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「あ~、腹へったなぁ」
最近、ろくなものを口にした覚えがない。
つい昨日食ったものと言えば、適当に狩ったオーガの焼き肉程度だ。
そう、ただ焼いただけ。調味料も何もなしだ。
「どうにかして塩コショウを買う金くらい貯めないとな……」
そんなことを考えていたある日。
男が道を歩いていると、盗賊に襲われている少女に出会った。
「や、止めてください!」
「なら、さっさと金目の物を出しな!」
そう言って、盗賊は少女をナイフで脅す。
「金目のものなんてありません!」
「なら、その服だけでも戴こうか!」
まったく。
町中で暴れるなんて、変な奴等だ。
まぁ、確かに、外で盗賊なんてしていたら、そのうち魔物にでも殺されるから仕方のないことと言えば仕方ないが。
そういえば最近、ここも治安が悪くなったな……。
そんなことを考えながら、彼はその横を素通りする。
面倒なことには関わらない方が吉なのだ。
と、そう思ったのだが。
「……」
ふっと、彼の目と少女の目が交差した。
助けて、と言わないばかりの懇願した目だ。
……仕方ない。助けてやるか。
「……お嬢さんお嬢さん、ちょっと助けてやろうか?」
「んだこの野郎?」
「お、お願いします!お礼はなんでもしますから!」
間に口を挟んでくる賊を無視して、彼女は俺に助けを願った。
盗賊は彼の方に近づきながら、睨むような視線を投げ掛けてくる。
しかしそんなのは無視だ。
俺はそいつの肩越しに、ニヤリとわらうと、腰の剣に手をかけた。