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無限スパーリング

「ぐっがぁぁぁぁぁぁ!」


 エマが宙を舞った。


 放物線を描きながら、エマは吹っ飛んで地面を二回バウンドしてうずくまった。


「いってぇな! この野郎!」


「む、まじめにやれと言ったのはあなたでしょうか。もっと追い込んでいきますよ」


「くっそがぁ」


 エマは悪態をつきながらヒューゴへと突っ込んで行き、怒涛の連続攻撃を仕掛けていく。


 アルミンから抜けた先の草原でエマとヒューゴは対峙していた。手にしているのはお互いに木製の武器だった。特筆すべきはその攻撃の有効部位に寝具のようなものを巻き付けている。訓練用に寝具屋に木剣に巻き付ける寝具を作らせた。


 ヒューゴは安全に自分の攻撃をぶつけてもエマが壊れない方法を模索していた。長い時間訓練をし続ければ、ヒューゴはエマを壊してしまう。治癒術式を使えばいいが、間に合わないレベルでの致命傷を与える可能性はゼロではない。


 じゃあ、ボクシングみたいにやれば良いんじゃないの? と宗弥は提案をした。


 え、何それ? みたいなことになったので、全員に説明した。拳にグローブという安全用に綿が入ったものをはめて殴り合う。殺し合いから離れた防具をつけての殴り合い。


 説明をすると、ヒューゴは大変納得がいったらしく急いでこの用品を作らせにいった。


「エマ、大丈夫なの? さっき、30メルぐらい吹っ飛んだけど」


 ドミニクが恐る恐る聞いた。


「一応、大丈夫だと思います……。治癒術式の「癒しの風」は即座にかけましたけど、元気だと思いますよ。多分」


「多分って!」


 ドミニクの気持ちもリーズの気持も分かる。エマは何回もぶとっばされているが跳ね起きてヒューゴに襲い掛かっている。多分元気なのだろうと思う。


 訓練方法の進歩によって、痛みはあるものの傷やダメージはそこまで負うことなく戦い続けることが出来ているのだろうと思われる。あとはそれぞれに常駐で、『大地支えし巨人』という頑強化術式もかけているのでまあ、心配はない。無いのだけど、あの吹っ飛び方は確かに気になるは気になる。


 などと考えていたら、またエマが吹っ飛んできてバウンドして起き上がってヒューゴに突っ込んで行った。


「大丈夫そうだね」


「そうですね」


 宗弥の言ったことにリーズが同意した。


 エマは大丈夫そうだったし、そう心配することも無かった。エマはめちゃくちゃにボコられていたが元気そうだった。


 この訓練方法は武器にダメージがなくなり、重さをつけて安全性を重視するということなので体格の差がモロに出るということだった。


 ボクシングが防具をつけて致死性を避けることによって体重差が強さに直結していく。同様の効果が得られたようだった。極端な話エマとヒューゴの大きな差はウェイトだ。


 この練習によってヒューゴが圧倒的に有利になり、割と早いスパンでエマがノックアウトされるのだった。


 これを繰り返すことによって、エマのスタミナを向上させるのが目的なのだった。



□  □  □




 エマの息は上がりきっており、腕にはほとんど力が入らなくなっていた。


 穂先を寝具で覆った槍でヒューゴに襲い掛かる。ヒューゴもまた、寝具を巻き付けた棍棒と盾で武装をしている。


 槍を振り下ろす。


 武器のバランスが崩れている事、空気抵抗が増している事、何より馬鹿みたいに重くなっていることで、スイングスピードが洒落にならないレベルで劣化している。


 ヒューゴに関しては、この練習用の調整が全く意味が無いレベルで動き続けている。


 なんなら普段よりも軽い武器を使っているためか動き自体は早いのではないかと思われる。


 攻撃をして、受けられて反撃を返される。普段のペースでやっていれば50対50で互角なはずが、一度攻撃を往復するたびに49対51とわずかではあるが不利になっていく。


 20回程度やり取りをして、30対70ぐらいまで追い込まれた辺りで、致命的な一撃を喰らって吹っ飛ぶのだった。


 わずかに喰らったダメージはリーズがすぐに治してくれる。削られるのはとにかくスタミナだ。


 スタミナがなくなるまでの速さが早くなるたびに、ヒューゴに倒されるまでの時間が早まっていく。


 何度やってもヒューゴにやられるイメージだけが更新されていく。戦うたびに自分が弱くなっていくような錯覚さえ覚えていく。


 最後に吹っ飛ばされたのは日も暮れかけていた頃だった。朝から初めてちょうど300回目の事だった。


 吹っ飛んだあと、指先一つ動かせる気配がなく。そのまま仰向けになって夕焼け空を眺めていた。


「ふむ、今日はこの辺で良いでしょう。続きはまた明後日行うこととしましょう」


 そう言い残すと、ヒューゴは立ち去って行った。


「はは、弱ぇ…………」


 空を見上げて、自分の情けなさに涙が溢れてきた。


 ただ、うれしさもあった。まだ自分は強くなることが出来るとうの昔に限界だと思っていたその先はあるのだということがうれしくて泣いたのだった。

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