エマちょっと先にいっててくれないか? ファヴニールの時の個人的なお礼とご挨拶がまだ出来てなかったんだ。ちょっと場所を変える」


「ああ、勝手にしろ」


「という訳で少しだけお時間よろしいですかね?」


「ええ、まあ……そういうのなら。私からもお伝えしたいことがありますので……」


 などとやり取りをしながら、すれ違う自陣営とバレー家陣営を見送ってから、ギルドの応接間にハイデガーを連れてきた。ここなら何かを聞かれる心配もない。


「ハイデガーさん、ファヴニール討伐の折情報提供ありがとうございました。本来であれば直接赴いてお礼を申し上げるべきだったのですが、伸びてしまってここまで引きずってしまい申し訳ありません」


「いえ、こちらこそ。我々バレー家が最も名をあげたことは最初のファヴニール討伐でした。それ以来、歴史のはざまはざまで現れるファヴニールに歴代の当主様たちは携わってきておりました……。なので、跡目というのであればエマ様はファヴニールの討伐を果たした時点で誰も文句は言えないのですが……どうしてなのでしょうトウタ様はより一層嫉妬に狂い、エルヴィン様がある日を境にとてつもなく強くなられて今回のことを考えらたようなのです」


「そう……なんですね」


 何らかの形でトウタを扇動していたのだろうけれども、エルヴィンに憑りついてとてつもなく強い姿になったのはつい最近だ。


 ナイアの話は知ってもらってもいいかもしれないが、ハイデガーに無駄にリスクが乗るので黙っていた方が得策だろう。


「お嬢様が何をしたというのですか、あれだけ才気に溢れた若者を……トウタ様は狂っております」


「必ずしもトウタさんに賛同するものが全員ということではないということが分かっただけ良かったです。エマは勝ちますよ。歴代最強の名前をほしいままに手に入れて、文句なしに次代当主を襲名しますよ」

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