OJT卒業!
「いやーーーーーーーー、お疲れ様でした。クリスちゃんのおかげで無事に仕事が完遂できました。ほんっとうにありがとうございますー」
全身全霊のお辞儀、もはや前屈!
宗弥はガディングルの討伐を確認すると、後処理は他のみんなに任せて、真っ先にクラリッサの元へと向かって頭を下げた。
「へー、あんなことを言っておきながらそういうことできるんですね……」
「あんなこと……と言いますと?」
宗弥はとぼけた。
その一方で背中に寒気と湿り気が生じた。
覚えている、身に覚えがある。
みんなが決めることといって意見を誘導し、クラリッサの意見を叩き潰し、さらには管理者であるのにプレーヤーとして働けと命令したのは自分だ。
「その顔を見ている限りやっていることは自覚があるみたいね」
「い、いえ、そんなことはないですよ」
「ふぅん、そうですか」
クラリッサの眼差しはどこまでも冷たかった。
「おおーっす、お疲れ、お疲れー」
そこに一番来てほしくない、エマが背後から現れた。
嫌な予感しかしない。
「やー、あんたすげーわ。いや、まあ結局あたしが超すごいってはなしなんだけどさ、あそこでよくもまあ全員をまとめられたわ。一番助かったのはあのかまととぶってたクソ女の加護術式なんだけど、あれめっちゃ助かったわ。ソーヤがあの紹介者としては全く使えないあの女配下に付けてくれたのまじで助かったわ。あんなにできるなら冒険者でも全然いけんのにな」
本当に心臓に悪くて、息の根が止まりそうだった。
実際、クラリッサの顔がどんどん赤黒くなっていくのが分かった。
「なー、ソーヤ? お、クリスちゃんもいる、さっきめちゃくちゃ助かったわ」
クラリッサがいることに気がついても、この感じである。多分さっきまでしゃべってたこと聞かれたとしても、それがどうした? 返ってきそう。クソ女って言ったけど何? みたいな。
「そ、それで、あの、その、明日以降のスケジュールについてお伺いしたいのですが……」
「卒業、おめでとうございます」
クラリッサからありとあらゆる毒気が抜けて、輝くような笑顔で言った。
「へ」
「卒業おめでとうと、申し上げたのです。私にはあなたを育てる実力はありませんので、今日であなたは卒業です」
「そーだよなー、いざってときに肝座ってるし、それなりに修羅場くぐってきたみたいな貫禄はあるよなー」
エマは本当に黙って欲しい。
「や、えーとあの……」
仕事のやり方はともかくとして、クリスちゃんは当面の飯の種の保証のようなものだ。それを卒業と! 爽やかな香りでいっぱいな卒業という言葉ではしごを外すのですか! とは口に出しては言えなかった。
「良かったではないですか、無能な先輩の下について無駄な研修をしないで上がれて。通常独り立ちにあたっては私がいくつかのクエストを仲介したり、冒険者を任せたりするのですがそれも今の実力なら必要ないですね」
「いえ、そんなことは無くってですね! クリスちゃんにいろいろ教えていただきたいことはたくさん」
「そんな私に、自分に使われろと宣言したのはどなたですか?」
「僕……です……」
言い逃れのしようが無かった。
よくよく考えれば、自分に使われろと言った上に、精神的に追い詰めて無理やり従わせたのだ。面倒を見てやる義理など逆の立場になって考えれば全くといって良いほどない。それが仮にみんなが生き残るための道筋だったとしてもだ。
「なら、あなたは卒業です。おめでとう。今回の仲介料はあなたが全てもっていくと良いわ、それを餞別とします」
「はい……」
そう言うと、クラリッサは去っていった。
「おめでとー、ソーヤ」
「あんまりめでたくも無いんだけどね……」
昼飯をすべて戻したくなるぐらいには気持ち悪くなっていた、
「なー、あたしからいっこお願いがあるんだけど、聞いてもらえるか?」
「出来ることなら対応するよ……」
ゲロ吐きそうになりながら、後ろを振り返るとエマが満面の笑みを浮かべていた。
「ソーヤが気に入った。独立したんなら、ソーヤにあたしはついて行きたい」
「はい?」
「だから、ソーヤといっしょにやりたいんだって!」
宗弥は頭を抱えて、しばらくだんまりを決めてそれから猪の後処理が終わって、崩れた崖を通れるぐらいにまで修復する間の半日かけてついてくるなと説得したが、エマは聞く耳を持たなかった。
かくして宗弥は紹介者として独立し、エマが専属の冒険者となった




