鳴き声もあげず
虫×虫の虫百合です。
虫っぽい描写はしていないつもりですが、苦手な方がいらっしゃいましたらご遠慮された方がよいかもしれません。
「ミーンミンミンミン…」
「ギーオギーオギー…」
「カナカナカナ…」
貴方はあの光を覚えてる?
暗い暗い揺り籠から這い出した私たちを焼いたあの光を
えぇ
えぇ
覚えているわ
あの日あの時あの瞬間、私は生まれた
確かに感じたあの光
忘れることなどできようはずもない
「ミーンミンミンミン…」
「ギーオギーオギー…」
「カナカナカナ…」
呼んでいる
呼んでいるわね私たちを
この喜びを
この脈動する命繰り返そうと
あぁ
あぁ
なんて愚かなことかしら
私が私たちが繰り返し繰り返し
繰り返し続けた営みを
こんなところで止めてしまうなんて
「ミーンミンミンミン…」
「ギーオギーオギー…」
「カナカナカナ…」
でももうだめよ
私たちは出会ってしまったんだもの
雄々しい鳴き声も
愛を囁く呼び声も
なんの魅力も感じない
えぇ
えぇ
この身に満ちる命の芽
腐れ堕ちてく罪に震え
擦れ合う命の管の甘さに震える
「ミーンミンミンミン…」
「ギーオギーオギー…」
「カナカナカナ…」
誰も私たちには気づかない
愛を囁く声も
甘さに喘ぐ声も
私たちには出せはしない
あぁ
あぁ
末期の時をただ二人
甘い蜜より甘い時
二人寄り添い地に堕ちる