2
「ば、化け物!」
手をかけた瞬間、盗賊たちはそう言ってその場から逃げ出した。
少女はポカーンとした様子で、呆然としている。
おそらく彼女には、今何が起こったのか理解できなかったのだろう。
それもそのはず。
俺は『表向き』には、何もしていないのだから。
「さ、助けたよ?お礼は何でもしてくれるんだよね?」
「……え、あ、はい。ですけど、ひとつお聞きしてもよろしいですか?」
彼女は、戸惑ったようにそう聞いた。
「どうぞ?」
「あの……貴方は一体、何をしたんですか?」
待ってました、その質問!
彼はにこりと微笑むと、こう答えた。
「何もしてないよ。ただちょっと、威嚇しただけだから」
「い、威嚇?威嚇だけで、あんな風に?私は何も感じなかったんですけど……」
解せぬ。
そう言わんばかりに、彼女はそう呟いた。
「まぁ、これ以上は企業秘密ってことで。それで、お礼の話なんだけど……」
「あ、はい!何なりと!」
何なりと、か。
そんな言葉、つい最近まで聞かないな。
そう思いながらも、彼は腹を抑えながらこう言った。
「……とりあえず、なんかご飯ちょうだい?」
静かになった道のど真ん中で、大きな腹の虫が悲鳴をあげた。